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今月の雑誌から:これからの日本の政治と外交

投稿日 : 2020年09月24日

安倍首相の辞任に伴い、9月16日、国会は、菅義偉氏を新首相に選出した。主要月刊誌10月号は、安倍首相が辞任を発表後、新首相が選ばれる前の時点で発売されたが、いずれも、新政権が抱える内外の主要課題と、新しいリーダーに求める資質を取り上げている。菅氏が早々と与党内の多数の支持を取りつけたためもあって、メディアは、過去約8年の長期に及んだ安倍政権の官房長官を務めた同氏が、新首相として安倍路線を踏襲するであろうと予想する。菅氏も、基本的に安倍政権が目指してきたものを引き継ぐと言明している。

外務大臣として留任することとなった茂木敏充氏は、安倍総理が掲げた「日本を取り戻す、日本を前へ」という様々な政策をさらに進めていきたいとし、また、防衛大臣から行革担当大臣に鞍替えすることとなった河野太郎氏は、これからの日本のリーダー像を語る中に自らの将来の姿を投影させている。御厨貴東京大学名誉教授は、安倍政権はこの国をどうしたかったのかが見えなかったとして、次の首相は、大きな絵柄を出していかないと国民はついていかないだろうと警告を発している。

 

『文藝春秋』10月号  <緊急特集>安倍退陣の衝撃
  ポスト安倍「宰相の資格」を問う「我が政権構想」
  菅義偉 内閣官房長官

菅氏は、秋田のいちご農家に育ち、地方を大事に思う気持ちから、「地方創生」を最優先課題の一つとして取り組みたいとし、その二本柱として「観光」と「農業改革」を挙げ、特に観光については、活力ある地方を作っていくためにもコロナ禍で極めて厳しい状況にある外国人観光客を再び増やしていきたいとの抱負を語る。
 
同氏の持論は、「自助、共助、公助」で、「自分でできることはまず自分でやってみる。そして、地域、自治体が助け合う。その上で、政府が必ず責任を持って対応する。国民から政府がそのような信頼を得られるような、そういう国のあり方を目指したい」と自説を披露する。

菅氏は、外交・安全保障の分野が弱点だと指摘する声があることを認識しつつも、様々な外交現場を見てきたと言い、特に日米同盟の重要性は痛感するところで、韓国との関係を考えても、米国の存在は大きく、同同盟を一層強固にしていくために、米国との約束をきっちり守ることが大事であると強調する。中国については、尖閣諸島をめぐる問題は深刻であるが、他方で中国とは深い経済関係もあるので、主張することは主張し、懸案の一つ一つについて前向きな対応を引き出していくことが肝要だと述べる。 菅氏は、外交で大事にしたいのは、「全体を見る目」と、万が一のケースにも備える危機管理能力であるとし、そうした能力を生かせれば様々な場面に対応できるのではないかとの自負心をのぞかせる。

日本は、少子高齢化、人口減少をはじめ多くの問題を抱えているが、それらの解決のためには、政治がしっかりと方向性を示し、国民の協力を求めると同時に、政治家自身が国民への説明責任をしっかりと果たしていく必要があるとし、自分自身にはスキャンダルはないと断言する。基本的に安倍政権が目指してきたものを引き継ぎ、まずは、コロナ対策に全力を挙げて、雇用を守り、企業を倒産させないようにするのが最優先の仕事だと意気込む。


■『文藝春秋』10月号 中国の領海侵入、韓国の国際法違反にこう対峙する
  私は日本を守り抜く
  茂木敏充 外務大臣

茂木氏は、安倍首相が7年8か月間、アベノミクスによる日本経済の再生と雇用の創出、教育無償化、日米同盟強化や地球儀を俯瞰する外交など様々な分野で大きな成果を残し、この間、国際社会での日本の存在感、プレゼンスが大きく高まったと評価する。

同氏は、外務大臣に就任してほぼ1年が経った(同氏は、菅首相の下でも外相として留任された)が、この間厳しい状況にあったのが日韓関係であるとして、旧朝鮮半島出身労働者問題に関する韓国大法院判決は明確な国際法違反であり、差し押さえられた資産が現金化されれば、深刻な事態を招くことは間違いないと警告し、対抗措置として、あらゆる選択肢を視野に入れて毅然と対応していきたいと述べる。輸出管理の問題では、韓国側の要請でWTO(世界貿易機関)に紛争処理パネルが設置され、日本としてはWTO協定の手続きに従い、淡々と対応していくとした。なお、11月上旬にかけてWTOでは事務局長選挙が行われるが、本来ならば日本もこのような国際機関に人材を送り込んでいくべきであり、中長期戦略の中で国際機関で要職を担う人材を育成することが極めて大事だと指摘する。

日本の外交・安全保障の基軸は日米同盟であり、強固な同盟は、日米だけでなく、インド太平洋地域の安定という意味でも大きな役割を果たしていると見る。航行の自由や法の支配といった国際的に確立された価値観やルールを、インド太平洋地域で共有していくことが重要であり、尖閣諸島の周辺地域で中国公船による領海侵入が繰り返されているのは極めて遺憾だと力説する。東シナ海の安定なくして日中関係の真の改善はありえず、「今後も日本の領土、領海、領空を断固として守り抜くという決意のもと、冷静かつ毅然と対応していきたい」と語る。

日露関係については、チャンスが来た時に一気に怒涛のように交渉をまとめていくための準備を普段からしておくことが肝心だと語る。日朝関係に関しては、米朝のトップ同士が合意したプロセスを支持しながら、非核化を実現し、必ずや拉致問題を解決するという強い思いで取り組んでいきたいと意気込む。

ポストコロナの時代において、日本は、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を進めていくべきとの持論を語る。「一つの価値観、欧米的な価値観を押し付けるのではなく、各国の歴史や文化の多様性を尊重した上で、その国自身の民主化を後押ししていく」包容力と力強さで、国際社会のルール作りを日本が主導していきたいとの抱負を述べる。


■『Voice』10月号    特別企画:「次代の政治」を考える
  世界に「言うべきことを言う」国に
  河野太郎 防衛大臣、衆議院議員

河野氏は、変化の激しい時代のリーダーには、「多様な価値観や利害がぶつかり合う世界のなかで、我が国の立ち位置を見極め、目指すべき進路を発信し、個性あふれる諸外国のリーダーたちと協議を重ねながら、実現していく能力が求められる」とし、コロナ禍や気候変動による自然災害などの危機管理に日頃から備え、いざというときに危機を乗り越えられる能力が特に必要だと語る。

ミャンマーの民主化問題に関連して、同氏は、民主主義や法の支配、人権の尊重は万国共通の価値観であるべきであるが、それを実現する道のりは、国と民族によって異なるとし、価値観を絶対的原則として他国に押しつけがちになる欧米に対して、それぞれの国の歴史や成り立ちを尊重し、一歩でも前に進むために、寄り添っていこうと説得するのが日本の役割だと論じる。

日本は、軍事力を背景にした外交ではなく、相手国と同じ目線での支援を、政府だけでなく企業や青年海外協力隊、NGOなどオールジャパンで積み上げてきた実績があると指摘し、教育への投資、科学技術の発展など、日本の歩んだ道のりは多くの国々の参考になるはずと胸を張る。

同氏は、これからの世界は、民主国家と独裁国家、自由社会と監視社会、資本主義と国家資本主義、情報が自由に流れるネットワークと政府が管理するネットワーク、ドル金融システムと人民元金融システムに、それぞれ分かれてゆくとの見通しの下、日本は欧米やオーストラリア、ニュージーランドなどと共に、基本的価値観に基づく国際秩序を守っていくために先頭に立ち、アジア・アフリカ諸国にも寄り添って、そうした国々と欧米との架け橋を担う役割を果たしていくべきであると強調する。


『中央公論』10月号 史上最長政権功と罪
 御厨 貴 東京大学名誉教授

憲政史上最長政権を率いた安倍首相は、目標に掲げた憲法改正はほとんど成果がなかったが、経済については、政治が経済を動かせるのだという感覚を国民に体感させたと、御厨氏は見る。外交では拉致被害者問題、北方領土問題に加え、米中、インドや中東にまで手を広げた。しかし、いずれも「やってる感」の経済政策、外交にすぎず、8年弱もよくこのような状態で政治ができたものだと感心し、この点はほめていいのではないかと皮肉る。トランプ政権との蜜月関係、平成天皇の生前退位の両功績は、「受け身の『功』」にすぎないと厳しい。

安倍政権の罪としては、森友学園や加計学園などのスキャンダルに際し、説明不足のまま突っ張って選挙まで乗り切り、選挙に勝つことでうやむやにしてしまったこと、さらに、新型コロナウイルス感染症に対して、地方の現場の声に耳を傾けなかった結果、対策が後手後手に回ったことを挙げた。

「結局、安倍首相がこの国をどうしたいのか見えなかった8年弱だった。次の首相は、安倍首相がついに出し得なかった大きな絵柄を出していかないと、国民はついていかないだろう」と結論付ける。



※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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