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今月の雑誌から:新型コロナウイルスとの共存

投稿日 : 2020年08月21日

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない不安な状況が続いている。ワクチンや治療薬の開発にはっきりした展望が立たない中、このウイルスとは今後中長期的に「共存」せざるを得まいとする見方が広まっている。
 
主要月刊誌9月号は、「新型コロナウイルスとの共存」のためには、いかなる心構えが必要かという観点からの論文が多数見られ、人々の新型コロナウイルスに対する知識や理解力(リテラシー)の向上の必要性が叫ばれている。

 


Voice』9月号    特別企画:「コロナ共存」への視座

   ウイルスとの「均衡点」を探れ
   山本太郎 長崎大学 熱帯医学研究所教授

山本氏は、短絡的にウイルス撲滅に躍起になれば彼らの毒性が高まり、かえって事態を悪化させかねず、「早期にウイルスを撲滅する」という考えから脱却し、「長期的なスパンを想定して共生する」との心構えを持ち、ウイルスとの均衡点を見つけていくべきと主張する。そして、ウイルスとどう付き合うのかについての国民の科学的なリテラシー向上がこれからの課題だという。

同氏は、「感染対策か経済活動の再開か」という二分論に立つべきではなく、経済を動かしながら、それと同時に感染拡大を防ぐために個別の課題を科学の活用で潰していく、という戦略こそ持つべきで、今後必要になるのは、店舗の休業要請ならば全国一律ではなく、地域や曜日などの個別の特徴を押さえたきめ細かな対応であり、その際にビッグデータやAI(人工知能)を活用すべきだと強調する。

また、「ウイルスとの共生を前提とすれば、感染自体が必ずしも社会にとって悪いわけではない」とし、感染データと向き合う際に、感染者数やPCR検査の件数以外にも、重症化率や感染経路不明数も重要な指標であり、「重症者を押さえることで死者数を減らし、感染経路を把握してクラスターを封じ込める。そうなれば、穏やかな感染の広がりはある程度許容できる」と主張する。

新型コロナウイルスが第何波まで及ぶのか、毒性がどこまで強まるのか、いつ終息が可能なのかは誰も断定できず、人類が長期的な忍耐を余儀なくされている今、新型コロナが終息しても新たなウイルスの出現に備えて「ウイルスと共生する心構えを持ち、しかるべき態勢を整えておくべき」として、日本版CDC(疾病対策センター)の設立が必要だと述べる。


『文藝春秋』9月号    【コロナ総力特集第5弾 誌上対策会議】コロナ・サバイバル
  徹底討論「経済」か「感染防止」か
  小林慶一郎 東京財団政策研究所研究主幹、舘田一博 東邦大学医学部教授、三浦瑠麗 国際政治学者、

  宮沢孝幸 京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授

舘田氏は、東京での一日当たりの感染者数が600人以上に増加すると完全にフェーズが変わる、200人前後がずっと続けば徐々に病床が埋まり医療がひっ迫してくる、そのような中で一気に重症者が増えると医療崩壊を防ぐために緊急事態宣言を再度出すことも検討が必要となるが、100人前後まで下がると早期に抑え込むことが可能となろうと見込む。感染症を抑えるには緊急事態宣言を出して人々の行動を抑え込むのが一番効果的であるが、社会経済へのダメージが大きすぎるので、経済・社会活動と感染症対策をどう両立させていくかが今の最大の課題であり、重要なのは、一人一人が想像力を働かせながらリスクを考えていくという、感染に対するリテラシーだと主張する。

宮沢氏は、一般的にウイルスの弱毒化と強毒化はほぼ同時確率で起こるが、強毒化したウイルスは、感染者が動けなくなるので広がりにくく、過度な心配は不要、今回の新型ウイルスも、第2、第3の波となるにつれて重症者も減っていくと予測する。緊急事態宣言の有無にかかわらず死亡者数は変わらなかったはずで、三密を避け、週末の不要不急の外出を控えるといった程度の自粛を続けていても結果は同じだったであろうと見る。買い物も普通にマスクをして、大声を出さず紳士的にするなら、高齢者でも心配ないと述べる。

三浦氏も、すでに百万人単位で雇用が失われ、秋から企業の倒産が加速するなど、社会に対する破壊力は広範囲に及んだ緊急事態宣言は不要であったし、二度と発動すべきではないと主張する。今後、感染者が急増して行動制限を要請せざるを得なくなったとしても、高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人のみに限定し、買い物支援や健康指導もするが、その他の人は日常生活を続けるという案を提案する。

 

『外交』7・8月号    巻頭インタビュー
   感染抑制のカギは加盟国との信頼醸成
   葛西WHO西太平洋地域事務局長

葛西氏は、感染症に国境はなく、世界中が新型コロナウイルス対策に一所懸命取り組んでいる今こそ、各国の連帯が求められているとして、自国を守るためには、地域で、そして世界で連帯し、情報を共有し、このウイルスの特性を分析し、有効な診断や治療方法を一緒に開発し、そして対策が十分でない国を支援することが大事だと強調する。

同氏は、現在世界各国で行動制限が徐々に解除され始めているが、中には、医療体制はもとより検査や接触者の追跡・隔離の体制が整わないまま制限解除が進んでいるケースがあり、警戒していると同時に、長期戦になることを覚悟のうえ、感染抑制と社会経済を両立させる新しい常態を模索することが大切だと述べる。その際に基本となるのは、一人一人が健康に関心を持ち、家族、同僚、地域の高齢者を守る行動につなげ、ビジネスセクターは感染リスクを低くするオペレーションを模索し、政府はそれを支援する政策を実行することだと言う。

同氏は、アジア太平洋地域の感染者数・死亡者数は他地域と比べて少ないが、油断はできず、大規模市中感染への準備を怠りなくすべきと述べる。世界のどこかでウイルスが流行している限り、感染リスクはなくならず、引き続き大規模流行に備えて、このウイルスと長く付き合っていくことを覚悟し、一人一人の行動変容を基礎としたうえで、公衆衛生措置と社会経済活動を高次元でバランスさせ、新しい常態を構築することが重要だと言う。

この新しい常態は、治療から予防へのシフト、個人の健康は地域社会のインフラであるという新しい着想と価値観を基盤にしており、日本が世界でリーダーシップを発揮しているユニバーサル・ヘルス・カバレッジのイニシアチブで推進してきたものだと、同氏は指摘する。

 

『中央公論』9月号    【特集】コロナ、戦争、危機管理 指導者たちの「失敗の本質」

     内向きの対立を超えて地方のトップに委ねるべき
   小池百合子 東京都知事

小池氏は、日本では憲法上私権を制限するのが難しく、コロナ対策も「お願いベースで」自粛を求めるしかなかったが、都民の良識で対応ができたし、マスクをして自分の身を守るだけでなく他人に迷惑をかけないというモラルの高さは称賛されるべきとしつつも、今後はこのような日本人の国民性だけに頼るのではなく、重点的、ピンポイントで効率の良い対策を展開していくとの決意を述べる。また、都では、一日一万件までPCR検査体制を強化するよう進めており、一日当たりの新規感染者数が増えていくことは想定内だと言う。

コロナ禍によって都財政は急激に悪化し、内部留保は9割以上も減少したが、小池氏は、必要なときに財政を動かすのは当然のことと意に介しない。選挙公約で「稼ぐ東京」を掲げたゆえ、全体のパイを増やし、成長を促すことに注力していくとし、短期的には都税収は下がるが、国の特区制度を活用し、国際金融分野に力を入れていると述べる。長年アジアで国際金融都市として輝いてきた香港が問題を抱える中、自由や民主主義が守られている東京の価値が見直されていると感じるとして、今後ITに力を入れ、5G環境を整える、また、上場企業の半数以上が都内に本社を置く強みを生かして、大企業とベンチャー、中小企業をつないでいくとの抱負を語る。

 コロナ問題では、感染状況が地域ごとに刻一刻と変化しており、国による一律の施策では限界があり、スピード感を失ってしまうとし、まずは現場を熟知する自治体のトップに任せよ、国は都道府県に権限とともに財源を渡すべきと訴える。


※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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