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「日本と持続可能性」(FT特集)Part 2

投稿日 : 2021年08月16日

注目すべき海外メディアの日本報道


「日本と持続可能性」(FT特集)Part 2




7月23日付Financial Times(電子版)は、「スポーツの力で持続可能な社会の実現に貢献する」東京2020オリンピック大会の開幕に合わせて、「日本と持続可能性」と題する日本特集を組み、(1)脱炭素とエネルギー政策(2)環境配慮と持続可能性を謳う東京五輪(3)日本企業のSDGs、ESG、働き方改革への取組(4)海洋プラスチック、離島、捕鯨 の4分野で20本の記事を掲載した。同紙東京支局が総力を結集した本企画は、多数の事例を紹介しつつ、気候変動やコロナ禍が、日本の社会構造や環境に不可逆的な影響を及ぼし、様々な分野で持続可能性の追求を加速していると報じている。特に、菅政権が政策の最優先に掲げる「グリーン社会」の実現には、化石燃料への依存打破がカギであるとして、エネルギー、環境分野を中心に、政府や企業による取組の実効や課題を探っている。


※(1)(2)はPart 1をご覧ください。 


(3)日本企業のESG、SDGs、働き方改革への取組:

 国家予算を遥かにしのぐ170兆円という巨額の資金を運用する世界最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIFの平野英治前経営委員長へのインタビューで始まる5つの記事で、日本のESGは本物か、課題は何かを探っている。冒頭記事「世界最大の年金基金の前経営委員長はESGに慎重姿勢」では、平野氏の慎重さの背景にある二つの懸念、すなわち「共通の評価制度の欠如」と「ガバナンスより環境面を重視する傾向」に注目する。

 続く「日本株式会社、ESGに真剣に取り組む」では、日立の環境及びモビリティ・ビジネス部門責任者の「経営上層部のサステナビリティ目標達成に向けた、目に見える形でのコミットメントはまだ示されていない」との発言を紹介しつつ、ほとんどの企業が目標達成のための具体的なロードマップを提示していないと指摘している。こうした状況では共通な基準の下での評価は難しいことを示唆する。一方で、「ソニー社長が社会的な目標に情熱を燃やす」では、槙公雄社長の「環境にやさしい製品を作ることは付加価値であり、コストもかかる。しかし、環境を考慮に入れない製品は、お客様からは無視される」との発言を紹介。持続可能な企業の発展のための経営者のESGへの意識の高まりを伝えている。それでは、こうした変化が根本的なものか表面的なものか。こう問いかけるのが次の記事「気候変動問題での株主総会の失敗がESG意識向上の合図となる」だ。機関投資家の行動の変化を受けて、日本企業はSDGsを真剣に考え始めているとの証言を紹介しつつも、1970年代の環境保護運動を発端にCSRへの高まりを経た欧米とは異なり、日本のESGの高まりがごく最近の急激なものであるとする見方も挙げている。

 そして「投資家は持続可能性についての健全なデータを求める」では、ESGの情報開示についてより高い基準と情報の正確性の証明が求められているが、ここでも、多くの日本企業は、温暖化ガス排出に関するデータのみで外部機関の評価を得ようとする傾向にあると指摘。さらに、日本企業はSDGsの取り組みについて多くの数値を公表しているが、それらが実際に実績やビジネスにどのように影響しているのかを説明することが課題だとする見方を紹介している

 さらに「SDGs目標は日本企業の標準になる」と題する記事では、トヨタが自動車製造からモビリティサービスへの転換や女性管理職のより積極的な登用を打ち出したことを画期的な事例として挙げつつも、大概の企業は既存の業態の殻を破ることができず、ジェンダーや人権にも弱いと苦言を呈している。加えて、投資家や消費者からの圧力、コロナ禍が浮き彫りにした人間と自然界との脆弱な繋がりが企業経営者をSDGsにより強く関与させていると分析。

 他方、「コロナウイルスが遅れていた日本のオフィス改革を促す」では、富士通やカルビーなどの大企業が早々にテレワーク主体の勤務体制への移行を表明したことに触れ、これらはコロナ禍が元に戻せない影響を及ぼし、社会的課題や環境、持続可能性への取組を加速させていることの顕れであるとし、長期の人口減少期においても十分な数の社員を確保して経営を存続することがまさに企業にとっての持続可能性であると指摘する。


(4)海洋プラスチック、離島、捕鯨:

 小泉進次郎環境相が力を入れる海洋プラスチック問題への取や、日本列島に点在する離島の環境、IWC脱退後の捕鯨業など、地方における持続可能性について4本の記事を掲載。

 小泉環境相へのインタビューを通じて、レジ袋有料化による国民の意識改革の試みや日本のリサイクル技術の先進性などに触れる一方、別記事で、日本では年間30億枚のレジ袋が消費され、国民一人当たりのプラごみ排出量が米国に次ぎ世界第位であると説明し、加えて、リサイクル率の高さや技術がプラ製品は安全利便との間違った感覚を生んでいる、自治体任せで処分コストの負担のない企業はバイオ素材への転換に消極的、ゆえにいまだ人々の中に価値感と生活様式を変えるコストを払う用意がないとの専門家の見方を紹介している。

 また、かつて有害な産廃処理の請負で問題となった瀬戸内海豊島の事例を取り上げた記事では、日本列島に散在する6千もの離島が抱える課題として、人口減少、社会インフラの持続的運営、リサイクル法制化への対応の遅れ、観光客による季節的なゴミ増量と海洋プラスチック問題などを指摘している。

 他方、捕鯨がクジラの生態系を持続可能とするか否か議論が分かれているが、IWC脱退後の日本の捕鯨について「日本の捕鯨者が絶滅危惧種である理由」との記事で、政府からの補助金に頼らない商業捕鯨の営みが求められているが、限られた捕獲種と数、捕鯨船の耐用年数、日本人の食の嗜好の変化から捕鯨業界は苦境の中にあると説明しつつ、日本の捕鯨業は国際的な批判ではなく国内の冷淡さから消滅しそうだ、と報じている。










 

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