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高岡市

日本を代表する職人のまち・高岡、1300年前につくられた国宝を再現

2019年03月14日

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attahce

日本一の鋳物産地が、文化財修復の拠点を目指す

―― 国宝の再現に、400年の歴史を持つ産地の高度な技が活きた ――

 

8世紀に建立され 1300年の時を経て現存する薬師寺の東塔。古都、奈良にあるこの三重の塔は、政府が国宝に指定する日本有数の貴重な文化財だ。現在、この東塔の大規模修理が進められるなか、塔の最上部にある金属の装飾部分「相輪」の修復作業を任されたのが、富山県・高岡市の鋳物職人たちだ。今年1月29日に約1年2カ月に渡る作業が完了し、職人たちの挑戦が形になった。なお、東塔全体の修理は2020年4月に完成予定だ。

 

高岡は、400年に渡って仏具や銅像、茶道具などの銅器を生産してきた、歴史ある鋳物のまちだ。銅器の販売額は日本一で、全国の銅器生産の大半を占める。銅のみならず、鉄、錫、アルミなど様々な金属を扱う鋳造・金属加工技術が発達。美術品から工業製品まで幅広く生産しており、市内には200もの工房やメーカーが軒を連ねている。

 

この高岡が持つ高度な専門技術が薬師寺に評価され、1300年間で初となる「相輪」の修復作業に、市内の銅器メーカーで構成する伝統工芸高岡銅器振興協同組合が選ばれたのだ。同組合の梶原寿治理事長は、「修復を通じて古の職人たちの技術に触れ、その力量に驚嘆した。同時に、自分たちが作ったものが国宝に組み込まれることに大きなプレッシャーを感じた。細部まで正確に再現して1300年前につくられたオリジナルと一体化させなければならないため、緻密な作業の連続だった」と振り返る。

 

この難しい仕事を実現できた理由は、原型の制作から鋳造、仕上げ、彫金、着色まで、金属加工のあらゆる分野のプロの専門家が、高岡に揃っているからだという。「400年の経験値を持つ産地としての強みが活かせた」と梶原理事長は語る。

 

 

―― 日本一の文化財修復の拠点に ――

 

今回の作業には、東塔の象徴とされる、衣をたなびかせて空を舞い、笛を吹いている24人もの天人を精緻に描いた銅製の装飾(水煙)の新調も含まれていた。1300年前につくられたオリジナルの損傷が激しかったため、今後新調されたものが塔に取り付けされることになる。原型の制作には3Dスキャナーで計測したデータが用いられたが、そこに経験に基づく職人の知識を加えることで、初めて完成したのだという。まさに最先端技術と伝統技法の両方が融合した格好だ。

 

高岡市デザイン・工芸センターの高川昭良所長は、「1300年かけて複雑な色に変化した銅を、金属に微妙な化学反応を施して短期間で再現するなど、ここまでのことができるのは高岡だけだ」と胸を張る。「これまでは大手企業の下請けが多く、表に名前が出る機会が少なかったが、文化財の修復で高岡を日本一のブランドにしていきたい。また、海外からの依頼にも応えていきたい」と語る。

 

文化財を眠らせず、観光資源にすべきという国の指針を追い風に、高岡は、今後全国から修復の依頼を受けたいとの考えで、日本の文化財修復の拠点を目指している。

 

 

 

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<高岡市の鋳物産業について>

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――― 梵鐘生産日本一、台湾など世界各国に輸出 ―――


株式会社老子製作所

国宝の修復に携わった高岡の企業のひとつに、梵鐘(仏教寺院の鐘)の製造において国内シェア70%の企業がある。創業200年の老舗で、全国の名門寺院の梵鐘を数多く手掛けてきた老子製作所だ。日本最大となる重量48トンの鐘など、これまで大小2万個もの梵鐘を生み出してきた。

 

同社14代目の社長である元井秀治氏によると、中国・朝鮮半島から仏教が伝来してからの長い歴史のなかで、日本では寺の鐘が独自の発展を遂げたのだという。「一般的に、中国や朝鮮半島の鐘の音は比較的高く、あまり長く続かない。一方で“わび・さび”を愛する日本人は、重い低音で、余韻が長く続き、うなりのある鐘の響きを求めていった」と社長は語る。(近年、梵鐘の余韻の中に含まれる「1/fゆらぎ」が心身をリラックスさせることが科学的に証明されている。)同社はこの日本独特の鐘の響きを追求しており、寺の梵鐘だけではなく、毎年8月6日の原爆の日に式典で鳴らされる広島の「平和の鐘」や、岩手県釜石市の「復興の鐘」なども制作してきた。

 

 

老子製作所の鐘は海外でも高く評価され、特に台湾には20個以上が納入されている。2006年には台湾の法鼓山に、台湾最大となる巨大な梵鐘を納めた。外口径2.6m、高さ4.5m、重さ25トンと大きさもさることながら、法華経の全文7万文字を鐘の内側と外側に浮き出させる形で鋳出した。これは日本の鋳物史上最多の文字数だとされている。

同社の鐘は、台湾の他にも、中国、インドネシア、タイ、スリランカ、米国、オーストラリア、ニュージーランド、英国、フランス、ドイツ、スイス、スペイン、ブラジル、ペルーなど、世界各国に輸出されている。

 

 

 

――― 仏像からインテリア雑貨、工業製品まで。 ―――

 

鋳物のまち高岡市の大きな特色は、伝統的な仏具や美術品から、インテリア製品、アクセサリー、屋外モニュメント、工業製品まで、幅広い分野の金属製品を生産している点にある。多様な製品をつくることで技術が磨かれ、産地としての力が強化されているのだ。

 

株式会社ナガエ

株式会社ナガエ(1954年創業)にも、仏像や銅像などを手掛けるアート事業部と、金属部品やマンション建材などの工業製品を手掛けるテクノ部門の両方がある。

4代目社長の長柄 洋一氏は、「高岡の強みは、手仕事による伝統的な鋳物と、アルミなどの工業製品のどちらも生産できるところ。当社でも同じ職人が両方の仕事をしており、それによって更に技術や品質が磨かれていく」と語る。アート事業で蓄積された金属の着色技術のおかげで、マンションの建材に特殊な色を求める顧客の要望に応えることができたという例もある。

 

株式会社能作

株式会社能作(1916年創業)も、仏具だけではなく、インテリア雑貨やテーブルウェアといった現代的なライフスタイルに適した自社商品を数多く展開している。柔軟な錫の特性を生かし、曲げ伸ばしして自在に形を変化させることができる錫100%のカゴは大ヒット商品となり、ニューヨーク近代美術館の公式店であるMoMA Design Storeでも販売されている。さらには、錫の抗菌性や柔軟性を活かした手術器具も開発し、医療分野にも進出している。

 

 

 

 

――― 職人技を体感。開かれた生産現場が消費者に語りかける ―――

 

高岡には近年、一般の訪問者が職人の技を間近で見学したり、制作体験ができるスポットが増えてきている。これは、長年大手企業の下請けで名前が知られることのなかったこの産地が、一般消費者の認知度を高めるうえで大きな役割を果たしている。

 

株式会社能作では、2017年から工場を見学者に開放。普段見ることのできない職人の手作業や卓越した技を間近で見ることができると評判を呼び、国内外から月に1万人が訪れている。錫の小皿などを自作できる体験ワークショップも人気だ。オーストラリアからの旅行者のブラッド・ドリンクウォーターさんは、「日本を旅行するならここに来たいと以前から思っていた。高度な職人技も見られて、自分でも鋳物づくりに挑戦できて大満足」と語る。

 

 

 

酢や糠を使った化学反応によって金属に着色する特殊な技法で知られ、皇居の装飾を手掛けたこともある有限会社モメンタムファクトリー・Oriiも、ギャラリーを開設。訪れた人がこの技術を使って金属を変化させ、自分だけの色をつくり出すという高岡ならではの体験ができる場を提供している。

 

 

 

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【本プレスリースに関する問い合わせ先】

 (高岡市の鋳物関連の取材の申し込みも受け付けております)

 

高岡市 広報情報課 広報係 担当:板、村田

メール:kouhou@city.takaoka.lg.jp

※英語のお問合せの場合、メールでお願い致します。


電話:0766-20-1238/FAX:0766-20-1664

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