プレスツアー(案内)

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実施日 : 2017年03月16日

案内:高岡市プレスツアー

投稿日 : 2017年02月23日

「最先端3D技術と伝統の技で再現する国宝・釈迦三尊像」
 

仏像現物と3D

 

 

 

 世界遺産にも登録されている奈良・法隆寺の金堂に鎮座する国宝・釈迦三尊像。飛鳥時代(592年~710年)に渡来人の仏師によって作られた、日本の仏教美術史の初頭を飾る名作だ。最先端の3Dプリンターと伝統的な彫刻・鋳造技術を駆使して、素材や質感まで忠実に再現した三尊像が今月末に完成する。プロジェクトで東京藝術大学と共に重要な役割を担ったのが、伝統技術を受け継ぐ富山県高岡市の鋳物職人と同県南砺市の「井波彫刻」の職人だ。完成した三尊像は来月、高岡市で初めて一般公開される。

 

梶原製作所4

 法隆寺から持ち出すことができない釈迦三尊像は、これまで限定的にしか公開されなかった。同プロジェクトにより、門外不出の国宝の「クローン」を国内外問わず各地で展示することが可能となった。さらに、このプロジェクトは、三尊像の再現を担った高岡の鋳物職人や南砺市の彫刻師の技術の高さを世界にアピールし、国内市場で伸び悩む伝統工芸産業が海外市場に打って出る道筋をつけるという、地場産業の新しい活性化モデルを確立することも目指している。

 

 

 3D技術は実物を忠実に再現することができるため、職人の手仕事の技が奪われることを危惧する声もある。そうした中、職人技に大きく協和 鋳造ライン3依存する鋳物産業の分野でも3D技術を積極的に取り入れている企業が高岡市の協和製作所だ。中小企業ながら、産業用ロボットなどの精密な機械の部品といった複雑な形状の鋳物を3D機器の導入や作業工程の機械化によりスピーディに生産できるラインと、顧客の様々な要望に柔軟に対応できる熟練の作業員による生産ラインを整えている。日本の鋳物業界では、過去25年間で事業所数が4241から1886へと5割以上減少するなど低迷が続いているが、同社は先端技術と職人技を組み合わせることで好調な売り上げを維持している。

 

 

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本ツアーは、再現された釈迦三尊像が初めて公開される富山県高岡市を訪れ、プロジェクトに関わった東京藝術大学や同市関係者、鋳物・彫刻の職人をインタビューするとともに、最先端3D技術を取り入れながら成長を続ける鋳物企業も取材する。

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※本プレスツアーは、「400年を超える高岡市の鋳物技術と600年を超える南砺市の彫刻技術を活用した地場産業活性化モデルの構築・展開事業推進協議会」が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画協力しています。

※本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

 

【取材内容】

 

――国宝・釈迦三尊像の再現に挑んだ産学官のキーパーソン――

 

1. 高岡市長インタビュー

 高橋 正樹(たかはし まさき)市長高岡市長

 高橋正樹市長は、2009年に市長に就任し、2期目を迎えている。400年の歴史を持つ高岡の伝統産業を新しい産業創出の基盤として提案してきた。釈迦三尊像の再現プロジェクトでは、高岡市魅力発信アドバイザーも務める東京藝術大学の伊東順二教授から三尊像を同市で鋳造する提案を受け、国の地方創生交付金を活用して南砺市と連携し、東京藝術大学、伝統工芸高岡銅器振興協同組合、井波彫刻協同組合とともに事業を推進している。釈迦三尊像の再現で使われた同市の鋳物技術の高さを国内外へ発信し、文化財の修復や複製といった新しいビジネスの創出を目指す。

 

 

2. 東京藝術大学 

社会連携センター 伊東 順二(いとう じゅんじ)特任教授

伊東教授 東京藝術大学・社会連携センターで特任教授を務め、高岡市魅力発信アドバイザーとしても活躍する。伊東教授は、2014年から東京藝術大学で法隆寺の釈迦三尊像の3Dデータを保存する取り組みを始めたことをきっかけに、伝統技術と協働して三尊像の実物を再現することを企画、高岡市に連携を提案。同プロジェクトを通して、「国宝の釈迦三尊像を再現した仏像を海外で展示することで、日本の産業技術が文化財の復元に貢献するきっかけになれば」と期待を寄せる。No.3 3D原型全体01

 

 

 

  同大学は、2010年に模写や模刻の伝統技術とデジタル技術を融合させ、高精度かつ同素材同質感で文化財を復元・再現する技術を開発し特許を取得。流出または焼失した世界中の文化財を復元しており、2016年4月にはタリバーンによって破壊された「バーミヤン東大仏天井壁画」を原寸大で復元した。今回のプロジェクトでは、釈迦三尊像の3Dデータを収集し、3Dプリンターで仏像の原型を作成。現物に忠実な制作ができるよう蛍光x線調査で仏像の金属を分析し、その情報を高岡市の鋳物企業に提供した。鋳造された仏像の仕上げ作業も同大学が担当する。

 

 

3. 伝統工芸高岡銅器振興協同組合 

嶋 安夫(しま やすお)前理事長No.1釈迦三尊像

嶋氏 伝統工芸高岡銅器振興協同組合は、同プロジェクトにおいて釈迦三尊像の鋳造を担当し、制作に携わる組合企業をコーディネートした。複製の制作が始まった2015年に同組合の理事長を務めていた嶋安夫氏が中心となって、5社を選出。1400年近く前に作られた現物を忠実に再現するため、現物の素材に近い銅合金を取り扱っており、蝋型(ろうがた)という鋳造法で2メートル近い大きさの鋳物を製造できることが条件だった。嶋氏も自社の株式会社嶋安で制作の一部を担当するとともに、プロジェクト参加企業から持ち上がった技術相談や、東京藝術大学からの要望を橋渡しする役割を担った。

 

 

 

4.井波彫刻協同組合 

岩﨑 孝進(いわさき こうしん)理事長

岩﨑孝進理事長 井波彫刻協同組合は、釈迦三尊像の台座を担当。3体の仏像と大光背を合わせた500キロ以上を支える台座を実物と同じ檜(ひのき)と樟(くすのき)で再現した。台座下部の蓮の花を模した飾りは、ノミ200本以上を使い伝統的な技で彫刻されたものだ。

 

 井波彫刻の彫刻師は、寺院や神社の彫刻を数多く手がけてきたが、1870年代から住宅用の欄間や置物も作るようになった。手作業のみで作られる一品生産で、同じ作品はないと言われる。日本家屋に用いられる欄間は一組で100~300万円の高級品だ。近年は生活様式の変化から欄間の需要が低迷する中、井波彫刻業界ではスマートフォン用のスピーカーやギターを売り出す若手職人もいる。井波彫刻協同組合の岩﨑理事長は同プロジェクトを機に、「文化財の修復や復元も手掛けていきたい」と語る。

 井波彫刻 欄間 老松 FotorCreated 台座

 

 

 

 

 

 

 

プロジェクトで重要な役割を担ったキーパーソンに参加した経緯や思い、それぞれの課題について説明を受け、初公開の再現された釈迦三尊像と3Dプリンターで製造された原型を間近に撮影する。

 

 

――国宝・釈迦三尊像を忠実に再現した高岡の鋳物技術――

 

5.(株)梶原製作所 

梶原 敏治(かじはら としはる)代表取締役梶原さん2

 1902年に創業した梶原製作所は、大型の仏像や美術品を専門に手掛けている。鋳物づくり400年の歴史をもつ高岡市では、鋳物業は分業で行われることが多いが、梶原製作所は鋳物の原型づくりから鋳造、仕上げまでの工程をすべて一貫して行う。各工程にはそれぞれ専門の職人がおり、総勢20名が働いている。作業工程はほぼ職人の手作業で行われ、伝統技法を守り続けている。

 釈迦三尊像の再生プロジェクトでは、最大のパーツである177cmの大光背を鋳造、制作には1カ月を要した。これまで同社は札幌オリンピック聖火台浅草寺の吊燈籠といった有名な銅器製品を数多く手掛けてきたが、同社名や産地名が表に出ることはなかった。代表取締役の梶原敏治氏(65歳)は、「このプロジェクトを通して高岡銅器のブランド価値をアピールしていきたい」と語る。

代表の梶原氏に釈迦三尊像の大光背の鋳造作業の様子や伝統的な技法を大切にする同社の製品や方針について話を聞き、原型作りや仕上げ加工、鋳型の造型の様子を撮影する。

※写真は、釈迦三尊像を復元した時の様子です。ツアーでは、上記の作業を撮影予定です。

梶原製作所1 梶原製作所3 IMG_1639

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6.彫金師 

佐野 宏行(さの ひろゆき)氏

佐野さん 20歳で彫金師の父親に弟子入りし、52年間彫金の仕事に携わってきた。彫金は、金属の表面を鏨(たがね)と金槌で削る、彫り込む、叩く技法で文字や繊細な模様を花瓶や仏具に施す技術だ。同氏(72歳)は、30歳で日本工芸会正会員に認定され、幾度も日本伝統工芸富山支部展で入賞した実力者だ。現在は高岡市デザイン・工芸センターで次世代への技術の伝承を行っている。

 釈迦三尊像の再生プロジェクトでは、大光背の裏側に刻まれている銘文を複製した大光背に忠実に写し、佐野氏と次世代を担う彫金師の井上広司氏が文字を施した。現在では、レーザーやドリルでも文字を彫ることができるが、佐野氏は「手で彫らないと表現できない味わいがある」と語る。

佐野氏に彫金師としての歩みや、大光背の銘文を掘った感想を聞く。また、彫金師の将来的な展望についても話を聞き、彫金の様子を撮影する。

佐野氏 大光背に彫金2 佐野氏 大光背に彫金

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――3D技術がもたらす鋳物企業の現場――

7. 協和製作所

協和 社長 1953年の創業以来、常に熟練の職人技と最先端の機械加工技術の融合を図りつつ、高品質で高精度な鋳物製品づくりを目指してきた。創業当初は、マンホールや水道管などの単純な形状の製品を製造してきたが、近年では建設機械部品が主力製品で、ロボットなど産業機械の部品も増加し、低迷が続く鋳物業界で売り上げを伸ばしている。これまで製造してきた製品の中には、自動車製造用ロボットのアーム部品や東京スカイツリーの揺れを抑える免震部品がある。

 高品質で高精度な製品を安定して製造するため、同社は2016年6月に鋳物の砂型を製作する3Dプリンターを導入した。これにより、製品の納期を数日間短縮、多品種少量の受注にも対応できるようになった。仕上げ工程の機械化も進め、若手の作業員が1つの工程を習得するのに1年ほどかかっていたが、2,3日で機械の操作を覚えて作業ができるようになった。機械化を進めつつ、熟練の職人にしか造れない材質や形状の注文にも安価でスピーディに対応できる体制を整えたことで、売り上げは好調だ。

砂型を直接3Dプリントする機械などを取り入れ、工程の機械化や自動化を進めている同社の取組みについて早川勇(はやかわ いさむ)社長と担当者より説明を受ける。また、3Dプリンターや作業の様子を撮影する。

協和 新3Dプリンター 協和 3D砂型 協和 鋳造ライン 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【実施要領】

 

1. 日程:2017年3月16日(木)

8:12-10:47

東京-新高岡(かがやき521号、はくたか553号)

11:15-13:00(1h45m)

再現された釈迦三尊像の展示

   -高橋正樹市長

   -伊東順二特任教授

   -嶋安夫前理事長

   -岩﨑孝進理事長

13:15-14:15(1h)

昼食

14:30-15:45(1h15m)

梶原製作所

15:55-16:30(35m)

佐野宏行氏

16:45-18:30(1h45m)

協和製作所

18:50

新高岡駅着

19:16-21:56

新高岡-東京(つるぎ722号、かがやき541号)

          ※上記日程は変更が生じる可能性があります。

 

2.参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費用: 1人5,000円(全行程交通費、食事、通訳費等を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。

 

4.募集人数: 10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5. FPCJ担当: 於保(TEL: 03-3501-3405)

 

6.備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。 
(2)主催者とFPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

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