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実施日 : 2016年03月25日

報告: 「4年目のアベノミクスと日本経済」 木下智夫・野村證券株式会社金融経済研究所チーフエコノミスト

投稿日 : 2016年04月12日

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3月25日、FPCJでは野村證券株式会社金融経済研究所の木下智夫チーフエコノミストをお招きし、4年目を迎えたアベノミクスの成果と日本経済の現状と行方についてお話頂きました。同ブリーフィングには、中国、ドイツ、イタリア、ロシア、米国などの外国メディアの記者12名とアルジェリア、ルクセンブルク、マレーシア、タイなどの駐日大使館関係者14名を含む31名が参加しました。

 

まず、木下氏はアベノミクスの「3本の矢」について、「デフレ先進国」である日本は、ゼロ金利政策や量的緩和を世界に先駆けて実施してきたとし、第1の矢(大胆な金融政策)がデフレ脱却に果たした役割は大きいと評価しました。また、第3の矢である成長戦略については、電力自由化や女性労働力の活用、インフラ輸出などの分野では明確な成果を生んでいると述べつつも、これらの取組が成長率として表れるにはある程度の時間を要するだろうと説明しました。そして、新三本の矢で示された「希望出生率1.8」や「介護離職ゼロ」といった目標は、解決が困難な中長期的な課題に、真摯に取り組む姿勢を明確に示したと評価しました。

 

日本経済の現状について木下氏は、1~3月期の成長率はアメリカの景気減速や株安などの特殊な要因によって0%付近に留まるが、4~6月期は緩やかなプラス成長が見込まれ、景気は回復軌道に乗っていくとの見解を示しました。また木下氏は、民間消費が低迷している背景には円安に起因する食品インフレの上昇があると分析、今後は食品インフレが徐々に低下し、民間消費も改善すると予想しました。賃金の状況については、今年の春闘のベア率が低いことに触れつつも、重要なことは日本の総賃金(マクロ賃金)の動向を観察することであるとし、過去1年半の実質マクロ賃金の伸び率(2.5%)は日本経済がデフレに入る直前の90年代半ばの数値とほぼ同様であると指摘しました。

 

今後の経済成長率について木下氏は、予定通り消費税増税が実施された場合のGDP成長率は16年度に0.9%、17年度は-0.1%となり、仮に消費税増税が延期された場合は16年度が0.6%、17年度は0.7%になるとの見通しを示しました。また、注目すべき日本経済の強さとして、企業収益が過去最高を更新している点を挙げ、その仕組みはアベノミクスと少子高齢化の結果によって、労働市場がタイト化したことに起因すると指摘し、労働市場のタイト化(人手不足)は、企業の販売価格上昇を促し、企業の利益拡大に繋がっていると説明しました。

 

最後に今後の日銀による金融政策については、2%のインフレ目標を達成することは難しいため、日銀は追加緩和政策を取らざるを得ないだろうと指摘し、そのタイミングはインフレ期待値が低下する7月頃と予想しているが、景気減速が明らかになれば4月28日もあり得ると述べました。

 

質疑応答では、「消費増税延期の可能性はどの程度か」、「補正予算規模はどれくらいを予想しているか」、「日銀が次に導入すると考えられる具体的な追加緩和政策は何か」、「アベノミクスが4年目を迎えたが、輸出依存度が高い状況でまた円高になれば、すぐにその影響を受けて景気が悪くなるのではないか」、「今後予想される、追加的な成長戦略は何か」といった質問が挙がりました。 

 

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