実施日 : 2011年12月08日
報告(プレス・ブリーフィング):2012年の朝鮮半島と日本(2011年12月8日)
投稿日 : 2013年08月21日
小此木政夫・九州大学特任教授をお招きし、「2012年の朝鮮半島と日本」のテーマでお話しいただきました。参加者は、外国プレス12名を含む計27名でした。
小此木教授は、「世界のシステム変化を踏まえて北朝鮮の2012年を見る必要がある」と述べた上で、次のような点などをお話しされました。
(1)朝鮮半島では朝鮮戦争の休戦以降、冷戦下において、戦争も統一も不可能な制度化された分断(「分断体制」)が続いてきた。その中で北朝鮮は、1987年の大韓航空機爆破事件まで、戦争に至らない範囲での武力挑発、破壊工作を続けていた。
(2)冷戦終結後、北朝鮮は社会主義陣営の崩壊、経済の破綻、中国による韓国承認、金日成死去などの体制の危機を経験してきた。その20年間、北朝鮮は生き残りのために、東ドイツやソ連の姿を教訓に社会主義体制を堅持し、また核兵器・ミサイル開発を続けてきた。
(3)米国のオバマ大統領と韓国の李明博大統領の「条件付き関与政策」による膠着状態にいらだった北朝鮮が、事態の打開を図ったのが昨年の哨戒艦撃沈事件及び延坪島砲撃事件。
(4)過去20年間、体制の危機の中で武力挑発を停止していた北朝鮮がそれを再開できたのはなぜか。そこには最近数年間の北朝鮮にとって有利な状況(システムの変動)がある。(イ)北朝鮮の核開発進展(プルトニウム蓄積、ウラン濃縮進展)、(ロ)中国の大国化、(ハ)権力移譲の進展(金正恩氏が昨年の代表者会議で後継者デビュー)。北朝鮮の政権崩壊が間近であると主張する識者がいるが、体制維持という観点では、状況はむしろ北朝鮮にとって好転している。
(5)2012年は非常に予測しにくい。北朝鮮の祝賀ムード(金正日総書記古希(2月)、金日成生誕百年(4月))が終わった後、米国大統領選挙(11月)、韓国大統領選挙(12月)にかけての時期が要注意。4月迄に対話が再開されなければ、他に選択肢がなくなった北朝鮮が、両国の次期指導者に「北朝鮮と交渉することは不可避だ」と印象づけるために、選挙を前に再び核実験や武力挑発を行う可能性がある。
(6)大局的には、包括的な和平プロセスなしに北朝鮮による核開発や武力挑発は止まらないだろう。また、北朝鮮が北朝鮮である限り、核開発を一時的に凍結して、国際的な監視下に置くことはあっても、それを放棄することはないだろう。核開発を放棄させるためには体制変革を促すことが重要であり、中国の力も借りながら同国に市場経済化を受け入れさせていくほかないだろう。
最後に、小此木教授は質疑応答の中で、日朝関係の展望について、「国際環境の面において六者協議が再開されていない状態や、南北関係・米朝関係が進まない状況では、日朝関係だけが進展することはないだろう」と述べました。
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