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静岡県:緑茶がオバマの夢を実現!~緑茶は、米国民に、少ない支出で健康長寿を達成する救いの手を差し伸べる~

投稿日 : 2012年10月31日

今回は、「緑茶の医学的効能」をテーマとした、掛川市緑茶予防医学・健康科学研究所の鮫島庸一所長による論稿をご紹介します。(以下、寄稿者文責)

 

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健康長寿は国政の究極の目標であり、国家・政府の質を評価する基準でもある。現代では、健康長寿をいかに効率よくかつ少ない費用で達成するかが極めて重要となってきている。

 

米国ではオバマ大統領の下、国民皆保険に道を開く、歴史的な医療改革法案が成立した。その法案は医療費の急騰と、国民の6人のうち一人が無保険で、多数の米国民が世界一の医療を受けられなかったという状況を変えようとしている。治療中心の医療から、予防を主体とする医療への転換をはかり、IT化を取り入れて低コストで高品質の医療が誰でも受けられる医療保険制度の実現を目指している。

 

しかし、国民に大きな負担を与え、また実現可能性を危惧する意見も多く、大統領のプランの実現には、暗雲が立ち込めている。さらに、「大きな政府」による医療・経済政策に反対するとした勢力が急速に力をつけ、オバマ政権の土台を揺るがしており、現政権は、今回の大統領選挙で、苦戦を強いられている。選挙結果によっては、医療改革法が廃棄に追い込まれる恐れがある。今や医療保険制度改革の理念の実現が危ぶまれる事態になっている。

 

しかし、米国外に目を転ずると、大統領と米国の多数の国民にとって、勇気づけられる状況が存在する。オバマの夢である医療改革の一部がここ日本においてすでに実現されている地域がある。

 

日本は世界一の平均寿命を誇っている。その理由の一つとして、すべての国民が健康保険でカバーされ、また医療機関を自由に受診できることがあげられている。しかしこの制度は人類がいまだかつて経験したことのない超高齢化がもたらす医療費の高騰にも直面している。

 

このような状況にあって、日本の厚生労働省は、都道府県別の肥満者割合を2012年1月30日に、さらに健康寿命年齢を6月1日に初めて公表した。これにより大きな地域格差が存在している事が明らかになった。各自治体の保健行政を覚醒させることが狙いである。

 

その中で静岡県は特に注目を集めている。同県の肥満者割合は低く(BMI25以上の肥満者割合 全国31.1% 静岡25.2%、ちなみに海外の肥満基準であるBMI30以上の割合は 米国34.3% 日本3.9%)、健康寿命は最長(男:全国70.42歳 静岡71.68歳、 女:全国73.62歳 静岡75.32歳、男女計:全国72.13歳 静岡73.53歳)である。しかし静岡県内にも地域による格差は存在する。注目すべきは、緑茶の日本一の生産地でありかつ消費地である、同県西部地域が健康に恵まれていることである。代表的な緑茶の生産地である掛川市を例にすると、肥満者が少なく、(掛川市肥満者割合 静岡県を100とすると男88.6、女92.5)脳心血管障害が少なく、またがん死亡者も少ない。(静岡県を100とすると、掛川市全死因 93.6、悪性新生物 87.2 心疾患96.7、脳血管疾患94.9)さらに高齢者医療費も少ない(年間高齢者医療費 掛川市62,400円、全国 82,100円)すなわち長寿獲得コスト(年間高齢者医療費/平均寿命)が極めて低廉である。(長寿獲得コスト 全国は82,100円/82.3歳を1として 掛川市は62,400円/83.0歳で0.75である。また、1年間の一人あたりの医療費/平均寿命の比は、日本を1とすると米国は2.85となる。米国の平均寿命を得るための医療費は対日比で2.85倍、対掛川比では約4倍のコスト増となっている。)静岡県西部は日本で最も健康指標が良好な地域のひとつである。

 

掛川市は健康長寿の里として注目を集めている。この富士山を望む、人口116,000人の中規模の市の医者数は、人口1,000人当たり1.1名、日本の平均の1/2、米国の1/3である。極めて限られた医療資源であるが、日本のトップクラスの健康長寿を達成し、かつ、がん死亡率・老人医療費などの医療指標も優れている。日本全体に換算すれば、がん死亡者が20%減少し、毎年4兆円以上の医療費が節減できることになる。掛川市は、まさにオバマ政権のビジョンである少ない支出で健康長寿を達成しようとしている。

 

掛川市は日本でも有数の緑茶の生産地であり、市民は毎日緑茶をよく飲み、肥満は少ない。長い間、緑茶の効能が謳われてきたが、これを証明する医学的研究は日本では限られた研究しか行われてこなかった。厳しい少子高齢化に直面し、国政の状況も待ったなしである。光明は、この地域で緑茶が健康寿命を延ばし、医療費の節減に寄与する予防医療になっているかを調査する医学研究が進行していることである。最新のデータはこのことを肯定しつつある。(ヒトで3か月間緑茶エキス粉末を服用する無作為二重盲検試験で、偽緑茶粉末に比べ、やぶきた・べにふうき緑茶粉末は悪玉である血清LDL-コレステロールをそれぞれ9%・9.8%低下させた。べにふうき緑茶粉末は善玉である血清HDL-コレステロールを4.3%上昇させた。やぶきた緑茶粉末は腹囲を1.86cm減らした。動脈硬化を改善し、肥満を予防する可能性を示した(掛川スタディ等)。)

 

掛川市の緑茶を通じた予防習慣とその成果(掛川コホートスタディ等)が、オバマ政権の医療改革法案の有効性を医学的にも経済的にも支持しうるかもしれない。緑茶による予防の医学的効能を明らかにする研究が、医療改革法案を実現可能性の高い政策に変えうると考える。

 

現在、米国は肥満と、また日本は高齢化と戦っている。近い将来、多くの国々が、肥満と高齢化に対する二面作戦を強いられる。それは多額の費用を要する、長期に続く困難な戦いになるだろう。低廉で良質な保健政策は世界的な課題であり、掛川スタディはそこに大きな示唆を与えると信じている。

 

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[写真]緑茶の効能を研究する「掛川スタディ」協力者の面々(左)、緑茶を使った診察の様子

 

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問合せ先:
静岡県東京事務所 次長 松下育蔵
電話 03(5212)9035

 

掛川市緑茶予防医学・健康科学研究所 
所長 鮫島 庸一(サメシマ ヨウイチ)
電話 0537(21)1307、0537(22)6211(掛川市立総合病院)
メール mdysame@yahoo.co.jp

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