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3.11後の日本で進む災害への備え(2011年11月14日)

投稿日 : 2011年11月14日

【ウォッチ・ジャパン・なう vol.12/FPCJ】

2011年11月14日

 

 

3.11後の日本で進む災害への備え

 

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より実践的な「ブラインド型」防災訓練

10月29日、首都直下型地震などを想定した東京都の総合防災訓練が、都立小金井公園を主会場に行われ、都や地元自治体、自衛隊、警察、消防など関係機関の職員や多くの市民が参加しました。都の防災訓練は例年、9月1日の「防災の日」前後に実施されていましたが、今年は関係機関要員の東日本大震災被災地への派遣が続いていたため、延期していました。

 

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今回の訓練の想定は、「午前8時頃、震度6弱以上の直下型地震が発生した」というもの。東日本大震災の教訓を踏まえ、被害状況や手順などの詳細を事前に参加者に知らせない「ブラインド型」訓練が初めて取り入れられました。シナリオや役割分担が事前に決められていた過去の防災訓練とは異なり、参加者のその場での対応力が求められ、緊張感の漂う実践的な訓練となりました。

 

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警察・消防・自衛隊・東京DMAT(災害派遣医療チーム)等が参加したブラインド型の救出救助訓練では、家屋が倒壊し多数の住民が下敷きになった状況を再現。家屋の撤去や捜索活動などの役割分担が事前に決められず、被害者の数も分からないという状況の中で、隊員らはその場で役割を分担し、連携しながら救出救助活動を行いました。

 

支援物資の輸送訓練も同じくブラインド型で実施されました。米軍ヘリや自衛隊のトラックで大量の物資が運び込まれる中、仕分け役の自治体職員やボランティアはそれらを仕分けしながら、次々と寄せられる避難所からの搬送要請や道路寸断の情報などにその場で対応して物資を搬出することが求められました。

 

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このほか、地域の防災力を高めるため、市民約2千人が参加して住民だけで倒壊家屋から負傷者を助け出す訓練も行われ、隣近所の住民が協力してジャッキを使って下敷きになった人を救出し、毛布で作った簡易担架で搬送するなどしました。毎日新聞電子版(29日付)によれば、この訓練に参加した43歳の会社員は同紙に「人の救出活動がいかに大変かを初めて知った。普段顔を合わせることの少ない近所の人たちと助け合うことの重要性が分かった」と話したとのことです。

 

進む帰宅困難者対策

二次災害の危険性もある無理な帰宅の発生抑制も大きな課題となっています。三菱総合研究所の分析によれば、東日本大震災の発生時に自宅から比較的遠距離(居住区域外)に外出していた人の数は首都圏4都県で約1,400万人。公共交通機関が麻痺する中、このうち約600万人が当日に徒歩や自転車で帰宅したとみられており、ピーク時間帯には幹線道路の車道に歩行者が溢れました。

 

都心に位置する東京都港区では、東日本大震災当日、帰宅困難者となった会社員らが住民向けの避難所に詰めかけて混乱する事態が起きました。同区では今年10月、大規模災害時の帰宅困難者対策として、区内の企業や店舗などに対して災害発生時の従業員の一斉帰宅の抑制、帰宅困難者の受け入れ、飲料水や食料などの備蓄などを求める条例が全国で初めて施行されました。

 

報道によれば、首都圏を抱えるJR東日本では、東日本大震災の際に混乱を避ける目的で駅舎を閉鎖したことがターミナル駅周辺に帰宅困難者をあふれさせた反省から、首都圏の主要ターミナル駅に2011年度内にも飲料水や救急用品など計約2万人分を備蓄するとともに、災害時に駅スペースの一部を開放する方針を決定しています。

 

このほかにも、固定電話や携帯電話がつながらない状況下での家族の安否不安が人々の無理な帰宅を招いたとの反省から、保育園が園児の避難状況をTwitterで親御さんに伝えるサービスを開始するなど、さまざまな取り組みが始まっています。

 

高まる市民の防災意識

日本では例年、9月1日の「防災の日」の前後に各地で防災訓練が行われ、百貨店・スーパーには防災グッズの特設売り場が設けられます。今年は、手回し充電式のラジオ、転倒防止の伸縮棒、長期保存可能なレトルト食品などの防災グッズの売り上げが、例年にない高い伸びを見せました。

 

産経新聞電子版(9月1日付)によれば、大手スーパーのイオンは、例年より2週間早く8月10日から特設売り場を設け、商品数も通常の2倍の約280品目に増やしたところ、売り上げは全店で前年同期比で約8倍を記録。防災用具一式をまとめたセットなどが売れ筋だったとのことです。家電量販店のビックカメラでも、特設売り場での販売数が、防災ラジオが前年同期比2倍、携帯電話の充電器も同2倍にのぼったとのことです。

 

明治安田生命保険が今年8月に20~59歳の男女1,097人を対象にインターネットで行ったアンケート調査によれば、防災グッズにかける平均費用は9,606円で、昨年から2,300円も増加。家庭での具体的な防災対策としては「防災グッズの準備」と答えた人が昨年より10.9ポイントと大幅に増加し、過去最高の44.8%に達しています。

 

 

(Copyright 2011 Foreign Press Center/Japan)

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