山梨県 横内正明知事 (2014年5月)
投稿日 : 2014年06月12日
日本の象徴・世界遺産「富士山」があり、2027年に開業予定のリニア中央新幹線が通る山梨県。自然や癒やし、味覚など、その魅力と海外戦略を横内正明知事に伺いました。(聞き手:FPCJ理事長 赤阪 清隆)
~リニアで変わる山梨の未来~
写真下:山梨リニア実験線の試験車両
―リニア中央新幹線が開業します。県の事業戦略が大きく変わりそうですね。
13年後にリニアが完成すると、日本全体における山梨県の立地条件が劇的に、ドラマチックに変化すると思います。東京・品川まで直行で15分、そうすると都心からの所要時間が、横浜、大宮、千葉などからとあまり変わりなくなります。また、現在は関西方面からのアクセスがあまりよくありませんが、大阪からも1時間で来ることができるようになります。さらに、羽田空港~品川~山梨県へとアクセスが格段によくなり、世界各地とのつながりも非常に便利になりますから、外国からの観光客に山梨に来ていただきやすくなるのではと思います。
~世界中の人々をとりこに:愛される富士山~
―今、外国人観光客が増えていますね。富士山の世界遺産登録の影響ですか。
そうですね。国内外問わず、非常に多くの方に来ていただいております。特に外国人観光客が多くなりました。やはり、富士山が世界遺産に登録されたことが一番大きな要因と言えます。山梨を訪れた方は、昨年は2千9百万人を超えています。このうち、県内に宿泊された外国人は48万人くらいで、前の年と比べて約35%の増加となっています。中国、台湾からの観光客は以前から多くいらっしゃっていましたが、東南アジア、特にタイやインドネシアからの観光客が急増しています。欧米からの観光客も多く、国籍が非常に多様になってきています。
写真:横内知事(左)と赤阪理事長
―これから東京オリンピックがありますね。外国からの観光客誘致のためにプロモーション活動は。
毎年東南アジアへ行き、旅行社などへのPR活動を続けてきています。同時に、山梨にいらしていただいた外国人観光客が快適に観光できるような環境を整えていかないといけないと思っています。標識やパンフレット類の外国語表記の徹底や要望の多い無線LAN(Wi-Fi)スポットの拡大も進めています。NTT東日本と共に「山梨Free Wi-Fiプロジェクト」を展開し、公共の場所、旅館や駅などを中心に無料Wi-Fiスポットは既に1500カ所に上っています。無料のアプリも提供しており、観光情報の提供や交通・ルート案内などのサービスを提供しています。
―まだまだ観光客が増えそうですね。
政府は、2020年の東京オリンピックまでに外国人観光客数を倍増させることを目標にしていますが、山梨県は東京から近いということ、それから世界遺産・富士山もあることから、3倍くらいになるのではないかと予測しています。最近の外国人観光客の傾向として、個人旅行が圧倒的に増えてきています。地方都市は、大都市に比べて観光しづらい面があるのは事実。より快適に過ごしていただくために、交通手段の確保や外国語ができる人材を観光案内所に置くなど、きちんと環境整備をしていく必要があると思っています。
~山紫水明:豊かな自然がもたらす恵みがいっぱい~
写真:Japan Wine Competition(国産ワインコンクール)2013
で入賞した山梨県産ワイン
―富士山、温泉、果物、甲州ワインそしてジュエリーや織物。ブランド戦略は。
富士山が世界遺産になったことに伴い、富士山の麓の地としてのブランドは国際的に高まっていると非常に強く感じます。しかし、国際的な知名度はまだ高いとは言えません。世界中の方が憧れるグレードの高い観光地にしていかなければならないと思っています。富士山のほかにも日本で二番目に高い北岳、三番目に高い間ノ岳もあり、山岳観光にも力を入れて、世界でも指折りの観光地になっていけばいいなと思っています。
―山梨には、いいもの、世界に誇るものがたくさんありますね。
写真右下:山梨ジュエリーの産地ブランド「koo-fu(クーフー)」
Japan Wine Competition(国産ワインコンクール)で金賞を受賞した、日本固有の甲州ブドウから造られた甲州ワイン、マスカットベーリーAの赤ワインなど、山梨県産ワインの質が非常に良くなりました。ワインのほかにも、品質の高いウイスキー、日本酒、地ビールも豊富です。山梨は四方を山に囲まれているので良質の湧き水が豊富でミネラルウォーターの生産量も日本一。美味しいお酒ができるのも、それだけお水が美味しいということです。また、ジュエリーや織物製品にも、デザイン、質ともに非常に優れたものがあります。国内外有名ブランドのOEM(納入先商標による受託製造)から、独自ブランドへの展開も始まっています。
―山梨の果物は、外国でも人気ですね。
山梨はモモ、ブドウ、スモモの生産量が日本一ですが、輸出に取り組んでいるのは、人口減少、高齢化、そして若い人の果物離れが進んでいて国内需要が減っているからです。もちろん国内での振興にも力を入れていく必要があると思っていますが、輸出に力を入れていくことは不可欠です。台湾にモモやブドウを持って行くと「素晴らしい」と誰しもその質の高さを評価してくれます。昨年度の山梨県のモモやブドウの輸出額は3億5千万円。金額は着実に増えていますが、まだ僅かなものです。毎年、海外でプロモーション活動をしていますが、需要はあるのになかなか増えないのが難しいところです。果物の輸入を禁止している国もありますし、厳しい植物検疫をクリアするために、農家は手間をかけて害虫駆除をしなくてはいけません。それに、モモは傷みが早いので、輸出の過程で売り物にならなくなることもあります。また、物流のルートが見いだせないという問題もあります。課題に一つ一つ取り組んでいくことによって産地の未来が開けていくのだと思っています。
―少子高齢化が進んでいます。
大きな課題ですね。各地方公共団体がそれぞれ少子高齢化対策を講じていますが、直ちに人口減少が止まることにはつながっていません。それでもしっかり取り組まなくてはいけない重要な課題です。今、山梨県の合計特殊出生率は1.4くらいで平均並みですが、子育て支援をすることによって出生率を上げようとするさまざまな取り組みを行っています。全国の自治体の中には、努力が実を結び出生率が上がってきているところもあります。それぞれの自治体で一生懸命取り組むことが大切だと思っています。
写真は、山梨県よりご提供いただきました。