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今月の雑誌から:五輪への道

投稿日 : 2021年05月14日


東京五輪・パラリンピックが近づいてきた。コロナ禍がまだ収束の兆しを見せない中、五輪開催の是非やその実現可能性について、様々な意見がメディアを賑わしている。主要新聞社による世論調査結果も報じられている。主要月刊誌6月号と関連新聞報道から、主な記事の概要を紹介する。

 

 

■【特集】艱難辛苦 五輪への道、「開催できるか?苦難の末にある『最後の詰め』」東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 武藤敏郎事務総長インタビュー(『中央公論』6月号)

 

武藤氏は、これまでのところ北朝鮮以外には参加を辞退した国はなく、現段階ではむしろ期待感の方が高く、世界中のアスリートにとって開催が前提になっている、2022年には北京冬季五輪が予定されており、延期という選択肢はもはやないと断言する。たとえ無観客になったとしても開催すべきであり、アスリートが競技を行うこと自体は、PCR検査を徹底し、外部との接触を遮断するクリーンな状態(バブル)をつくるなどコロナをアンダーコントロールにすれば、できると明言する。

 

そして、万が一中止となっても予算の節約になるわけではなく、むしろ日本の文化や価値を世界に発信する機会を失うことになる、万全のコロナ対策を講じ、艱難辛苦を何とか乗り越えて開催できれば、コロナによって分断された世界の人々に連帯を取り戻すこととなり、東京大会は大きな意義があったものとして語り継がれる、と熱っぽく語る。

 

昨年から1年間、五輪はどういう大会であるべきかについて考える時間を与えられたとして、LGBTや障がい者との関係も含めた「ダイバーシティ&インクルージョン」の追求に対して、改めて思いを強くした、お祭り騒ぎではなく、本来あるべきアスリートの競技の場という簡素な姿へ原点回帰すべきである、と武藤氏は語る。

 

同氏は、IOCとの信頼関係は非常に強固だとし、バッハ会長もコーツ副会長も、日本は信頼できる、完璧に準備している、と評価してくれていると自負する。女性差別問題については、あらためて、しかるべく発信すべきと考えており、例えば大会終了後に、この大会はジェンダー・イコーリティについて何を目指し、何を実行したのかを何らかの形で世界に訴えることを考え始めていると語る。

 

 

■「五輪推進派と反対派、いま言いたいこと」教育ジャーナリスト 小林哲夫氏(『中央公論』6月号)

 

小林氏は、五輪に対する考えを、政界、財界、学会の人々に聞いて、推進派と反対派の意見を本記事に取りまとめたうえで、問われているさまざまなテーマに目を背けず、議論を積み重ねてほしいと呼びかけている。

 

同記事によれば、質問を受けた与党の国会議員二名のうち、青山周平議員は、「JOC、東京都、国が総力を挙げて感染症対策に力を入れている。コロナ禍で家庭や学校でオンライン化が進んだ。世界中でオリンピックをタブレットで観戦し感動を分かち合うようになる。東京大会がオリンピックの歴史においてレガシーになると信じている」と答える。浮島智子議員は、「まだコロナ禍で世界中が分断されてしまっている。だからこそ世界を一つにするためのオリンピックを開催する意義がある。また、日本だから苦難を乗り越えて開催できたということも示せる」と語っている。他方、質問を受けた二名の野党議員は、出場選手の数を絞るための競技別の代替大会の開催を提案したり、日本のPCR検査数の少なさやワクチン接種の遅れを指摘しつつ、コロナ対策の手を縛らないために中止の議論を開始すべきと訴えたりしている。

 

財界の声としては、日本・東京商工会議所の三村明夫会頭が、「オリンピック・パラリンピックの開催は、社会全体に大きな変革を及ぼす機会でもある。東京大会に向けては、スポーツの分野に限らず、産業・技術、観光、教育など、さまざまな分野で大胆な挑戦がすすめられ、心のバリアフリーやパラスポーツの推進も積極的に行われてきた。こうした社会課題の解決に向けた挑戦こそが、今回の大会のレガシーとなるのではないか。安全、安心な大会を実現できれば、国民に明るさと希望を与え、日本の力を世界に示すことになる」と期待感を顕わにしている。

 

さらに、湧永製薬の湧永寛仁社長は、「日本は、列車を1分1秒の遅れも出さず正確に運行させる。このようにコントロールできる国なので、密をつくらないように選手、観客のスケジュールをオペレーションできる」と自信をのぞかせ、「世界中から『日本だから開催できたんだね』と評価されるよう、日本の力を発揮することに大きな意味があり、大切だと思う」と語る。

 

 

<徹底討論>コロナ「緊急事態列島」、「『東京五輪』開催中でも中止する覚悟を」東京大学大学院法学政治学研究科(法学部) 米村滋人 教授ほか (『文藝春秋』6月号)

 

本件討論で、小林慶一郎慶應義塾大学教授は、「やるべきか否かという点では、できるならやるべきだし、やりたい。これだけコロナで疲労した社会を回していくための共通目標として、五輪を開催することには一定の意味がある」としつつも、「やれるか否か」と問われると「かなりリスクが高い。そもそも国際世論の動向もあり、我々日本人だけで決められる問題ではない」と主張する。

 

米村教授は、「やるのであれば、感染リスクの高い飲食店の営業活動を昼から禁止したり、感染リスクを抑える基準をつくったり、来日する選手たちに厳格な指導をおこなわなければならない」、「五輪が開催できるかどうかは感染対策が国際的な信頼を得られるかどうかにかかっています」と話す。宮坂昌之大阪大学名誉教授は、「水泳会場や体育館のような大きな空間で、通風や換気がしっかりしていれば、感染リスクは非常に低い」と指摘する。

 

大野元裕埼玉県知事は、埼玉県は東京都に次いで多くの会場があるホスト県であり、安全に開催できるか、国際オリンピック委員会や組織委員会などとしっかり協議しながら、県として判断する、と述べるとともに、「最悪の場合、例えば、数日前にどこかの選手団で大規模クラスターが起きたとなれば、県の責任で開催か中止かを判断せざるを得ない、という心づもりでいます」と心情を吐露した。

 

 

東京五輪・パラリンピック開催に関する世論調査結果

 

朝日新聞デジタル 4月12日

朝日新聞社が4月10、11日に実施した全国世論調査(電話)で東京五輪パラリンピックをどのようにするのがよいかを3択で聞くと、「今年の夏に開催する」は28%(前回3月は27%)、「再び延期する」が34%(同36%)、「中止する」が35%(同33%)で、いずれも3月から横ばいだった。

 

読売新聞オンライン 5月10日

読売新聞社が5月7~9日に実施した全国世論調査で、今年夏の東京五輪・パラリンピックについて聞くと、「中止する」59%が最も多く、「開催する」は「観客数を制限して」16%と「観客を入れずに」23%をあわせて39%にとどまった。開催都市の東京都では、「中止する」が61%に上った。   

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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