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今月の雑誌から:デジタル化実現へ「待ったなし」の改革

投稿日 : 2021年01月29日


「コロナ禍でわかったことは、私たちはこれまでデジタル化の重要性を叫んでいたものの、実際のところ何もやっていなかったという現実です」。自治体の中で最も先進的にデジタル化に取り組んできたとされる広島県の湯崎知事が平井デジタル改革担当大臣との対談(VOICE1月号)でこう振り返った。菅政権が政策の二本柱の一つとして取り組む「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」に向けた改革の陣頭指揮をとる平井・河野両大臣は、どのような現状認識とビジョンで、改革を進めようとしているのか。識者の見解も交えて紹介する。

 

なお、当センターでは、今年 1 月 12 日に、河野行革担当大臣をお迎えし、「行政改革・規制改革で日本はどう変わるか」と題するオンライン・プレスブリーフィングを開催しました(日英逐次通訳付き)。こちらも、是非ご視聴ください。

 

■ 「ともに『言い訳なき改革』に臨む覚悟」(『Voice』1月号、広島県・湯崎英彦知事との対談)で、平井卓也デジタル改革担当大臣は、「デジタル化を徹底的にやると決めた以上、私も言い訳なしで進めていく」と述べる。平井大臣は、「物事をたんにデジタル化する『デジタイゼーション』と、やり方を全部変えてしまう『デジタライゼーション』は明確に区別しなければいけない」と指摘。これまでの日本のデジタル化は、「民間でいえばビジネスモデル、行政でいえば仕事のやり方を根本的に見直すことなくデジタルを部分実装」しただけで「中途半端」、「いくつもの政策や閣議決定をコミットしてきたものの、何一つとして成し得ていない」と断じた上で、今年のデジタル庁誕生、今通常国会に提出するIT基本法の抜本改正法案などにより、「行政手続きをスマートフォン一つで60秒以内に完結するような社会」を実現させるとの決意を表明する。

 

また、平井大臣は、「デジタル庁は、誰一人取り残さないNo one left behindの精神と、徹底的に人間に優しい社会を目指していく」と主張。米国や中国とは違い、日本のデジタル化は個人情報への配慮が十分されながらも便利で、高齢化などあらゆる問題が解決できて、地方の暮らしの素晴らしさを再認識できるものでありたいと訴える。さらに「DXといいながら内部留保ばかり抱えている企業が多いようでは、GAFAとの差は開くばかり」だと述べ、企業も本気でマインドセットを変えるよう求めている。

 

 

■ 「DXは国民の幸福のためにある」(『文藝春秋』2月号)で、河野太郎行政改革担当大臣は、まず、国民の暮らしを便利にするため、結婚や離婚、死亡などの際の役所や金融機関での手続きを簡略化し、一カ所でできる「ワンストップ」型の行政を目指すと述べつつ、デジタル化における究極の目標は、「ぬくもり(セーフティネット)」を大切にする社会を作ること。改革の最大のターゲットは少子高齢化で、子供や高齢者など、弱い立場の人間にどう寄り添っていくか。人口減少で人手は足りなくなるからこそ、人間がやる必要のない仕事は、AIやロボットに代用させるべきだと主張する。さらに、出生数が減り続ける一方で、児童虐待や子供の貧困問題は増え続けていることに着目。子供の7人に1人が貧困状態で、特にひとり親家庭における貧困率は48%、「先進国の中でもワーストクラスで恥ずべき事態」とし、「社会の宝である子供を保護し、教育を受けさせ、実社会に送り出す」ことを最優先せよと訴える。

 

そのうえで、子供の教育の課題解決策の一つがオンライン教育の規制緩和だとし、オンライン教育は、生徒一人ひとりの理解度に合わせた授業ができるため、先生には「もっと寄り添う必要がある生徒にフォーカスしてもらう」ことができると述べる。また、コロナ禍に限らず災害時の支援金給付や罹災証明書の発行などでも、行政はこれまで国民を「大雑把な“集団”」で捉えていたが、デジタル化で「本当に支援を必要としている人を抽出することができる」と、その意義を強調する。

 

 

慶應義塾大学環境情報学部教授でヤフー株式会社CSOも兼務する安宅和人は、AI x データ化時代の生存戦略」(『Voice』1月号)で、多くの日本企業は「20年前に着手すべきであった」デジタル化(DX)を一刻も早く断行すべきであり、DX以上にまず、本業とは別の新たな事業体を三つ、四つと飛び地のように作るべきで、いずれかが育ち、やがて成功すれば速やかに飛び移る、いわば、事業の「移住戦略」をとるべきだと主張。「日本企業が昨今、アメリカのGAFAを筆頭としたメガテック企業の後塵を拝しているのは、新事業への挑戦、新空間での事業構築を疎かにしているからではないか」と論ずる。

 

また、政府のデジタル庁創設の動きについて、安宅教授は、日本が抱える最大の課題の一つを「本気で進める姿勢」として心から歓迎するとしつつ、「まず期待するのは、公的なシステムや行政サービスすべてをデジタル空間で完結させ、国民がいつどこにいてもアクセスできる仕組みづくり」だと述べる。その際に必須なのがユーザーID、すなわちマイナンバーであり、現在普及率が約20%にとどまるマイナンバーカードを早急に全国民に行き渡らせる必要があると指摘。マイナンバーカードで全ての行政書類が処理できれば役所のフロント業務の8割は削減できると予想する。また、「優れたIT企業のなかから、時限的にエンジニアの5%を行政に駆り出すくらいの試みをしてもよい」と、人材面での官民連携を説く。 

 

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。    

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