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平成時代を振りかえる

投稿日 : 2019年04月19日

■御厨貴 『中央公論』4月号

 

東京大学の御厨貴客員教授は『中央公論』の論文「小選挙区制、二大政党制の改革で劣化した“政治家気質”」で、平成の政治改革について、1996年(平成8年)に導入された小選挙区制と、その結果として展望された二大政党制は「残念ながら失敗に帰した」と概括した。御厨氏は分岐点は二つあったとして、①政権交代を間近にした民主党代表・小沢一郎氏が公設秘書逮捕で代表を辞任した②民主党が政権を失った後、しっかりとした反省・総括をしなかったーことを挙げた。

 

さらに御厨氏は、日本政治の現状について、政権を再奪取した自民党は国政選挙の連勝と安倍晋三首相自身の総裁選3選の過程で「政権を渡さないことが自己目的化した」とし、政治目標「『選挙に勝つこと』にあるのではないだろうか」と疑問を呈している。与党優位が“常態化”した結果、政治も行政もすっかり「事務化」し、議論の場である国会も「まるで『置物』のように動かない」と断じた。

 

その上で、御厨氏は「敵いない政権ほど怖いものはない」と指摘するとともに、ダイナミズムを欠いた「政治の安定」が継続する日本に迫ってるのは、「どうなっていくのかということが、全く見えない恐ろしさである」と警鐘を鳴らした。また、先が見えない理由の一つにポスト安倍の不在があり、従来の自民党にはあった「次の指導者を育てる仕組み」がないことだと述べた。そして、先の見えないまま平成の政治が終わりを迎えるに当たり、「政党政治の危機的状況と時代の終わりが重なるというのは、私には不気味でならない」と結んだ。

 

 

■小林喜光  『文藝春秋』4月号

 

経済同友会の小林喜光代表幹事は『文藝春秋』の論文「日本経済 平成は『敗北』の時代だった」で、2020年から戦後百年である2045年までの国のあるべき姿について、財政再建による政府債務のコントロールや“データ覇権主義”時代における日本からの新しい価値の創造などを強く求めた。

 

論文は経済同友会が昨年12月にまとめた「Japan2・0 最適化社会の設計―モノからヒト、ココロヘ」の提言をベースにしたものだが、小林氏は約千百兆円に上る国・地方の債務残高を“深刻な状況に陥っている”として、当面の消費税引き上げの断行を強く求めるとともに「消費税率はさらに段階的に引き上げる必要がある」と強調した。特に小林氏は、政府が掲げる2020年をめどとする「名目GDP(国内総生産)六百兆円」目標について、2016年末にGDP計算方法が変更され旧基準に比べ31兆円も「ゲタをはかせた状態」となっていると指摘し、政治的スローガンは構わないが「ずさんなデータの取り扱いでは精緻な議論ができない」とクギを刺した。

 

さらに小林氏は日本は“データ覇権”の時代の流れ乗れず次世代通信規格「5G」で中国や北欧企業に完全に負けており「日本は基幹的技術を欧米や中国から手に入れなければ、産業や社会が立ち行かなくなる」と危惧の念を表明した。そしてこの苦境打開するにはデータ覇権主義と異なる次元の「リアル」世界での日本の強みである鉄道、公共システム、コンビナート、素材分野、精密医療などの分野における膨大な知の集積をバーチャルな世界と“ドッキング”することが新しい道となると提言した。

 

 

写真:ロイター/アフロ


※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。


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