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平成日本の「閉塞感」を打ち破るために

投稿日 : 2019年03月22日

福田康夫 元内閣総理大臣   『文芸春秋』2月号

 

 

福田康夫・元内閣総理大臣は『文藝春秋』のインタビュー「平成日本の「閉塞感」を打ち破るために」で、自らの議員生活とほぼ重なる平成の時代を振り返りつつ、「現政権が内政・外交面でどの方向を選択するのか、まだ判然としないところがある」とし具体的な問題点として、財政再建の遅れ、外国人労働者受け入れ策、「東京一極集中」などを指摘。問題の根本は、「平成の30年間に進んだ内外の構造変化に政策が追いいていない」こととし、「閉塞感を払い除ける突破口は弥縫策の中にはない。思い切った長期展望を持って対処すべきだ」と強調した。そのうえで、例えば人口が1億人に減る30年先の日本はこうあってほしいという姿、例えば「東京一極集中是正」のような将来の日本の国づくの目標を掲げて国民総がかりで取り組むことの重要性を説いた。

 

安倍政権の経済政策(アベノミクス)について、福田氏は「経済は若干の回復をしたが、大きな犠牲を伴った」として、第一に国の借金の増加、日銀のマイナス金利が象徴する「異次元の金融緩和」による影響を挙げた。このため、「企業収益・雇用は回復したが、国民の生活水準の向上は僅か」だとした。公的債務が1100兆円に達した財政について、「政府は国の借金を減らすよう努力しているようには見えない」と指摘消費税を上げる一方で、国の借金はむしろ増えている」という問題を国民にしっかり説明すべきと主張した。

 

また、福田氏は人口急減時代の日本にとって、東京一極集中は自然災害が多発する中でリスクが極めて大きいとする。先進国の中で最大都市圏人口が増加し続けているのは東京だけであり、リスク回避のためには東京圏から人や富や首都機能が出ていく「東京圏機能分散が不可避と指摘した。さらに、昨年末の入管法改正で今年4月から推進される外国人労働者受け入れ政策についても、「労働力が不足するという事情だけで、外国から人をどんどん入れようとするのはあまりに短絡すぎる」とし、その前に女性や高齢者の活躍の場の創出AIやロボット活用などを進めるべきとの考えを示した

 

安倍外交について福田氏は十分評価していいとしつつ「日露、日朝関係については、慎重に進めてほしい」と注文を付けた。また経済発展が続く中国これからどう成長し、変わっていくかを見極め上で、中国にアドバイスできる立場になってほしいとし、その第一歩して、7年ぶりの首相訪中は成功だったと分析した。

 

また安保面では、福田氏は2016年に施行された「新安保法」(平和安全法制)によって自衛権として自衛隊が武力を行使できるようになったとして「戦後日本が抱えてきた安全保障の悩みが、新安保法をもって一応の解決を見たのなら、当分の間、憲法に手を入れなくてもいいという考え方もできる」と、憲法改正問題を特別急ぐことはないとの考えを示した。 

                                     

 

写真:ロイター/アフロ


※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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