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21世紀の日本の大学教育・医療のために

投稿日 : 2019年03月19日

■岩田喜美枝、真野俊樹 『中央公論』1月号

 

中央大学の真野俊樹教授は、『中央公論』の東京都監査委員の岩田喜美枝氏との対談「医学部入試の女性差別を生み出した『医師偏在問題』で、日本の医療には、地域間の病院・病床、医師数の偏りなど「医療と医師の偏在問題」という長年の問題があり、女子受験生への差別を行った東京医科大学の入試不正問題の根本原因は「医師の偏在問題にある」と指摘した。同時に、医学部特有の事情として「卒業後にそのまま大学病院に勤務することが多い」ことから、医学部入学自体が“就職試験”の意味あいを持つため、入試段階で男子に有利な差別をしてきた事情があるとしている。

 

岩田氏は、厚生労働省の資料によると医師の数は足りているとされるが、日本はOECD加盟国の中で人口当たりの臨床医数が極めて少ないことを挙げ、「実際に医師は足りていないのではないか」と指摘。厚労省のデータは、医師の勤務が「週60100時間の過重労働」が前提となっており、女性医師の増加を踏まえた子育て期の制約などが考慮されているのか疑問を呈す。岩田氏によれば、過重な労働環境の中で、出産・育児で約2割の女性医師が辞めているとする。

 

岩田氏は、医師の働き方を改善するためには、医師の仕事の削減、効率性の向上、働き手の増加を挙げるとともに、女性が働きやすい「専門医」の資格取得支援策を講じるべきだと主張している。また、真野氏は地方大学の医学部には、卒業後、地元で一定期間働くことを条件に入学を認める「地域枠」が一定割合で設けられているが、あまり機能していないとして、「その大学のある地元出身者のみが受験できる『地元枠』を設ける」ことも検討する必要があると主張した。

 

 

■吉見俊哉 『Voice1月号


東京大学の吉見俊彦教授は『Voice』の論文「文理の二刀流が未来をつくる」で、日本の高等教育について、「(日米トップ大学の)学生の質にはまったく差がない」としながら、「学生たちの知的な思考力や想像力を世界に通用するような仕方で伸ばす仕組みになっていない」と指摘する。教育制度の仕組み上の問題の一つに、履修科目が「あまりにも広く浅く科目が細分化さている」ため、履修科目数が米国の大学生に比べて多すぎることを挙げる。学生がよほど意識的に自己の学習を体系化できなければ、勉強自体が身につかないというわけだ。

 

さらに吉見氏は価値創造の観点から、大学教育においては「一人の学生が二つの専門を学ぶ」という“二刀流”への転換を求めている。すでに、米国の大学で実施されている「メジャー・マイナー(主専攻・副専攻)」や「ダブル・メジャー」の方式を導入すべきだとしている。また吉見氏は、日本は明治以来、理系的、工学的な知を重視し文系的な知の有用性を理解してこなかったことに苦言を呈し、「未来へ賭ける知力を身に付けるには、文系的な知識や思考法の習得が大変重要な意味を持つ」と強調した。文系的な知とは「常識を疑う方法」、「当たり前を疑う方法」を身に付けることであって、それがなければ「百年先の未来をデザインすることはできない」と論じている。      了  

 

 

写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ


※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

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