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オンラインインタビュー 第三回『米国・ノースカロライナ・パブリックラジオ レオネダ・インジ記者』

投稿日 : 2020年07月02日


~新型コロナパンデミック、世界はどう乗り越えるか~



オンラインインタビュー 第三回『米国・ノースカロライナ・パブリックラジオ レオネダ・インジ記者』

 







シリーズ第三回目のインタビューは、米国「ノースカロライナ・パブリックラジオ」のレオネダ・インジ記者です。同記者は、2009年に米国コロンビア大学ジャーナリズム大学院のナイトバジェット・フェローシッププログラム事務局の推薦により来日し、「ノースカロライナ州から日本に輸入されている産品」をテーマに取材しました。初来日の到着の際、空港でマスクを着けた女性に出迎えられ、とても驚いたとインタビュー前に当時の思い出を語ってくれました。

 

アフリカ系アメリカ人や米国の南部文化を主に発信するラジオのパーソナリティであるインジ記者は、新型コロナウイルス感染拡大に伴うワークスタイルの変化について話し、インタビュー後半には、ウイルス感染率と死亡率の人種による違いに触れ、その理由や背景について説明しています。


 ※動画の一部にノイズが含まれます点、予めご了承下さい。



【インタビュー全文(FPCJ仮訳)】


Q1. 新型コロナウィルスは、どのような生活の変化をもたらしましたか?

 

 

<新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、生活上の変化>

 

こんにちは、私の名前はレオネダ・インジです。WUNCパブリック・ラジオで人種と南部文化を担当するレポーターです。私はノースカロライナ州チャペルヒルで働き、ダーラムに 住んでいますが、現在はフロリダ州にいます。コロナウイルスの流行後、ニュージャージー 州から主要州間高速道路I-95号線*を通ってフロリダまで移動しました。(コロナウイルス 感染症が流行する前と後では)生活はがらりと変わり、それに慣れなくてはいけませんが、 保健当局が生死に関わることだといったらそれに従わざるを得ないと思います。

 

例えば、ノースカロライナ州を出発してI-95を北上してニュージャージーへ行く時に気がつ いたのですが(私たちは車で移動していて、3月中旬以来飛行機に乗っていません)、 ニューヨークへ行く際にニュージャージー・ターンパイクという有名な高速道路を通らない といけないのですが、この道路は次から次へと料金所があり、通行料を支払わなければいけ ません。この高速道路を1ヶ月ほど前に通った時に通行料を支払いませんでした。料金所は ありましたが、料金を徴収する人は働いておらず、通行料を直接支払いませんでした。料金 所を通過すると素敵なカメラが車のナンバープレートの写真を撮影して、請求書が郵送され てくる仕組みになっていました。今でも私が通過した料金所の通行料の請求書が郵送されて きています。

 

今度は 180度変わってI-95を南にフロリダ州へ向かいます。多くの人がまだ在宅勤務をし ているため、以前のような混雑がなく非常にスムーズに運転できます。私はジャーナリスト でエッセンシャルワーカー(社会に必要不可欠な労働者)なため、仕事をしなければなりま せんが、私もほとんど在宅で仕事をしています。公共ラジオのレポーターとしてマスクを何 枚か持っていますが、それ以外にも、マイクをつけて使用する調整可能な長さ10フィート (約3メートル)の長い棒を持っています。私は声を記録したいと思っています。話を聞き たい人が外にいる場合、この棒を使って(一般市民から発せられる)特別な声を録音してい ます。私がZOOMを使ってインタビューする人々の多くはオフィスでインタビューされるのを待っている有識者や公職に就いている人々ですが、むしろ私は一般の人々が何をし ているのか、 どういう気持ちでいるのか、彼らの生活がどう変化しているのか、そしてこの パンデミックにどう対処しているのかを知りたいのです。

 

フロリダ州まで運転する途中、一度ジョージア州サバンナを過ぎてフロリダとの州境に着い た際に車が迂回させされ、高速道路から降ろされたことがありました。ナンバープレートを チェックされ、どこから来たのか、そしてどこに向かっているのか聞かれました。私の車 は、ニューヨーク州やニュージャージー州のナンバーではなかったのでほっとしましたが、 この二つの州は新型コロナウイルス感染者と死亡者のホットスポット(非常に多い地域)であったことから、多くの人がフロリダ州に殺到していたため当局が止めようとしていました。

 


<ウイルス感染率と死亡率の人種による違い>


私はアフリカ系アメリカ人の女性で、人種と南部文化のレポーターとして、このウイルスが 日常的に人々、特に有色人種にどのような影響を与えているかを追跡することに非常に興味があ ります。黒人やラテンアメリカ人のコミュニティーでは感染者や死亡者の数が他のコミュニ ティーよりも多いです。専門家や経済学者によるとその主な理由の一つが貧困との関連で す。アメリカの多くのマイノリティ、アフリカ系アメリカ人やラテン系の人々の多くが自宅 からできるような仕事に就いていないのです。

 

私が在宅で仕事ができるのは贅沢なことです。彼らは在宅で働く機会がないだけでなく、多 くの人に囲まれた中でする仕事をしています。例えば食肉加工場のような工場、スーパー マーケットなどです。そして仕事へ行くために公共交通機関を利用しないといけません。さらに多世代住宅に住んでいます。このため、コロナウイルスやコロナウイルス感染症の影響 を非常に受けやすいのです。

 

私がレポートした中で感情を揺さぶられたのが、黒人の葬儀に関するストーリーです。黒人の葬儀では何人かの死者を出し、コロナウイルス感染症の震源地のようでした。葬儀では人々は 集まりたい、抱きしめあいたい、そしてキスをしてお別れしたいのです。葬儀の参列者は少しの間社会的距離を 保つことができないと感じたかもしれませんが、病気を広げ、結果的に死亡者を出すことに なってしまいました。

 

コロナウイルス感染症はノースカロライナ州を含め、いくつかの週で深刻なことになって いて、家の外へ出るときはどこへ行くにもマスクの着用が求められています。フロリダ、テ キサス、アリゾナ州では、患者の数が増加しており、社会的な距離を保っていない若い世代 の患者が増えています。これが我々の直面している現実です。専門家、疫学者、そして保健 師に話を聞くと手洗いをして、マスクを着けて家にいなさいと繰り返します。私たちがこの 夏、このガイドラインに沿って他の人から6フィート(約2メートル)の社会的距離を保 ち、家から出ないことで全てがうまくいくことを願っています。

 

※インターステート95号線は、フロリダ州マイアミからカナダのニューブランズウィック州 へ至るアメリカ東海岸の主要な州間高速道路。

 

 

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<ノースカロライナ・パブリックラジオ>
1976年設立、ノースカロライナ州東部の公共ラジオ局。米国の非営利・公共のラジオネットワーク、ナショナル・パブリックラジオ(NPR)の会員局。

 

メディア:https://www.wunc.org/
記者プロフィール: https://www.wunc.org/people/leoneda-inge

 

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