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【米国】フリーランス ナンシー・マツモト記者 (雑誌「エディブル・マンハッタン」「サブール」などへ寄稿) | 公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)

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【米国】フリーランス ナンシー・マツモト記者 (雑誌「エディブル・マンハッタン」「サブール」などへ寄稿)

投稿日 : 2015年12月21日

アップ★DSC022162015年1月にFPCJの招聘プログラムで来日したナンシー・マツモト記者は、ニューヨークを拠点に、日本酒をはじめとする和食や、日本文化に関する情報を積極的に発信している。日本人の祖父母を持つ日系3世で、祖先の文化への関心から日本について取材をするようになったと語る。11月に東京で開催された非営利団体・米日カウンシルの会議に合わせて再来日したマツモト記者に、いま米国で話題の日本文化について聞いた。

 

 

 

 

 

~ 抹茶に日本酒、近藤麻理恵さん 多様化する米国の日本ブーム ~

 

米国では今、日本に関するどんな話題が取り上げられていますか。

今の流行りの一つは、まず抹茶ですね。抹茶ラテや、抹茶を使ったチョコレートをよく見かけますし、一流のシェフたちも、デザートに抹茶を取り入れています。料理雑誌でも、抹茶を見ないことはないというくらい頻繁に目にします。必ずしも和食とは関係のない店やレストランでも登場しますね。その他では、お好み焼きも人気ですよ。

 

さらに無視できなくなったのが「うまみ」です。影響力は絶大で、今やシェフだけでなく普通の人の会話でも、食を語る上で欠かせない言葉になりました。ニューヨークでは “Umami Burger” というハンバーガー店もできました。醤油や乾燥きのこ、乾燥させた魚の頭などの様々なうまみを研究し、1つのバーガーに詰め込んだそうですよ!私はまだ食べていませんが、人気店です。発酵食品も話題で、納豆の会社を立ち上げた人もいます。アメリカ人がいかに深く日本食を求めているかが分かります。

 

― 抹茶や旨みがトレンドなのですね。食以外の分野ではいかがでしょうか?

片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんも有名になりましたね。彼女は全米で大規模なツアーを行い、全国紙から地方紙まであらゆるメディアに取り上げられました。彼女がアメリカ人に受けた理由は、片づけを、アメリカでもなじみのある禅や瞑想に通じるスピリチュアルなものとして表現したところではないかと思っています。

 

また、先日、ニューヨークでMUJI(無印良品)のヘッド・デザイナーである深澤直人氏の講演に参加しました。業界では伝説ともいえるデザイナーの講演ということで、大勢の聴衆が集まっていました。私は、深澤氏の話を聞くまでMUJIのよさがあまり分からなかったのですが、「反ブランド(anti-label)、低価格主義」を目指して始まり、どのように世界的な展望へと進化していったかを聞いて興味を惹かれました。深澤氏は、美しくて機能的なデザインを世界中に求め、そうした品物や生産者を世界に広める手伝いをしています。私は彼の話から、日本のメーカーが、自分たちが描く“ストーリー”を、欧米の消費者にも理解されるようにすることの重要性を感じました。

 

その他では、建築家の坂茂氏、安藤忠雄氏の記事をよく見かけます。

 

~ 酒蔵の“ストーリー”に魅了 ~

 

ナンシーさんは、日本文化のなかでも、日本酒の記事を多く執筆されています。日本酒の専門家を養成するコース(Certified Sake Professional)も修了されたそうですね。

日本酒との出会いは、ニューヨークの日本酒専門店について書いた記事でした。その記事がきっかけになり、日本酒がニューヨークでどのように受け入れられているかという別の記事を書きました。この取材がとても面白く、人脈もできました。それ以来、日本酒について知る機会がたくさんあり、2015年には日本酒造組合中央会やFPCJのプログラムで来日しました。ラスベガス在住の日本酒スペシャリストであるジョン・ゴントナー氏の講座も受けました。

 

日本ではこれまでに、東京農業大学(数岡孝幸准教授)の花酵母の研究や、広島県東広島市の「今田酒造」の女性杜氏・今田美穂さんなどを取材しました。今回の滞在中も、無農薬・無肥料の自然米を使って酒造りをしている福島県郡山市の「仁井田本家」や、埼玉県上尾市の「文楽」を取材しました。私自身は日本酒のエキスパートというわけではなくて、あくまで取材に必要なスキルとして勉強しています。酒蔵で取材するたびに、蔵元や杜氏さんから新しいことを学んでいます。

 

全国の日本酒の作り手には、何とか外国メディアに取り上げられたいと考えている人も多いと思います。取材する側として、何かアドバイスはありますか?

やはり、それぞれの酒蔵の特徴をどうPRするかが大切だと思います。たとえば、今回取材した仁井田本家は、江戸時代から18代にわたり酒造りをしているそうなのです。18代目の仁井田穏彦氏は、福島の田んぼでオーガニックなコメ作りを可能にしたいと考えています。東日本大震災からの復興という観点からも、よい記事になると思います。

 

こうした全国の酒蔵のプロフィールや、蔵元や杜氏の物語を、英語で紹介するようなアーカイブがあればと思います。たとえば、いまよくある情報は、個人名がなくて蔵の名前を覚えるのも難しいので、蔵の人たちの「顔」を掲載してもよいかもしれません。日本酒造組合は、広告費用を増やしてアメリカや海外での宣伝に力を入れようとしていますが、どうしても言葉の壁があり、英語での基本的な情報が欠けていたりして、外国人にはアクセスしづらいものになっています。山口県岩国市の旭酒造(「獺祭」ブランド)は、パリに事務所やお店を構えたりしていると報道されているので、海外への輸出が成功した例ですね。

 

― 食や健康を専門としたフリーランスの記者として雑誌を中心にご活躍ですが、どの媒体にどんな記事を書くかは、どのように決めるのでしょうか。

自分から記事のアイデアを出すことが多いです。雑誌の編集者は、広告主と読者の両方を満足させる必要があるので、あまりクリエイティブとは言い難いです。主流から外れずに、大衆にアピールする記事を好む傾向もあります。日本酒や日本食が人気といっても、ニッチなテーマであることには変わりないので、記事を売り込むのは非常に難しいです。先日、ある雑誌の創刊号に、千葉の牧場と提携する東京のシェフの記事を推したのですが、やはり米国の読者が東京のレストランに行くわけではないので、最終的にはニューヨークで作られている抹茶チョコレートという、よくある記事になりました。ジャーナリストにとって興味深い話が、必ずしも読者や編集者に支持されるとは限らないのです。

 

~ 日本文化を語る「コミュニケーション力」を鍛えてほしい~

 

「和食」は、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されました。この意義については、どのようにお考えでしょうか。

素晴らしいことです。和食は、無形文化遺産に値するものだと思います。日本のソフトパワーや、文化的価値を世界に広めるきっかけになります。ただ、日本はもっとコミュニケーション力を磨くべきだとも思います。

 

ニューヨークで国連大使主催のパーティーに出席した時、美味しいお寿司や日本酒がたくさん並んでいましたが、シェフの説明が、和食の魅力を伝えるには少し弱いなと感じました。「語り」の技術になるのか、あるいは優秀な通訳が必要ということかもしれませんが、アメリカ人にしっかりと伝わる話し方で、情熱を持って、和食について伝えることが大切です。難しい課題だと思いますが、コミュニケーション力不足のために、和食の魅力が十分伝わっていないことがあるように感じます。ひるがえって、先ほどのMUJIの深澤氏のプレゼンは、本当に効果的だったと思います。

 

― 次に来日の機会があれば、どんなことを取材したいですか。

たとえば、京都府京丹後市「木下酒造」のイギリス人杜氏、フィリップ・ハーパー氏に話を聞いてみたいですね。ほかにも、漆器づくりや鋳物製造のように、後継者不足で技術の伝承が難しくなっている職人の技にも興味があります。また、「熟成肉」にも関心があります。アメリカでは、これまでにない美味しさを追求した熟成肉や、肉牛の飼育方法は、まだそれほど広まっていません。飛行機でたまたま手に取った雑誌に、青山のフレンチ店「フロリレージュ」の川手寛康シェフが熟成肉を使用しているという記事が載っていて、もしかしたらよい記事になるかもしれない、という予感がしました。予感は外れることもあるんですが。とにかく、日本に関して取材したいことがまだまだたくさんあります!

 

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 Ms. Nancy Matsumoto

ニューヨークを拠点に活躍する、健康、食、文化、アート分野のフリーランス編集者・ライター。食の雑誌「エディブル・マンハッタン」、グルメ雑誌「サブール」などへ寄稿。父方の家族は佐賀県、母方の家族は千葉県出身の日系3世。6歳からの3年間と、大学卒業後の2年間、日本に在住。その後は20年近く来日の機会がなかったが、2013年以降取材での来日が続き、ジャーナリストとしての来日は今回で3回目。

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