外国記者に聞く

一覧に戻る

【ベトナム】ベトナム国営テレビ(VTV) ヴ・ドク・クォン東京支局長

投稿日 : 2014年02月21日

aIMG_9106

2013年4月に東京支局を開設したベトナム国営テレビ(VTV)。「多くの日本企業がベトナムに投資している。日本の経済や企業を正しく理解し、伝えたい」というヴ・ドク・クォン東京支局長(30)から、日本の印象や日本での取材について聞いた。

 

 

~ベトナムの人たちが知らない日本を伝える~

 

― VTVが東京に支局を開設した経緯を教えてください。

もともと海外のニュースは、ロイター通信、AP通信など欧米の通信社からの情報に頼っていたが、それでは海外の見方をそのまま伝えるだけ。数年前、ニュース局の強化とともに、海外の話題もベトナムの視点で発信していこうとの方針が打ち出され、東京支局開設につながった。同時期に、北京とシンガポールにも支局が開設され、海外支局は合計9カ所になった。

 

― 支局開設の苦労は。

日本の大学で7年間勉強した経験があり、東京支局開設が決まった時にはぜひ行きたいと手を挙げた。開設前には4か月ほどNHKで研修を受け、日本での番組の作り方や取材の流れを学んだ。その後、1か月という短期間で、銀行口座の開設から事務所選び、開局式まですべて1人でこなさなければならず、本当に大変だった。開局後、いざ自分たちの報道をと思ったが、最初の1か月ほどは何から始めればいいか分からず何もできなかった。どこにコンタクトをとり、どう取材するか、途方に暮れた。少しずつ慣れ、日本の記者にアドバイスをもらったり、NHKの映像提供を受けたりして、リポートできるようになってきた。大変だが辞めたいと思ったことはない。ネットワークを広げ、急なインタビューにも応じてもらえるような関係づくりも進め、もっと取材できるようにしたい。

 

― 最近印象に残った取材は。

昨年10月、イオングループ(千葉県千葉市)の節電の取組を取材した。同社は今年1月、ホーチミンにショッピングモールをオープンしている。ベトナムでは夏に停電が発生するなどエネルギー問題が深刻だが、日本ではどう電力不足に対応しているのか知るために同社を訪れた。本社では、夕方5時と6時にそれぞれ消灯され、残業する人は自分のデスクにだけ電気をつける規則になっていた。驚きとともに、日本の労働者は仕事や会社への責任感が強いと感じた。2分半のニュースにまとめたが、好評で10回ほど再放送された。

 

― 日本のニュースの中で視聴者の関心が高いのは、どのような分野でしょうか。

1つは日本経済。ベトナムに投資している日本企業との関係を深められるよう、日本企業の姿を正しく伝えたい。また、ベトナムにとって大切な地域だが不安定な要素を抱える東アジアの情勢については、北京と東京両方で取材し、地域の状況を理解するよう努めている。さらに、日本の文化にも関心がある。東日本大震災の時には破壊された町で秩序が維持されていることに感銘を受けた。教育や社会の面白い点を伝えたい。

 

― 記者としての充実感を味わうのはどんな時ですか。

私の仕事は、視聴者のみなさんがまだ知らないことを伝えること。新しいこと、面白いことを伝えられれば、役に立てる。大きな事件が発生すると個人的な時間は犠牲にしなければならず辛い時もあるが、良いリポートができた時には幸せを感じる。

 

~信頼関係を築きネットワークを拡げていきたい~

 

― 日本での生活はどうですか。

ベトナムでは、日本人は規則を守る人々というイメージがある。実際に暮らし、やはりそうだと思う。仕事を大事にしており、やりすぎるほど。日本人は一見冷たいようにも見えるが、一度信頼関係が築ければ、熱心にサポートしてくれる。日本の好きな点は住みやすいところ。都市から農村部まで、交通機関が発達しており便利。人々は優しく、サービスもよい。困っているのは物価の高さ。また、2才と1才の子どもがおり保育所に入れたいが、空きがない。政府はもっと環境を整えるべきでは。

 

― FPCJに求めることは。

特派員としてこれから日本に来る記者には、まずFPCJを通じて記者証を取得することを勧めたい。プレス・ブリーフィングの開催案内など、取材に役立つ情報も得られる。プレスツアー「世界無形文化遺産を目指す“海女”」に参加したが、取材の機会に加えて他国の記者とも情報交換できた。こうした関係づくりの

機会は記者にとってとても大切だ。

 

aIMG_9174

ヴ・ドク・クォン東京支局長

1983年3月生まれ。ベトナム・タインホア省出身。2001年6月に来日し、拓殖大学の留学生別科を経て、同大国際学部、同大大学院国際協力学研究科を卒業。不動産業で働いた後、2008年7月、ベトナムテレビに入社。ニュース局国際ニュース部に配属される。2013年4月より現職。

(写真)日本の住居をイメージして設計された東京支局内のスタジオ

 

 

 


ベトナム国営テレビ(VTV

logo_vtv_new

1970年設立の国営テレビ局。7つのチャンネルがあり、総合、教育、娯楽・文化、在外ベトナム人向け、少数民族向け、若者向け、ベトナム南部向けの放送を行っている。総合チャンネルの夜7時のニュースが最も視聴率が高い。同チャンネルの毎週火曜日夜10時15分からの15分間は、東京支局など海外支局が制作したリポートが放送される。現在の海外支局は、米国(ニューヨーク、ワシントン)、ロシア、ベルギー、ラオス、カンボジア、中国、日本、シンガポールの9カ所。東京支局には支局長以下3名が駐在している。

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信