プレスツアー(案内)

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実施日 : 2011年11月30日 - 12月01日

案内:食の復興プレスツアー(2011年11月30日-12月1日)

投稿日 : 2013年08月22日

~食産業復興に挑む生産者たち:仙台、東松島、雄勝~

 

東日本大震災から8ヵ月が経過し、壊滅的な被害を受けた東北地方では、津波で破壊された農水産業や食品加工産業の復興、そして食の安全性の確保が大きな課題となっている。
地震に伴う大津波は青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県の太平洋岸の農地2万4,000ヘクタール(水田2万ヘクタール、畑3,500ヘクタール)を流失、冠水させるという甚大な被害をもたらした。被害総額は7,300億円と推定されている。特に被害が大きかったのが宮城県で、被害を受けた農地は全耕地面積の11%にあたる1万5,000ヘクタールに上った。冠水した農地を利用可能な状態にするには、がれきや土砂の撤去、海水による塩分の除去などが必要だが、今年中に除塩作業を終えて来年から農作物の作付けができる見込みの農地は5,250ヘクタール、すべての農地が回復するには最低3年を要するといわれている。
 一方、水産業における被害は、漁船や漁港施設、養殖施設、市場・加工施設など6,500億円に上る。世界三大漁場の一つとされる三陸沖の漁場を抱える日本有数の水産県である岩手県、宮城県の被害は大きく、漁船被害の9割、漁港施設被害の7割、養殖施設被害の6割が両県に集中している。
 また、原発事故による農産物や土壌の汚染による一部産品の出荷制限、さらに風評被害による制限品目以外の農産物の取引数量の減少や価格の低下といった事態が食産業復興の足かせとなっている。
 そうした中、震災の発生した3月11日(0311)を逆転させた11月30日(1130)に、日本の食の担うリーダーたちが集い、東北地方の食産業の復興や成長に向けた改革などを議論するリーダーズカンファレンス「食の産業サミット2011」が仙台市で開かれる。ツアーでは、同会議に参加するとともに、被災地・宮城県において早期営農再開に挑む農業関係者や、地域の再生と新たな漁業の形を模索する漁業関係者らへの取材を通して、食の復興の可能性を探る。

 

<ツアー取材先>

 

食の産業サミット2011(仙台市)
 東日本の食の復興と創造を長期的に促進し、日本の食文化を世界に誇るブランドとして確立することを目的に、食品関連企業などが中心となって設立された一般社団法人東の食の会が主催するフォーラム。食産業に関わる企業のトップのほか、IAEA元顧問のジェームズ・スミス教授ら放射能分野の専門家も参加し、食産業復興のための政策提言や輸出促進の方策、簡易放射能検査プロトコルと食品安全などに関して議論が行われる予定。ツアーではこの会議に参加し、食産業復興への方策や課題、安全性確保の手段などを巡る議論を聞く。

食の産業サミット詳細はこちら(PDF)

 

*食の産業サミットの午後の部については、以下のオプショナル・ツアーへの参加も可能です。

 

(オプショナル・ツアー)
「仙台白菜」を宮城農業復興の象徴に(東松島市)

 

 約100年前に中国から伝わり、仙台周辺で一大産地を築いた伝統野菜の「仙台(松島)白菜」。戦前は宮城県が、白菜の生産で全国一の出荷量を誇っていた。しかし、栽培が難しく柔らかく傷つきやすいことから、市場からは姿を消していた。津波の被害を受けた仙台周辺の沿岸部では、比較的塩害にも強い野菜である「仙台白菜」を復興のシンボルにしようと、JA全農みやぎが中心となって8月から苗の植え付けが始まり、11月から収穫が予定されている。東松島市内で専業農家を営む菅原満雄さんは、津波で800坪(約2,600平米)のミニトマトのビニールハウスを失った。現在はアルバイトで生活費を稼ぎながら、ハウスの再建を検討する一方で、津波で塩をかぶった15アール(1500平米)の畑に仙台白菜を試験的に栽培している。生育は比較的順調で11月末頃から収穫が期待されている。
 ツアーでは菅原さんから被災からの復興への思いについて話を聞くとともに、JA関係者の説明を受けながら、仙台白菜の栽培の様子を取材する。

 

 

塩害とは無縁の大規模水耕栽培による復興トマト(仙台市)

 津波で浸水の被害にあった仙台市若林区下飯田地区の1.6ヘクタール(16万平米)の水田に巨大なビニールハウス群が姿を現した。大手外食チェーンの(株)サイゼリヤと関連会社の農業生産法人(有)白河高原農場が建設したトマトの大規模水耕栽培施設で、3年後にはここを基幹トマト農場とする意向だ。土を使わず井戸水を使った溶液栽培のため、塩害とは無縁。ビニールハウスの部材を韓国から輸入したり、効率的な生産システムの導入などで、低コストで生産性の高い、世界と戦える農業を目指すという。また、津波で職を失った20代から40代前半の地元の若手農業関係者10名を2年間、研修生として採用。ビニールハウス作りから生産、経営にいたるノウハウを学んでもらい、将来の独立を支援したい意向だ。今年12月には最初のハウスで苗の植え付けが始まる見込みで、来年春先の初収穫を目指して急ピッチで準備が進んでいる。
 ツアーでは(株)サイゼリヤ、(有)白河高原農場関係者からプロジェクトの概要について説明を受け、研修生として採用された地元関係者から営農再開にかける思いを聞くとともに、ハウスでの準備状況を取材する。

 

 

2日目

日本農業の再生に挑む株式会社舞台ファーム(仙台市)

 

 モットーは「赤ちゃんが食べても安心で安全なお米と野菜を農場から食卓まで」。針生信夫社長は、仙台市若林区で300年以上にわたって続く農家の15代目。社名の「舞台」は屋号で、収穫を祝う神楽奉納の舞台が屋敷内にあったことがその由来だという。農産物の生産から、加工、物流、販売までを一貫して行いたいとの強い思いで2003年、若手の専業農家の仲間とともに有限会社舞台ファームを設立(2004年に株式会社化)。現在従業員はパートを含めて130名を超える。米、野菜のほか、牛肉、生花などのネット販売や大手コンビニへの提供、飲食店の展開など、農業の六次産業化を積極的に推進、ビジネスとして成り立つ攻めの農業を展開している。
 3月の震災では、農地40ヘクタールのうち約60%が津波で水没した。農地の復興に取り組む一方で、原発事故により食への信頼が揺らぐ中、今年の11月には放射能検査体制を整えた。また、新たな試みとして、自然エネルギーを利用した野菜工場を作る構想も持っている。グループとしての大規模農業、そしてそのコアとなる農業技術を追求し、震災を機に被災地から世界をリードする新しい農業モデルの構築を目指している。
 ツアーでは、針生社長からその経営戦略と震災からの復興、そして日本の農業の将来について話を聞くとともに、農場や加工施設及び放射能検査の様子を視察する。

 

 

三陸・雄勝町で新しい漁業の形を模索する合同会社オーガッツ(OH! GUTS!)(石巻市)

 

 リアス式海岸の絶景と世界屈指の養殖地として知られる石巻市雄勝町は、津波で壊滅的な被害を受け、4300人いた住民も現在は1000人にも満たない。「本当の復興とは、震災前の状況に戻すことではなく、町としても生産拠点としても未来に開かれた地域を築き上げること」。そんな思いを共有する地元の養殖漁業関係者や被災地支援ボランティアらが、今までになかった漁業の仕組みを作ろうと今年8月に設立したのが「オーガッツ」だ。メンバーは現在12人で、まずは、養殖施設の再建のため、1口1万円のオーナー制度を立ち上げた。「そだての住人」と呼ばれるこの制度は、ただ海産物を買うだけでなく、育てることにも参加してもらうというもので、募集から2ヵ月で1500口以上の申し込みがあり、9月に行われた牡蠣の稚貝を海に投入するイベントには、200人ほどのオーナーが全国各地から集まった。目標は5万口(5億円)で、3~5年後には漁具や加工施設なども整備し牡蠣やホタテ、ホヤ、銀鮭などの養殖を本格化させたい意向だ。
 代表の伊藤浩光さんは、長年雄勝町で、ホヤや牡蠣、ホタテなどの養殖業を営んでいたが、以前から価格の低迷などもあり、「育てたものを仲買に渡すだけ」の漁業のあり方に疑問を持っていた。生産から加工、販売までの一連のプロセスを自分たちで担うことで漁業の6次産業化を進めるとともに、町の未来のため後継者の育成にも積極的に取り組むなど、漁業の新たなモデルケースを作りたいという。また、流通システムも大きな打撃を受けた今が、その好機ととらえている。
 また、雄勝町は国内シェアの9割を占める日本一の硯の産地として知られるが、硯産業も壊滅的な被害を受けた。硯産業の復興に向けた動きも始まりつつあるが、町の復興協議会の副会長も務める伊藤さんは「漁業と硯を観光の中心にして雄勝の交流人口の拡大を目指したい」と、この小さなコミュニティの復興に向けたビジョンも思い描いている。
 ツアーでは、石巻市雄勝町を訪問、合同会社オーガッツの活動に焦点を当て、大震災という逆境を好機に変えて、日本の漁業のあり方を変えようとする動きを探る。

 

*本ツアーは、一般社団法人東の食の会の主催、フォーリン・プレスセンターの企画・運営協力により実施するものです。参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

<実施要領>

 

1.日程案

 

1日目(11月30日(水)):
07:32 東京駅発(はやて15号)
09:13 仙台駅着
10:00-16:30 食の産業サミット2011
(オプショナル・ツアー)
 13:15-14:15 「仙台白菜」生産現場
 15:30-16:30 復興トマト栽培施設
17:30-19:00 懇親会

 

2日目(12月1日(木)):
08:30 ホテル発
09:00-10:45 舞台ファーム
12:45-13:15 雄勝町内視察
14:00-16:00 オーガッツ
19:49 仙台駅発(はやぶさ6号)
21:24 東京駅着

 

 

2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者

 

3.参加費用:1人13,000円(全行程交通費、宿泊費、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。

 

4.募集人数:先着順10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

 

5.FPCJ担当:山口、矢野(TEL: 03-3501-5070)

 

6.備考:
(1)写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
(2)FPCJ及び一般社団法人東の食の会はツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

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