プレスツアー(案内)

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実施日 : 2012年06月28日

案内:プレスツアー「人生90年、超高齢社会のモデル“Aging in Place”を目指して」(2012年6月28日)

投稿日 : 2013年08月22日

急速に進む日本の少子高齢化社会に対応した社会保障と税の一体改革を巡る議論が大詰めを迎えている。日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は2010年の23.1%から、2055年には40.5%に増加し、2.5人に1人が65歳以上の超高齢社会を迎える。今や人生90年時代ともいわれ、退職後数十年の第二の人生をどのように生き生きと過ごすか、またそのために地域コミュニティはどのような環境を整備すべきかが課題となっている。特に、地域との繋がりが希薄な都市部では、孤独死なども深刻な問題となっており、高齢者がひとりでも安心してまた生きがいをもって暮らせるコミュニティづくり“Aging in Place”が、これからのまちづくりの重要な要素になってきている。

 

これまで世界のどの国も経験したことのない超高齢社会が近づく中、世界に先駆けたモデル創出に向けた取り組みが千葉県柏市で始まっている。都心から電車で30~40分、人口40万人の典型的な東京のベッドタウンだが、今後団塊世代の大量退職により、2015年までは毎年約4000人の高齢者が地域に戻ってくるとされている。市内にある豊四季台団地は、東京オリンピックが開催された1964年に入居が始まった約4,700戸の大規模団地で、日本の高度成長期を支えてきたが、現在では高齢化率が既に40%に達しており(2010年10月現在)、同団地が抱える課題への対応は、数十年後の日本で起こりうる課題への対策のモデルとなり得る。そこで、老朽化した団地の建て替え事業に合わせて、東京大学高齢社会総合研究機構は、柏市やUR都市機構と共に高齢社会に備えた「長寿社会のまちづくり」として(1)「地域包括ケアシステムの具現化」、(2)「高齢者の生きがい就労の創成」という2点において、実証プロジェクトを実施している。

 

ツアーでは、特に地域社会に活躍の場を求める高齢者の就労に焦点を当て、日本再生のカギともなる新たな長寿社会のまちづくりに挑む産学官の試みを取材する。

 

取材内容
1.「長寿社会のまちづくり」ブリーフィング
秋山弘子・東京大学高齢社会総合研究機構特任教授

リタイアした高齢者が、再び働き手となって自分が生活する地域社会を支える。こうしたセカンドライフ就労を通して、高齢者が地域社会で健康で生き生きと暮らす長寿社会のモデル“Aging in Place”を目指したまちづくりプロジェクトが、千葉県柏市の豊四季台地域で進められている。「農」「食」「保育」「生活支援」「福祉」などの5つの分野で高齢者が無理なく働くことができる環境づくりもスタートした。「世界の最長寿国と言われる日本では、人生90年といわれる時代となり、今までサラリーマンとして働いてきた人が、定年退職後の生きがいとして地域社会に貢献する人生二毛作が可能になった」。こう語る東京大学の秋山弘子特任教授は、柏市で実験的に行っている就労の仕組みをマニュアル化し、他地域への普及をめざしている。

 

ツアーの冒頭では、プロジェクトを推進する秋山特任教授よりプロジェクトの全体像について説明を受けるほか、高齢者の就労事業が高齢社会の課題解決にどのようにつながっていくのかなどについて話を伺う。

 

*ブリーフィングは9:30-10:50の間当センター会見室で行います。

 

2. 高齢者のセカンドライフ就労の現場
(1)こひつじ園
 
img4fd9afd36f7d7豊四季台団地の一角に昨年10月開園した特別養護老人ホームこひつじ園では、退職後の高齢者が無理なく働ける仕組み「ワークシェアリング」が実現している。一つの仕事に対し、地域の高齢者5名程度が交代で勤務しているため、海外旅行や孫の世話など、高齢者が大切にしているライフスタイルを活かしながら就労できる。園内の掃除や洗濯、食事の配膳、花壇や菜園の手入れ、併設されたカフェ「ティーサロン小羊」での配膳業務などに現在、約30名が従事している。高齢者がこれらの補助的な業務をこなすことで、同園に80名いる正規職員の負担軽減となり、特別養護老人ホームとして介護サービスの質の向上につながっているという。また同園では、ワークシェアリングにより煩雑になりがちな勤務表の作成や、急な勤務予定の変更をiPadなどの情報端末を導入し効率的に行う取り組みも始まっている。高齢者による情報端末の利用は、職場での情報共有にとどまらずプライベートな情報交換や交流を促進するツールとしても活用が拡がることが期待されている。

 

ツアーでは、こひつじ園関係者及び同園で働く高齢者から話を伺うと共に、菜園での作業の様子などを取材する。

 

(2)くるみ幼稚園

 

img4fd971735d77a働き手が不足している育児の現場も、「高齢者の生きがい就労」が活かされる場所の一つだ。 豊四季台団地内にある「くるみ幼稚園」では、柏市の委託事業として昨年の9月から、近隣に暮らす60歳以上の高齢者を対象に、早朝や夕方の保育補助、絵本の読み聞かせなどの仕事を行う「まちの先生」を募集した。集まったのは、60歳から84歳の18名で、そのうち既に4名がくるみ幼稚園で働いている。これにより、正規の保育職員の負担を軽減し、保育士不足といった地域が抱える問題の解消につながると期待されている。それまで疎遠だった地域社会との関わりが深まることで、高齢者の孤独やひきこもりを防ぐ効果もあると見られている。

 

ツアーでは、「まちの先生」として働く地域の高齢者が、園児たちに読み聞かせを行う様子を取材すると共に、学校法人くるみ学園の溜川良次理事長から高齢者雇用の背景と現状について伺う。

 

3. 高齢者就労による健康効果の検証-東京大学高齢社会総合研究機構(柏キャンパス)
img4fd9720940530東京大学高齢社会総合研究機構(柏キャンパス)では、昨年11月より柏市在住で60歳以上の高齢者向けに「就労セミナー」を開催しており、既に約200名の高齢者が参加している。同セミナーは4回シリーズで開講され、「ワークシェアリング」の考え方や雇用予定事業者からの説明などを通じて、高齢者の就労を実現している。また、同機構は、セミナー参加者を対象に、就労することによる身体・認知機能への効果について医学的に検証するための調査・研究も行っている。就労開始前、6ヵ月後、12カ月後に検査を行い、自分が生活する地域で就労することが、高齢者の孤立を防止するだけでなく、健康増進にどの程度効果があるかを測定・検証している。

 

ツアーでは、東京大学柏キャンパスの研究施設を訪れ、就労による身体・認知機能への効果について、収集されたデータを基に医師より説明を受ける。

 

*本ツアーは、当センターと東京大学との共催で実施するものです。参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

<実施要領>
1. 日程案
09:15 フォーリン・プレスセンター集合
09:30- 10:50 東京大学・秋山弘子特任教授ブリーフィング(@フォーリン・プレスセンター会見室)
(貸し切りバスで移動)
12:00 – 14:20  柏こひつじ園 (昼食含む)
14:45 – 15:50  くるみ幼稚園
16:30- 17:20 東京大学柏キャンパス
18:30 日本プレスセンタービル着(柏の葉キャンパス駅経由)
2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用:1人2,000円(交通費、昼食を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4.募集人数:先着順10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPC担当:山口、矢野(TEL: 03-3501-5070)
6.備考:
(1)写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
(2)FPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

 

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