プレスツアー(案内)

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実施日 : 2012年08月03日

案内:プレスツアー「農業新時代―若い力が創る持続可能な強い農業」(2012年8月3日)

投稿日 : 2013年08月23日

農学系の大学に進学を希望する学生が増えている。東京農業大学は2009年以降志願者が毎年7~10%増加、2011年には延べ31,000人を超え、過去最多となった。農学部を持つ数少ない私立大学の一つである明治大学の農学部も志願者が年々増加し、12年は08年比で30%増となった。東日本大震災に伴う原発事故やTPP参加を巡る議論などを背景にした「食の安全性」や「強い農業」への関心の高まりも一因と見られている。また、農業高校を舞台にしたマンガが大ヒットしたり、婚活などの交流イベントでは農業に従事する就農男性が人気を集めるなど「農業男子」への注目度も高まっている。

 

一方で日本農業の将来を担う若手の新規就農者数は年間1万人程度と低迷しており、農業系の大学を出ても農業の現場を目指す若者はごくわずかだ。こうして農家の高齢化が進む中、農林水産省では持続可能な強い農業の実現のため、青年新規就農者を現在の2倍の毎年2万人定着させるとの目標を設定、今年度の予算で約136億円を確保した。この事業では、45歳未満の新規就農者に対し、研修期間も含めて最長7年間で合計1,050万円(年150万円)を支給する計画だ。

 

そうした中、明治大学は今年4月、都心からも近い川崎市北部の丘陵地に黒川農場を新設した。農学部の1年生が農業実習を行う農場では、温室内にカメラと温度センサーを設置し作物の状況をスマートフォンからチェックするシステムの開発など、先端技術を駆使した生産効率の高い農業の研究に取り組んでいる。また地元川崎市の補助事業として、農園の遠隔管理システムに関する市内の中小企業との産学共同プロジェクトも動き出した。

 

また農場のある黒川地区には、川崎市内唯一のJA直営の大型農産物直売所「セレサモス」があり、開店前から行列のできる直売所として連日多くの客で賑わっている。市場に出すより直売所で直接消費者にアピールしようという農家のチャレンジ精神を引き出すなど、黒川農場とともに川崎市の農業振興の2大拠点として、都市農業の未来を担う。セレサモスでハーブなどを販売する小泉農園は、市内宮前区で江戸時代から農業を営む専業農家だ。親子3代で野菜や果物などを生産する同農園では、時代に合わせた六次産業化や新たな販路の開拓、イベントを通じた消費者の拡大にも積極的に取り組むなど、都市農業の新たな形を模索している。

 

ツアーでは、明治大学黒川農場、セレサモス、小泉農園の各施設を訪問、持続可能な強い農業を目指した様々な取り組みを取材するとともに、都市農業の課題と可能性を探る。

 

取材内容

 

1. ブリーフィング「日本農業の再生に向けて―都市農業の現状と今後の展望」
 竹本田持・明治大学農学部教授

 

農家の減少や高齢化、耕作放棄地、輸入農産物の増加やTPP参加を巡る議論など、多くの難問を抱える日本の農業。他方で企業による農業分野への参入の動きや農業の6次産業化、革新的な栽培技術の開発、高品質な農産物の輸出など様々なレベルで農業の将来を見据えた取り組みも進んでいる。数多くのチャレンジに日本農業はどのように立ち向かっていくのか、農業を持続可能なものにしていくためにはどのような改革が必要なのか。ツアーの冒頭に、竹本田持・明治大学農学部教授から日本農業再生へのヒント、特に都市農業の現状と今後の展望について、川崎市の農業政策を切り口に話を伺う。竹本教授は、アグリビジネスの専門家で、「川崎市『農』の新生プラン推進会議」の会長も務める。

 

 

*同ブリーフィングは、フォーリン・プレスセンター会見室で行われます。ブリーフィングのみのご参加も可能です。

 

2. 明治大学黒川農場
~未来型アグリエコファーム~

 

川崎市の西北端に位置する麻生区黒川。新宿からわずか30分とは思えない田園風景が広がる丘陵地に今年4月、明治大学黒川農場が開設された。約13ヘクタールの広大な敷地には、里山や林に囲まれ、先端的な農業研究・実習施設が並ぶ。年間15連作が可能な生産効率の高いほうれんそうの野菜工場や、土壌の代わりにサンゴ砂礫を利用した高品質かつ多収穫のミニトマトの水耕栽培施設など、最先端の研究が進められている。また、年間を通じて述べ600人程度の学生が種まきから収穫まで農業の現場を学ぶ。一般市民向けの農業学習講座も開かれるが、募集後すぐに定員が埋まる盛況ぶりだ。また農場では、バイオマスを活用したペレットボイラーや太陽光発電、風力発電なども導入、未来型アグリエコファームを目指している。
ツアーでは、黒川農場を訪問し関係者から農場開設の狙いや日本の農業の未来に果たす役割などについて説明を受けるほか、先端農業研究及び学生による農場実習の様子を取材、さらに学生とも懇談する。

 

3. セレサモス
~農家のチャレンジ精神を引き出す直売所~

 

2008年4月にオープンしたJAセレサ川崎直営の大型農産物直売所。食の安全や地産地消への関心の高まりを背景に、開店前から行列ができる直売所として毎日1000組以上の客で賑わう。売り上げも毎年伸びており、今年度は6億3000万円が目標。川崎市内の100軒を超える登録農家から、毎朝新鮮な作物が持ち込まれる。農家は、自分で売値を決め値札を付けて棚に並べる。売れ残った作物はその日のうちに回収する。消費者の反応がすぐに分かるため、他より売れるものを、また新しい作物をと、生産者の意欲が掻き立てられる。不動産業などを営む兼業農家が多い都市農業だが、自分の考え一つで経営が成り立つような環境が生まれ生産者も元気になってきているという。
ツアーではセレサモスを訪問し、川崎市関係者から川崎の都市農業の状況について、またJA関係者からセレサモスが都市農業に与えた影響などについて話を聞く。

 

4. 小泉農園
~都市農業の新たな可能性に挑む~

 

川崎市宮前区の丘陵地に広がる住宅地。団地や学校、戸建て住宅に囲まれた約1ヘクタールの農地で、現在親子3代で農業を営むのが小泉農園だ。18代目の後継者に当たるという小泉博司さん(34)は、東京農業大学を卒業後、民間企業での営業の仕事を経て、10年ほど前に実家に戻り農業を継ぐ決意をした。露地野菜を扱う祖父や父とは違い自分なりの作物をと、ハウスでのイチゴ栽培に挑戦、試行錯誤を繰り返し、今では「小泉農園のわがままいちご」として人気商品に育っている。また、「作るだけ」の農業から「売る」農業へと、ホームページで積極的に情報発信しているほか、販路の拡大や加工品の製造販売といった六次産業化、地元のフレンチ・レストランとの共同イベントの開催などにも積極的に取り組み、毎年着実に売り上げを伸ばしている。TPPについても、輸入作物に比べて、農作物の新鮮さなど、価格が高い理由を逆にアピールできる好機と捉える。
ツアーでは、小泉農園を訪問し、少量多品種の都市農業の生き残り戦略を取材する。

 

*本ツアーは、当センターと川崎市及び明治大学との共催で実施するものです。参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

 

<実施要領>
1. 日程案 8月3日(金)
08:15 フォーリン・プレスセンター(FPCJ)集合
08:30-9:30 ブリーフィング(@FPCJ)
10:30-14:00 明治大学黒川農場
14:10-15:10 セレサモス
16:00-17:00 小泉農園
17:30 宮前平駅
18:15 日本プレスセンタービル着

 

2.参加資格:外務省発行外国記者登録証保持者
3.参加費用:1人2,000円(交通費、昼食を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。
4.募集人数:先着順10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。
5. FPC担当:山口(TEL: 03-3501-5070)
6.備考:
(1)写真・TV撮影は一部制限があります。担当者の指示に従ってください。
(2)FPCJ、川崎市、明治大学はツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。

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