プレスツアー(案内)

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実施日 : 2015年10月28日

案内:天然資源産出県・千葉プレスツアー

投稿日 : 2015年10月09日

―日本最大の水溶性ガス田:ヨウ素と天然ガスを有効活用する産業と暮らし―

 

日本は「資源小国」と言われるが、医療、工業、農業など幅広い分野で利用されているヨウ素に関しては、チリに次いで世界第2位の産出国で、世界の生産量の約30%を占める。日本で生産されるヨウ素の約75%は千葉県産で、千葉県を中心とする関東一帯の地下に広がる「南関東ガス田」と呼ばれる日本最大の水溶性ガス田の地下水から生産されている。この地下水には、ヨウ素だけでなく、天然ガスも溶け込んでおり、千葉県は、天然ガスの分野でも国内第3位の生産量を誇る。地下水から取り出された天然ガスは、一般家庭、学校、病院、工場などに送られ、家庭用に換算すると約120万世帯(1世帯当たりの標準的消費量400㎥/年で換算)で利用されており、これは県内の都市ガス供給量の約13%に相当する。まさに水溶性天然ガスの「千産千消」が実現している。

 

本ツアーでは、千葉県産の天然資源とそれを活用した千葉県ならではの産業と人々の暮らしを取材する。

 

※本プレスツアーは、千葉県が主催し、フォーリン・プレスセンターが企画協力しています。
※本プレスツアーでは、参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

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【取材内容】
1.ヨウ素と天然ガス生産の現状
株式会社合同資源

 

広い分野で活用されるヨウ素
I2千葉県が日本の生産量の75%を担っているヨウ素には様々な用途がある。レントゲン造影剤、殺菌剤のほか、うがい薬、家畜の飼料にも含まれる。最近では、液晶パネルに欠かせない偏光フィルムという光の通し方をコントロールするパーツにも使用されるなど用途が拡大し、需要が高まっている。また、ヨウ素は、人体に必須のミネラルであり、海藻などから摂取が可能で、子供の成長や大人の新陳代謝を促す作用を持つ。しかし、内陸や海産物の摂取が少ない地域では、ヨウ素欠乏症に苦しむ人々もいる。こうした問題を抱えるモンゴル、カンボジア、スリランカに対し、千葉県は、日本ヨウ素工業会やユニセフ等と連携してヨウ素を寄贈。ヨウ素を通じた国際協力を行っている。

 

持続可能な開発のための取り組み
井戸約300万年~70万年前に深海で堆積した地層には、堆積当時の海水(かん水)が存在し、天然ガスやヨウ素を高濃度に含んでいる。千葉県では、この「かん水」を地下からくみ上げ、利用している。天然ガスの工業生産は、1931年に関東天然瓦斯開発株式会社の前身である大多喜天然瓦斯株式会社が最初に行った。その後、千葉県の天然ガス生産量が伸び、1971年にはかん水のくみ上げ量がピークに達した。それに伴い地盤沈下が深刻化した地域も出た。そこで、千葉県は各天然ガス開発会社と協定を結び、かん水のくみ上げ量やくみ上げるための井戸の設置箇所を規制した。また、現在、各天然ガス開発会社はかん水を利用後に地下に戻している。可採埋蔵量は約3,685億㎥と言われ、現在の年間生産量(約4.5億㎥)で換算すると約800年分に相当する天然ガスが含まれているという南関東ガス田における持続可能な開発を進めるための取り組みだ。

 

ヨウ素をリサイクルして生産量増につなげる
これからリサイクルされる回収した使用済みヨウ素株式会社合同資源は1934年の創業以来、ヨウ素と天然ガスの生産を行っている。同社は日本で最初に地下水からヨウ素を工業生産するのに成功し、年間で約2,300トン、世界のヨウ素総需要の約7%を供給している。生産されたヨウ素の約40%は、主にヨーロッパやアメリカ、アジア等の海外へ輸出され、レントゲン造影剤等の製造に使われている。特に、健康志向の高まりを見せるアジアの需要が伸びているという。同社は、1960年代にはヨウ素のリサイクルに取り組み始めた。ヨウ素を使った製品の製造過程で出る廃液を国内外の販売先から回収し、新たなヨウ素を造り出している。地盤沈下などを防ぐためにかん水のくみ上げ量が規制されている中、需要が高まっているヨウ素の生産量を増やすために、リサイクルは有効な方法だ。同社では、生産されるヨウ素の約3-4割はリサイクルで製造されている。

 

㈱合同資源より、ヨウ素と天然ガスの生産状況や今後の展望、ヨウ素の用途やそのリサイクル等について説明を受けた後、ヨウ素製造施設を視察する

 

ガスホルダー

BO

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. ヨウ素を活用した製品の開発: ヨウ素入り抗菌・抗ウイルスマスク
関東天然瓦斯開発株式会社

 

Iodine Mask

快適オフィスAMYCEL(アミセル)マスク」は、関東天然瓦斯開発㈱、江崎グリコ㈱、オーミケンシ㈱の3社が共同で商品化した。元々オーミケンシと江崎グリコが開発していた「アミセル」という繊維に、高い抗菌力がある関東天然瓦斯開発のヨウ素を組み合わせ、「アミセル不織布」を開発し、マスクとして製品化させた。同マスクは、オフィスの一角で菓子を販売する置き菓子サービス「オフィスグリコ」の商品として企業の従業員向けに販売されており、インフルエンザや風邪予防対策として好評だ。高い抗菌作用を活かし、「アミセル不織布」そのものの活用拡大も期待されている。

 

関東天然瓦斯開発㈱から「アミセル不織布」と同マスクの開発の過程や効能を聞く。

 

 

 

3. 天然ガス井戸を暮らしに活かす
・NPO法人いすみライフスタイル研究所 君塚正芳(きみづかまさよし)氏
・「ブラウンズフィールド」(中島デコ氏)

 

天然ガス井戸の活用とNPO法人いすみライフスタイル研究所
川底から湧く「上(うわ)ガス」
千葉県の九十九里地域では、地表に天然ガスが噴出する現象(上(うわ)ガス)が観察される。千葉県の南東部に位置するいすみ市内では、この上ガスを暮らしに活かす人々がいる。地下から湧出する天然ガスをドラム缶などに集め、重石などを乗せ、家庭用ガス器具で使えるよう圧力をかける。こうした「天然ガス井戸」から自宅まではホースなどを通して運び、ガスコンロ、給湯器、暖房機器等につないでそのまま使用する。南関東ガス田から採取される天然ガスの成分が、メタンが99%で不純物が少ないからこそなせる業だ。経済産業省関東経済産業局によれば、商用目的でない場合、自宅に天然ガスをひいて使用するのは法的な問題はないとのこと。自ら所有する土地から湧出する天然ガスを利用するため、料金も無料だ。このような設備を自宅にもつ世帯は、いすみ市内で推定100軒位あるという。また、天然ガス井戸の歴史は古く、1891年に遡るとされる。

このような天然ガス井戸を活用した生活様式を見学するツアーを過去に企画したのが、移住・定住促進のための情報発信を中心に活動しているNPO法人いすみライフスタイル研究所。東日本大震災以後、エネルギーに対する関心の高まりを受け、同法人顧問で、ガス設備関係の会社を経営している君塚正芳氏の経験を活かした企画だった。

 

「ブラウンズフィールド」
いすみ市の豊かな自然の中で、自ら育てた米や野菜等を提供するカフェや宿泊施設を営む「ブラウンズフィールド」の中島デコ氏も、君塚氏のアドバイスを受け、敷地内の天然ガス井戸から天然ガスを自宅に引いて、ガスコンロとストーブに利用している。天然ガス井戸はボコボコと大きな音をたてており、天然ガスが勢いよく湧いているのがよくわかる。

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NPO法人いすみライフスタイル研究所の君塚氏の案内で、ブラウンズフィールドに設置された天然ガス井戸を見学し、天然ガスを自宅に引く設備とその仕組みについて説明を受ける。

 

 

 

4. ハイカーに好評の天然ガスで温めるヨウ素入り黒湯
「足湯やすらぎ」四倉沖太郎(しくら おきたろう)氏

 

南関東ガス田の恵みを最大限に活用しているのが大多喜町養老渓谷の温泉街にある「足湯やすらぎ」。店主の四倉沖太郎氏(80歳)は大正元年(1912年)頃、その地に伝わる井戸掘り技術「上総掘り」により掘られたと自身が伝え聞く天然ガス井戸を受け継ぎ、都市ガスに頼らない生活をしてきた。暖房、風呂、調理などのエネルギー源はすべて天然ガスでまかなっている。
四倉氏が「足湯やすらぎ」を始めたのは約7年前。もともと自宅の風呂では、天然ガス井戸から湧く、ヨウ素が含まれた茶褐色の「黒湯」を、天然ガスをエネルギー源として加温していたので、それを応用したものだ。紅葉の季節には散策を楽しんだ観光客が立ち寄り、好評を博している。

 

「足湯やすらぎ」と四倉氏の自宅にて、四倉氏が代々受け継ぐ天然ガス井戸とガスタンクを視察する。その後、「足湯やすらぎ」にて足湯を体験する。

 

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<実施要領>

1. 日程案: 
2015年10月28日(水)
08:30-10:00 移動:FPCJ→長生村
10:00-11:35 株式会社合同資源千葉事業所
       ㈱合同資源によるブリーフィング、ヨウ素製造現場見学
11:40-12:20 移動
12:25-13:10 昼食(ブラウンズフィールド)
13:10-14:10 ブラウンズフィールド
       天然ガス井戸の仕組み等の説明と見学(案内:NPO法人いすみライフスタイル研究所)
14:10-15:00 移動
15:00-16:00 足湯やすらぎ
       ・四倉家の天然ガス井戸、タンク、お風呂の見学
       ・足湯の見学、体験
16:00-17:30 移動(大多喜町→FPCJ)

※上記日程は変更が生じる可能性があります。

 

2.参加資格: 外務省発行外国記者登録証保持者

3.参加費用: 1人2,000円(全行程交通費、食事を含む)
*お支払い方法、キャンセル料等は、後日参加者にご連絡します。

4.募集人数: 10名(各社ペン1名、カメラ1名、TVは1社2名まで)。
*申し込み人数が10名を超えた場合は、国別の参加者数に上限を設定することがあります。

5. FPCJ担当: 横田(TEL: 03-3501-3405)

6.備考:
(1)写真・TV撮影に関しては担当者の指示に従ってください。
(2)千葉県とFPCJはツアー中に生じるいかなる不都合、トラブル、事故等に対して、一切責任を負いません。
(3)天然ガスが湧いている施設を見学するため、マッチ、ライター等の火器の使用は避けて下さい。

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