プレスツアー(案内)

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実施日 : 2023年06月05日 - 06日

三重プレスツアー

投稿日 : 2023年05月23日

取材テーマ:環境課題に向き合う海の生産者 × 地域活性化に挑む人たち

 


 今年616日~18日に「G7三重・伊勢志摩交通大臣会合」が開催される三重県は、南北に1,000km以上に及ぶ長い海岸線を有し、豊かな海に囲まれ養殖業が発展している。特に真珠・牡蠣(かき)などの貝類、マダイ・ブリをはじめとする魚類、ノリ・ワカメなどの海藻類の養殖が盛んで、2021年の同県の海面養殖産出額は156億円(県の漁業総産出額(海面漁業・養殖業)の40%)、生産量は20,634トンで、地域の重要な産業となっている。

 大臣会合が開催される志摩市を含む伊勢志摩地域は、気候が穏やかで、古くから自然と人が共生してきた。豊かな藻場が育む海の生態系を熟知する女性たちによる伝統的な素潜り漁「海女漁」が今も継承されている。また、この地域は1893年にアコヤ貝を用いた半円真珠の養殖が世界で初めて成功した場所としても知られ、三重県の養殖真珠生産業者数は全国1位、生産量は全国3位(2021年度2トン)で、現在も高品質な真珠を生産し続けている。

 一方で、日本の養殖業は、気候変動による海洋環境の変化、水質悪化、高齢化など様々な課題に直面しており、三重県も同様に厳しい状況に置かれている。同県では、こうした現状を解決するため、官民が連携して養殖産業を維持・発展させる取組が行われている。その例として、真珠を取り出した後のアコヤ貝の肉を廃棄せず、発酵させて肥料にする取組や、気候変動による海水温上昇に対応した品種開発や養殖管理の推進などがある。

 

本ツアーでは、G7交通大臣会合開催直前に伊勢志摩地域を訪れ、気候変動に対応した持続可能な養殖を目指す取組、伝統を受け継ぐ海女などを取材する。



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【取材内容】


1. 坂口真珠養殖工場(志摩市) 

 ~真珠生産で生じる貝肉を廃棄せずコンポストに~


 真珠の養殖は、母貝の飼育や核入れの作業をはじめ、人の手作業によって手間暇かけて行われる。自然の力を利用して生み出される真珠の輝きは、世界中の人々を魅きつけている。坂口真珠養殖工場は、3世代に渡り家族で営まれている真珠養殖場で、両親と共に養殖作業を担う坂口るり子(さかぐち・るりこ)氏は、真珠と海の現状を知り尽くすエキスパートだ。坂口氏は、あこや真珠養殖加工協議会の「あこや真珠養殖アンバサダー」を務めるなど、あこや真珠の魅力を国内外に伝える情報発信にも携わっている。

 真珠養殖発祥の地として真珠養殖が盛んな三重県では、近年、生産過程での環境への配慮も重視されるようになっている。これまで、真珠を取り出した後のアコヤ貝の貝肉は未利用でそのまま廃棄されていた。そこで、三重県が主導し、坂口真珠養殖工場を含む志摩市と南伊勢町の養殖業者と農家が参加して、2019年からこの貝肉を廃棄する代わりに米ぬかやもみ殻を混ぜて発酵させて「パールコンポスト」(堆肥)を作る実証事業が行われている。この背景にあるのは、環境への配慮が消費者に評価されることで、ブランド価値の向上につながるとの考えだ。現在は、養殖場など9カ所でコンポストがつくられており、そのコンポストは市内の花壇や観光農園などで活用されている。

 

◆真珠養殖工程
日本語  https://youtu.be/gzSrR6NA7SI

中国語  https://youtu.be/Y-oyydLof3c

◆パールコンポスト
日本語  https://youtu.be/GbvGP-g1xZk

中国語  https://youtu.be/oocezvrjFzU

 

◆本ツアーでは、坂口真珠養殖工場を訪れ、養殖作業(核入れ作業)の模様を取材する。その後坂口るり子氏から真珠の魅力や海洋への負荷を減らす取組などについて話を聞く。また、同社で行われている「パールコンポスト」を作る現場も視察し、三重県水産研究所の渥美貴史(あつみ・たかし)主査研究員から作業状況や真珠養殖産業の持続的な発展に向けた取組について話を聞く。


   

                  【画像提供(中央):三重県】




2.海女小屋体験施設さとうみ庵(志摩市) 

 ~素潜り漁を通じ、海の生態系変化を身をもって知る存在、海女~


 素潜りでアワビやサザエなどの貝や海藻などを採る海女の歴史は、伊勢志摩地域では約2,000年前にさかのぼるとも言われ、この地域のシンボル的存在となっている。海女たちは潮の流れを読み取ることによって潜る場所を決めたり、海底の石の重なり方や岩場の隙間を見て獲物がいるかどうかを見極める。また、獲物の大きさによって採取制限を行うなど、海女漁は海洋資源と共生する、持続可能な伝統漁業の代名詞ともいえる。近年、以前には見られなかった暖かい海で生息するサンゴが志摩近海で海女によって確認されており、海女たちは日々海の中を見ているからこそ、生態系の変化を身をもって感じている。


海洋資源の減少、高齢化などにより海女の数が減少し、後継者不足が深刻な課題となっている。2023年に行われた最新の調査では、志摩・鳥羽両市の海女の数は514人と過去最少を記録しているが、これは50年前の約8分の1だ。このような背景のなか、国内外の観光客に人気の「海女小屋」では、新鮮な海の幸を味わうことができるとともに、海女漁の伝統について話を聞くことができ、海女文化の次世代への継承と発信に寄与している。海女が休む海女小屋を模した飲食店「さとうみ庵」は、海女が客の前で魚介類を網焼きして提供しているが、海が荒れて漁ができない時期の貴重な収入源として現役の海女にも好評だ。

【画像提供:三重県】

 

 

◆本ツアーでは、「海女小屋体験施設さとうみ庵」を訪れ、桝屋紗香(ますや・すずか)マネージャーから施設概要を聞くとともに、現役の海女から、海女文化の歴史や近年の海の環境変化による海女漁の変容などについて話を聞く。その後、海の幸を使用した夕食をとる。


   

【画像提供(右):三重県】

当日は、海女漁は見られません。



3.三重県水産研究所(志摩市) 

 ~温暖化による水産業への影響とその対策を研究~

 

三重県では、それぞれ特徴ある各海域で様々な漁業・養殖業が行われているが、近年は、地球温暖化による海水温の上昇、水産資源の減少、生産者の高齢化など、水産業は大きな課題に直面している。そこで、三重県水産研究所では、水産業者が抱える課題に対応するため、気候変動に対応した養殖技術や、水産資源の維持管理に関する調査・研究を行っている。近年の急激な海の環境変化や、えさ不足の影響による真珠養殖に用いるアコヤ貝の大量死を防止するため、ITを駆使して水温のモニタリングを行い、海水温の情報を生産者に提供しているほか、環境変化に対応した真珠養殖のマニュアルも提供している。

 

 

また2021年からは高い水温に耐えうるアコヤ貝の品種開発に着手するなど、地元養殖業者への支援を続けている。さらに、伝統的な海女漁業を維持することを目的に、アワビ等の餌である海藻を海で増殖させる活動も行っている。

 

◆本ツアーでは、三重県水産研究所を訪れ、土橋靖史(つちはし・やすし)所長の説明を受けつつ施設内を視察し、海水温上昇による養殖業への影響とその対策などについて話を聞く。



【写真提供:三重県(上/水産研究所外観、左/アコヤ貝(殻)、中央/サザエ飼育棟、右/サザエ種苗】



4.株式会社南伊勢マリンバイオ(南伊勢町) 

 ~気候変動に対応し、海から陸上にシフトした次世代型の海藻養殖~

 

水産業が盛んな南伊勢町では、20204月から南伊勢マリンバイオによる、地下海水を使った「スジアオノリ」の陸上での養殖が行われている。お好み焼きやポテトチップスのフレイバーに使われる「青のり」として知られるスジアオノリは、これまで主に海面養殖で生産されてきたが、海水温の上昇や栄養塩類の減少により、近年では国内生産量が最盛期の3分の1程度の約50トンにまで激減している。そこで、海面ではなく、気候に左右されず安定的な生産が見込まれる陸上での養殖への転換が始まっている。


【画像提供:株式会社南伊勢マリンバイオ】

 

南伊勢マリンバイオは、採苗から陸上での養殖、出荷まで一貫して行い、食品メーカーなどへ原料としてスジアオノリを供給している。スジアオノリの陸上養殖業界の歴史はまだ10年ほどで、現在生産を行っている全国20社強の半数以上が45年の実績である。南伊勢マリンバイオの田中正廣(たなか・まさひろ)代表取締役は、スジアオノリの特徴的な香りと風味に惚れ込み、この事業に参入した。同社では、水槽の水温、気温、累計日射量などを日々計測するモニタリングシステムの導入、香り・風味を活かすための最適な塩分コントロール、香りを優先するための冷風乾燥機を使用するなどして、高品質なスジアオノリの安定出荷を図っている。今後、陸上養殖業界を牽引し、町や養殖業者などと連携して地域産業として発展させることを目指している。

 

◆本ツアーでは、田中正廣代表取締役の説明を受けつつ陸上養殖場を視察し、陸上生産のメリットや課題、今後の展望などについて聞く。


 

 

 

5.みえぎょれん養殖株式会社(大紀町) 

~廃業危機からブリ養殖の復活へ~

 

 三重県では1950年代頃からブリの養殖が始まり、1970年代には主要な生産品となっていた。しかし、同県では小規模な養殖業者が多いうえ、漁村地域の人口減少や高齢化、飼料価格の高騰やエサの食べ残しによる海洋環境への問題など様々な要因が重なり、1990年頃を境に、より安定した養殖生産が可能なマダイ養殖へと転換していった。古くから漁村として栄えていた大紀町(たいきちょう)の錦地区はブリの名産地として名を馳せていたが、養殖魚種がマダイに移り変わるなかで、同地区でもブリの生産が衰退、ブリ養殖業者はわずか5名のみとなるなど、事業撤退の危機に瀕していた。

 

この廃業危機を脱するべく、5名の養殖業者と三重県漁連が協力し、2020年に新会社「みえぎょれん養殖株式会社」を設立した。養殖技術に関する知識を結集することで、高品質のブリの生産が可能となり、独自ブランドの「伊勢ぶり」の開発に至った。今年から本格出荷が行われる予定で、伊勢ブリの養殖による地域産業の再興が期待される。「みえぎょれん」は、水産資源の持続的利用や環境・生態系の保全に配慮した管理を行っている漁業・養殖の生産者をFAO(国際農業食料機関)が定めたガイドラインに基づいて認証する「マリン・エコラベル・ジャパン」(MEL)の取得を目指し、本年4月に申請している。





◆本ツアーでは、錦漁港を訪れ、三重県漁業協同組合連合会の植地基方(うえじ・もとまさ)指導部部長から、ブリの養殖の現状と課題のほか、環境に配慮した取組、持続可能で安定的な経営などについて話を聞く。その後、船で伊勢ブリ・伊勢真鯛のいけすを見学し、漁師たちが船で作業している様子を間近で撮影する。(悪天候の場合は、湾が見下ろせる展望台にて撮影予定)


    

【画像提供:三重県】

 

 

6.CO Blue Center (志摩市)  

~海に関連した環境課題解決を目指す企業のためのオフィス群が誕生~


 サーフィンスポットとして知られる志摩半島の国府白浜(こうしらはま)海岸にあるCO Blue Centerは、気候変動・海洋プラスチック問題などの海の環境課題解決に取り組むスタートアップ企業を集積することを目指し、20234月に開所したばかりのオフィス群だ。古民家を改造したこの施設は「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)」を追求し、コーヒースタンドやギャラリー、サウナ、簡易宿泊施設などを有しているほか、目の前の海で仕事の合間のサーフィンも可能だ。

 代表の東山迪也(ひがしやま・みちや)氏は、海が間近にあるこのオフィスに、海の環境問題や地域課題に対応するソーシャルビジネス関連の企業・団体を集めようと入居を募っている。また、自身も目の前の海岸から回収した海洋プラスチックごみをリサイクルして地域通貨を試作するなどの活動を始めている。

 

◆本ツアーでは、CO Blue Centerを訪れ、代表の東山迪也氏から施設の理念や開業に至った経緯、海洋プラスチックごみの活用や今後の展望などについて話を聞く。

 


 


7.うみべのいえキッチン(南伊勢町) 

~海辺の地域交流拠点~

 人口減少率・高齢者率ともに三重県内トップクラスの港町に、2020年から始動した「うみべのいえプロジェクト」。まちごと家にするというコンセプトで、みんなが自由に利用できる「キッチン」を2021年にオープンした。海が見えるシェアキッチン兼カフェスペースとして、現在は約40の事業者が季節や曜日などによって様々な店を開いており、地域住民同士や町外の人たちとの交流の場となっている。キッチンを運営するプロジェクトのリーダーで、名古屋から夫婦で移住した西岡奈保子(にしおか・なほこ)氏は、人口減少で空き家が増え、過疎化が深刻化する現状に、「過疎地が抱える問題を新しい手法で解決したい」との思いで仲間と空き家を改装してこの場所を立ち上げ、少子高齢化の町が直面する諸問題を包括的に解決するアプローチを日々実践している。

 

◆本ツアーでは、西岡奈保子氏から「うみべのいえキッチン」の設立経緯やプロジェクトの展開などについて聞いた後、出店者であるタイ養殖業の大下水産の大下弘和(おおした・ひろかず)氏がふるまう寿司を食す(キッチンで昼食の準備状況などの撮影も可)。


 【画像提供(右):三重県】

 


8.一見 勝之(いちみ・かつゆき) 三重県知事


 

三重県は、海・山・川など恵み豊かな自然環境や伊勢神宮を中心とする歴史文化資源を有し、伊勢エビやアワビ、松阪牛などに代表される食文化も広く知られている。また、中部圏と近畿圏を結ぶ広域ネットワークの中央に位置するという利点を生かし、自動車産業をはじめとする、ものづくり産業が集積するなど、各地域の地理的特性などにより、様々な産業が発展してきた。

 

【画像提供:三重県】


 

◆本ツアーでは、2021年に着任した一見知事に「G7三重・伊勢志摩交通大臣会合」の開催に向けた抱負、三重の特色ある地域資源を生かした観光戦略、高齢化、過疎化、環境問題等に対応した次世代交通への取組など、県の施策について話を聞く。



9.横山展望台 (志摩市)


伊勢志摩国立公園にある英虞(あご)湾の複雑に入り組んだリアス式海岸の海岸線や、湾内に浮かぶ約60の島々や真珠いかだなど、その美しい景色を標高140mの高さから眺望できるのが「横山展望台」。天候が良ければ富士山が見えることもある。遊歩道も整備されており、ハイキング・トレッキングコースとしても人気がある。展望台周辺にあるカフェテラスや無料休憩スペースでは、国立公園の施設として環境への配慮と自然を守るための取組を行っており、紙製ストローやバイオマスプラスチック製カップの使用などゴミの少量化に努めている。


◆横山展望台の「天空カフェテラス」で、英虞湾を一望する景色を撮影する。


 

【実施要領】

 

1.日程

2023年6月5日(月)~6日(火)

 

2.スケジュール

※日程は、天候等の理由により後日予告なしに内容を変更することがあります。

 

【6月5日(月)】

07:09-08:45  東京駅→名古屋駅(のぞみ291号)

09:10-11:16  近鉄名古屋駅→鵜方駅(近鉄特急)

11:45-12:15  横山展望台

13:30-15:00  坂口真珠養殖工場

15:30-16:45  CO Blue Center

17:20-19:00  海女小屋体験施設「さとうみ庵」(夕食含む)

19:40      宿舎着 (志摩市内泊)

 

【6月6日(火)】

08:10      宿舎発

08:30-09:30  三重県水産研究所

09:50-11:20  株式会社南伊勢マリンバイオ

11:40-13:00  うみべのいえキッチン(昼食含む)

14:10-15:40    みえぎょれん養殖株式会社

17:10-17:50  三重県知事インタビュー

18:47-19:36  近鉄津駅→名古屋駅(近鉄特急)

20:05-21:42  名古屋駅→東京駅(のぞみ250号)

 

3.参加資格

原則として、外務省発行外国記者登録証保持者

 

4.参加費用

13,000円

※全行程交通費、宿泊費(1泊朝食)、2日間の昼食、夕食(1日目)を含みます。

※お支払い方法、キャンセル料等については、参加者にご連絡します。

 

5.募集人数

10名(各社ペンまたはカメラ1名、TVは1社2名まで)

 

6.FPCJ担当

取材協力課 山田、渡邉

(Tel: 03-3501-3405、E-mail: ma@fpcjpn.or.jp

 

7.備考

(1)本ツアーはG7三重・伊勢志摩交通大臣会合推進協議会が主催し、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)が運営を担当しています。

(2)本ツアーの内容は、予告なく変更になる可能性があります。

(3)参加者には経費の一部を負担していただいていますが、営利を目的とした事業ではありません。

(4)本ツアー中に発生した事故や怪我・病気、トラブル等について、G7三重・伊勢志摩交通大臣会合推進協議会及びFPCJは一切の責任を負いかねます。

(5)写真・TV撮影に関しては、担当者の指示に従ってください。

(6)ツアーの様子を記録した動画・写真・記事を、三重県及びFPCJのホームページやSNS等に掲載することがありますので、予めご了承ください。

 


            

 

                

                

 

   

 


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