実施日 : 2016年11月29日
報告:京都大学プレスツアー
投稿日 : 2017年01月25日
2016年11月29日(火)、京都大学プレスツアー「創造性をはぐくむ研究の場」を実施しました。
これまで多くのノーベル賞受賞者を輩出し、斬新な研究成果を生み出してきた京都大学。今回はその数ある研究の中から3つの特色あるテーマを選び、イギリス、ドイツ、デンマーク、イタリア、ベトナム、中国、香港、韓国のメディアから12人が取材を行いました。
※本プレスツアーは、京都大学主催、フォーリン・プレスセンターの協力で行われました。
※ツアー案内はこちらから。
★防災研究所★
自然災害の多い日本は、いざという時に備え、防災・減災への取り組みが急務となっています。京都大学の拠点である関西エリアは、阪神・淡路大震災を経験し、さらに南海トラフ地震の被害が及びうる地域に含まれることから、産官学が一体となって対策が練られています。京都大学は同エリアでの主要研究機関としての役割を果たすべく、京都市内とメインキャンパスとは別に宇治市に「防災研究所」を設置。京都駅から移動中のバスの中で寶馨所長からその成り立ちや研究分野の概要に加え、被災者のトラウマケアも含む総合的な防災分野の研究の重要性などが解説されました。
今回記者らが訪問したのは、宇治川オープンラボラトリー。防災研究所の付属施設で、「水」に特化した災害の実証実験が行われています。川池健司准教授の案内のもと、施設内の“体験型”シミュレーターを視察した記者たち。数人は地下1階に洪水が流れ込む「階段」を防水スーツと長靴姿でのぼる「雨水流出験装置」に挑戦し、その水圧の強さに驚いていました。これらの設備は1999年の福岡県博多駅周辺で起こった洪水で得た教訓も意識して災害時に想定されるリスクをリアルに再現しており、消防士などの訓練に使われることもあるとのことでした。
そのほかに、特に記者たちが関心を寄せていたのが、津波シミュレーター。スタッフがボタンを押すと、「ドンッ」という地に響くような音と振動とともに、大きな水槽の中の水が盛り上がります。2011年の東日本大震災後に新設されたものであるという説明を受けた記者たちは、このシミュレーターによりどのような予測と対策が可能となるのかといった質問を投げかけていました。
★文学研究科★
続いて、京都市内のマンションの一室に移動。藤田和生教授率いる研究室のメンバーを取材しました。彼女たちが取り組んでいるのは、動物の心理学。イヌやネコなどがどのような感情を抱き、行動を起こしているのかについてパターンを割り出すというものです。取材現場となったのは、彼女たちが普段から京都市内周辺の飼い主の協力を得て、実証実験を行っている場所。この日も飼い犬のテンテンちゃんの協力を得て、「イヌは飼い主に協力しない人を嫌う」のか、空箱などを使って実験を行いました。テンテンちゃんは多くの記者を前に緊張していたのか、なかなか想定した結果には至りませんでしたが、「とても目のつけどころの良い研究。今後の展開に期待できる分野だ」などの感想が出ていました。
★理学研究科★
最後にfMRI(磁気共鳴機能画像法)を使い、睡眠中の脳活動の血流の動きを分析している神谷之康教授の研究室を訪問しました。神谷教授が力を入れているのは、人間の夢を解析する研究。fMRIで眠りの前後などに脳のデータを収集することで、人間が眠っている間に見ている夢の中に出てくる物体、その内容が、少しずつ明確にすることが可能になり始めています。記者の「この研究をどのように活用していきたいか」との質問に、神谷教授は「脳が発する信号を明確に分析し、自分の意志で義肢を動かすことができる機能の開発につなげていきたい」といった意欲をお話しくださいました。
★山極壽一総長インタビュー★
山極総長のインタビューでは、ノーベル賞受賞者をここまで多数輩出できる秘訣はなにか、他の有名大学と比較してどのような違いがあるのか、といった質問が外国メディアの記者から投げかけられました。
山極総長は京大独特の特徴について、「常に物事を疑って、性質を奥まで探求する」、「上下関係なく、自由に討論できる場がある」、「討論という“対話”を通じて、己が変化していく」などを挙げながら、京大生の研究スタイルについて説明。また「日本語を学ぶ重要性」について強調し、「グローバル化が叫ばれているが、日本人ならまず、日本語で考え、伝える能力を身に着けなければならない。日本独自のことばによって、新たに生み出されるものものある」と訴えました。ゴリラの研究者としてもよく知られている山極総長は、アフリカのジャングルで襲われて何十針も縫ったことがある話を引き合いに、「それぐらいの覚悟がなければ、研究者はできない」と締めくくりました。
<本プレスツアーでの取材に基づいた記事>(更新中)
客观日本(中国)
東亜日報(韓国)
「야마기와 총장 “교토대 노벨상 8명은 자유 토론의 힘”」
Il Sole 24 ore(イタリア)
“Tsunami a Kyoto. Ma solo per prova”
Kristeligt Dagblad(デンマーク)
“Her kan man aflæse drømme du ikke selv kan huske”
dpa German Press Agency(ドイツ)
“Wenn Regen zur Todesgefahr wird”
“Japans Kampf gegen sintflutartige Regenfälle”
“Japan rüstet sich gegen Todesgefahr Sintflut”
Nature.com(イギリス)
"Q&A: Branching out in tough times"