実施日 : 2015年11月18日 - 19日
<報告>大分プレスツアー(第1回目)
投稿日 : 2016年01月12日
地理的に近いこともあり、中国、韓国などアジアを中心に、外国人観光客が増えている大分県。最近では「ラグビーワールドカップ2019」の会場に大分スポーツ公園総合競技場(大分市)が選ばれたこともあり、海外での知名度も上がりつつあります。
この流れを受けて、同県の主催、FPCJ企画協力で実施した本ツアーでは、世界一の源泉数(2,000以上)を誇る別府市、世界農業遺産に認定された国東半島を訪問。フランス、シンガポール、中国のメディアから5名の記者が参加し、大分県の魅力を海外に発信すべく、温泉や神仏習合をテーマに取材を行いました。
ツアーの案内はこちら
【1日目】
温泉に根付いた生活を体感
大分空港からバスで約1時間、最初に一行が降り立ったのが別府市。市内の高台にある「湯けむり展望台」から街を見下ろすと、あちこちから白い煙が上がっていました。「初めて別府に来ると、火事だと勘違いする人もいるんですよ」と、大分県東京事務所おんせん県おおいた課の阿部万寿夫課長。この日は残念ながら終日雨。しかしこれこそ、湯けむりが最も多く噴き出す天候なのだといいます。記者たちは傘を片手に、その様子を熱心にカメラに収めていました。
別府の温泉は“別府八湯”と呼ばれ、それぞれで効用などが違います。その一つ、古くから湯治宿が集まり栄えた鉄輪(かんなわ)地区にある「冨士屋Gallery一也百(はなやもも)」で、この地で生まれ育った安波治子代表にインタビュー。別府市民に根付く温泉文化などに加え、別府最古の旅館として明治時代に創業してからの歴史、老朽化のために改築を余儀なくされ、市民に開かれたギャラリーとして生まれ変わるまでの試行錯誤について聞きました。また、別府市内の人気観光スポット「地獄めぐり」の「かまど地獄」では、特色ある“地獄”に見立てた温泉や、足湯を楽しむ外国人観光客の様子を取材しました。
昼食は「里の駅かんなわ 蒸de喜屋」へ。湯治宿の食を支えてきた「地獄蒸し」を体験しました。温泉の蒸気を使って野菜や肉、魚介などを蒸す調理法で、最近は観光資源としても活用されています。食材にほどよくつく塩味から、海外でも注目されつつある日本の“うまみ”が味わえることでも人気。記者たちは蒸し釜に食材を出し入れし、味わいながら熱心にレポートしていました。
そしてもう一つ、地元イチオシの新しい観光スポットが「しいきアルゲリッチハウス」です。別府市は、アルゼンチン出身の天才ピアニスト、アルゲリッチとの縁で、毎年世界各国の音楽家を招いて「別府アルゲリッチ音楽祭」を開催。病院への訪問コンサートなど、音楽を通じた社会貢献活動を積極的に展開しています。案内してくれたのは、アルゲリッチと親交の深いピアニストの伊藤京子さん。この施設を拠点に、「世界平和を音楽で」をモットーに音楽の素晴らしさを伝えていきたいと述べ、ショパンのエチュードをはじめ、大分県竹田市出身の作曲家・滝廉太郎の「荒城の月」などを演奏し、素晴らしいサロンの音響を体感することができました。
温泉でクリーンなエネルギーをつくる
午後の取材テーマは、“地熱発電”でした。大分県は温泉の源でもある地熱の恩恵を受け、再生エネルギーの生産量で国内第一位を誇っています。それを応用した産業の創出に従事する「大分県農林水産研究指導センター農業研究部 花きグループ」では、工藤典幸・大分県工業振興課長から県のエネルギー政策についてブリーフィングを受けた後、同グループの研究の一つである、温泉熱を使ってビニールハウスを温め、花を栽培する取り組みを見ることができました。
記者たちが特に関心を示していたのが、大分市の中小企業・株式会社ターボブレードが開発した世界初の「湯けむり発電」の設備。地熱の蒸気と熱水をエネルギーとして活用しようというもので、安倍首相も視察に訪れています。「当社の強みの一つ、水力やガスのタービンを応用して、湯けむり発電が生まれました。今は試運転をし、実用化を目指しているところです」と林正基社長。日本の技術力を象徴ともいえる話に、記者たちは熱心に耳を傾けていました。
この日の宿泊先も、キーワードは“地熱”。別府市内で最大級の客室数を有する「杉乃井ホテル」は1980年に地熱発電の稼働を開始し、館内の冷暖房、温水プール、イルミネーションなど約4割の電力が地熱で賄われています。近年、東日本大震災を機に国内で自然エネルギーの重要性が叫ばれていますが、30年以上も前から続く地熱の歴史の古さと施設の規模に記者たちは驚いていました。
夜は、留学生が半数以上を占める立命館アジア太平洋大学(別府市)の卒業生で、現在は同校の職員として働くメキシコ出身のオルガ・バレダさんを招いて夕食会が開かれました。なぜ留学先に日本を選んだのか、別府に魅せられた理由、おすすめのスポットなどを聞きながら、大分の食材を用いた料理に舌鼓を打っていました。
【2日目】
神仏習合の地を訪ねて
2日目は、県北東部の国東半島へ。この地に広まる八幡信仰と仏教が融合した「六郷満山文化」の拠点であり、日本三大八幡の一つである宇佐神宮を取材しました。この日は特別に、国宝である本殿の敷地内に入ることができ、塗り直して間もない漆仕立ての本殿を見ながら、宇佐神宮が拠点となって生まれた国東半島の神仏習合の歴史について取材しました。
続いて一行は、九州最古の木造建築物で、国宝にも指定されている大堂がある富貴寺へ。周辺の地域は過疎化が進み、寺の経営も容易ではない中で、河野家2代目の住職である英信さんと息子で副住職の順祐さんが、寺の歴史を受け継いでいくべく寺を守り続けています。地方の寺院消滅が叫ばれている昨今、記者たちは彼らがどのようにそれを乗り越えようとしているかに関心を抱いているようでした。
そして昼食は、富貴寺のそばにある「旅庵 蕗薹(ふきのとう)」へ。今から11年前、住職の奥様である美代子さんが始めた食事処を備えた宿泊施設です。名物の豊後そばを打っているのはなんと副住職。湯布院のそば屋で3年間修業をして身に付けたもの。「地域と寺を活性化していくために、私たち自身も柔軟に変わっていかなければならないと思っています」。一家の強い決意が感じられる印象的な取材となりました。
伝統産業でまちおこし
最後に向かったのは、国東市にある七島イ学舎。地元の人たちが立ち上がり、国内で廃れつつあった畳の材料となる七島イを使ったものづくりの再興に取り組んでいる施設です。共同の作業場は、廃校になった小学校と幼稚園の建物を再利用したもの。くにさき七島イ振興会の林浩昭会長の案内のもと、地元の職人の方々にインタビューし、七島イの魅力はもちろん、ものづくりが自分の新たな生きがいになった話など、七島イにかける熱い思いを聞くことができました。
撮影:今村健志朗
<プレイベント(東京)も大盛況!>
11月6日、本プレスツアーに先駆けて、大分県が経営するレストラン「坐来」(東京・銀座)で、在京外国人特派員と大使館関係者を対象に昼食懇親会が行われました。アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、バングラデシュ、レバノン、中国、韓国などの在京外国メディアに、約15カ国の大使館関係者を含む30名以上が参加。テーブルには、関あじ、関さばの刺身をはじめ、郷土料理のだんご汁やとり天、かぼすを使った料理など大分県の名産が鮮やかに並び、東京にいながら、大分県の魅力を大いに堪能できる機会となりました。
*今回のプレスツアーに基づく記事は、以下のリンクよりご覧いただけます。
【シンガポール:Media Corp】
'Japan looks to steam as source of renewable energy'
'Japan's Oita Prefecture looks to woo tourists amid industry boom'