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菅首相、初の所信表明演説で「日本2050年脱炭素」を宣言

投稿日 : 2020年11月02日

注目すべき海外メディアの日本報道

(10月26日~30日)




菅首相、初の所信表明演説で「日本2050年脱炭素」を宣言





10月26日に召集された臨時国会で、菅義偉首相が就任後初めてとなる所信表明演説を行った。「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」との方針表明に米英主要メディアが注目、同日付で一斉に報じた。総じて、宣言を評価しつつも、実現に向けてエネルギー政策の抜本的改革の必要性を説く論調となっている。

 

 

 

【米国】

The New York Times紙は、「日本の新リーダー、2050年までにカーボンニュートラルを目指す野心的な目標を設定」(Ben Dooley東京特派員他)を掲載。2060年を目指す中国の宣言に数週間遅れて日本は「2050年脱炭素」を宣言し、その達成には化石燃料に大きく依存する日本のエネルギー構造の大規模な見直しが必要だとしつつも、この新たな宣誓は、前回の温室効果ガス排出削減へのコミットからの大きな進展であり、パリ協定が求める世界の気温上昇抑制に向け必須であると報じた。加えて、2011年の原発事故以降、再投資してきた石炭への依存を減らす努力には産業界からの反発があるだろうが、菅首相の発表は、よりクリーンで多様なエネルギー源を支持し、日本に石炭依存への再考を促すかもしれないと伝えた。

 

The Washington Post紙は、「世界第3位の経済大国日本、2050年カーボンニュートラルを宣言」(Simon Denyer東京支局長、Akiko Kashiwagi記者)を掲載。日本は石炭政策の抜本的な転換と共に、2050年までに温室効果ガス排出ゼロを達成し、カーボンニュートラル社会を実現することにコミットしたとし、菅首相は就任最初の所信表明演説で、気候変動への日本の対応における大きな動きについて概説したと報じた。世界第3位の経済大国で第5位の温室効果ガス排出国である日本の国内外での石炭への投資には厳しい批判があるが、ついに日本も、昨年同じ目標を掲げたEUや先月2060年脱炭素を宣言した中国と同じ道を歩んでいるとし、水素や洋上風力の活用も含め、産学官連携で取り組むとの梶山経産相のコメントを紹介している。

 

CNN電子版は、「日本の首相、2050年までにゼロエミッション、カーボンニュートラル社会を目指す」(Yoko Wakatsuki記者他)を掲載。日本の温室効果ガス削減の進捗の遅さを批判してきた環境団体は、菅首相の脱酸素宣言を「まさに世界から必要とされている行動」と歓迎しつつも、宣言と具体的な政策が一致することが必要だと警告、さらに、海外の投資家も日本がEUと共に同じ目標を掲げ、太陽光発電など環境保全技術の普及に注力することを歓迎しているが、石炭の廃止と石炭火力発電所の建設停止について警鐘を鳴らしていると報じている。

 

 

 

【英国】

Financial Times紙は、「菅首相、日本は2050年までに温室効果ガス排出ゼロとなると断言」(Robin Harding東京支局長)で、菅首相の演説の目玉となった「脱炭素社会の実現」は、EUの設定した目標と合致し、先日の中国の2060年CO2排出ゼロ宣言に続くものだが、日本はエネルギー政策の大きな転換を求められるだろうとし、気候危機の壊滅的影響の回避に向けて世界が求めていたこの宣言を歓迎するとの環境団体のコメントを引用しつつも、具体的な方策はこれまでも示されておらず、福島原発事故の影響もあって日本の化石エネルギー依存度は2017年時点で87%に上昇したと報じている。

 

The Guardian紙は、「日本は2050年までにカーボンニュートラルとなると首相が宣言」(Justin McCurry 東京特派員)で、菅首相の宣言は、世界第3位経済国が気候緊急事態の解決に向けて大胆な施策をとることを予告しているとし、具体策は示していないものの、再生可能エネルギーを積極的に推進し、次世代太陽電池などの革新的技術開発により、長年の石炭火力依存を抜本的に転換すると述べたと報じつつ、世界が2050年脱酸素を達成するには、日本の再生可能エネルギー能力の大規模な増強が必要だとの環境団体のコメントで結んでいる。

 

 

 

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