天皇陛下が「生前退位」のご意向
投稿日 : 2016年07月19日
注目すべき海外メディアの日本報道
(7月13日~14日)
2016年7月19日
天皇陛下が「生前退位」のご意向
7月13日、天皇陛下が皇太子さまに天皇位を譲る「生前退位」の意向を示されていると日本のメディアが報じた。天皇陛下は現在82歳、2012年には東大病院で心臓のバイパス手術も受けられたことが大きなニュースになった。高齢であることから、今後天皇としての公務の責任を十分に果たすことが難しいことが理由であると報じられたが、宮内庁は一連の報道を否定している。
このニュースについて、各国メディアも東京発で一斉に報じている。
ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)は、13日付でリッチ素子記者が「日本の明仁天皇が生前退位の意向とメディアが報じる」を掲載。1817年の光格天皇の退位以来、約200年ぶりに日本の天皇が生前に天皇の位を譲る意向を示されていると報じた。また、昭和天皇はご逝去前、数年にわたり病に伏されていたことから、自身が天皇位を譲る時はより平易に実務的に行いたいという思いがあるのではないかという米国の学者の見解を紹介した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙電子版(米国)はピーター・ランダース記者、藤井恵記者が14日付で「日本の天皇、即位中に戦没者を慰霊」を掲載。昨年4月に天皇皇后両陛下がパラオを訪問し太平洋戦争の戦没者を慰霊したことに加え、これまで沖縄やフィリピンでも戦没者慰霊を行ってきたことを紹介した。そのうえで、天皇陛下はこれ以上公務を遂行することが難しく、戦争慰霊における自身の役割は終わったと感じているのではないかという分析を紹介した。
CNN放送電子版(米国)は、ジュリエット・ペリー記者、若月陽子記者が14日付で「日本:天皇が退位したらどうなるか」を掲載。日本の皇室は1,400年もの世襲の歴史があり、明仁天皇は125番目の天皇であり、紀元前660年に即位した最初の神武天皇の直系であることを紹介した。また、生前退位に必要な皇室典範の改正には国会の承認が必要になり、その過程で、皇室と国の関係、現在社会での天皇の役割や皇位継承などにも議論が及ぶだろうと報じた。ロイター通信(米国)はエレイン・ライズ記者が14日付で「日本の天皇退位で、女性天皇即位の議論を巻き起こす可能性も」を掲載。天皇陛下が生前退位するとなると、天皇位は徳仁皇太子殿下に継承されるが、皇太子殿下の子は女児一人のため次は甥の悠仁さまに継承することになること、皇室典範の改正には国会での数年にわたる議論が必要となり、女性皇位継承に関する議論に波及する可能性があると報じた。(原文ママ仮訳)
BBC放送電子版(英国)は13日付で「日本の明仁天皇が『生前退位のご意向』」を掲載。近年の健康上の問題を踏まえて、公務を減らしてまで天皇の位にとどまることは本意ではなく、家族もその意志を受け入れていると日本のメディアが報じたと伝えた。さらに、天皇陛下は皇后陛下と共に国民と皇室の距離を縮めることや、第2次世界大戦の傷あとを癒やす活動などに尽力されたこと、2002年の日韓ワールドカップの際に自身の先祖が韓国にゆかりがあると述べ、日本の国民を驚かせたなどのエピソードを紹介した。フィナンシャル・タイムズ紙電子版(英国)は13日付でロビン・ハーディング東京支局長が「日本の公共放送、明仁天皇が生前退位のご意向と報じる」を掲載。明仁天皇はこの数年病気をされていたが、天皇を象徴ととらえる日本の国民にとっては、生前退位の報道は依然として衝撃的なものであると伝えた。テレグラフ紙電子版(英国)は、ダニエール・デメトリオ記者が14日付で「明仁天皇が生前退位のご意向により日本の皇室が困惑」を掲載。明仁天皇は、民間人との結婚、中国訪問に加え、第二次世界大戦の間に日本が近隣国に多大な苦痛を与えたことを公けに認めたことなど、あらゆる面において皇室の改革者であったと報じた。
また、朝鮮日報日本語電子版(韓国)では14日付で金秀恵東京支局長が「明仁天皇が生前退位の意向、実現すれば200年ぶり」を掲載。現行の皇室典範には、天皇が生きている間に退位した時の規定がなく、今後これを見直す作業が進められる見通しであると報じた。
写真:ロイター/アフロ
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