英国のEU離脱、日本経済への影響
投稿日 : 2016年07月01日
注目すべき海外メディアの日本報道
(6月27日~6月30日)
2016年7月1日
英国のEU離脱、日本経済への影響
6月23日に英国で実施された国民投票はEU離脱という結果となった。これを受け、24日の東京株式市場では日経平均株価が急落、1万5000円を割り込む今年最安値を更新したほか、東京外国為替市場のドル円相場は一時1ドル99円台に急騰するなど、日本の市場にも大きな影響を及ぼした。
(写真:ロイター/アフロ)
英国では、27日付ガーディアン紙電子版でジャスティン・マッカリー東京特派員が「日本と中国が対英投資への懸念を示す中、Brexitのポンド安が続く」を東京発で掲載。英国のEU離脱決断を受け、日本と中国が英国や世界経済状況が新たな脅威にさらされることへの警告を発したと報じた。安倍首相が金融市場安定化に全力を尽くすよう日銀へ指示したことにより日経平均株価が上昇、日本の株式市場の強靭さを見せたと報じるとともに、岸田外務大臣がヒッチンズ駐日英国大使に対し「英国に進出している1000余りの日本企業の声に耳を傾けてほしい」と要請したと伝えた。30日付フィナンシャル・タイムズ紙アジア版は社説で「日本は通貨安に訴えるべきではない」を掲載。EU離脱決断の影響による急激な円高に対し、財界から輸出促進のため外為市場介入を求める声が高まっており、有力な政治家も円安の誘惑にかられていると述べつつ、円を大幅に引き下げる理由はないとして、介入への反対論を示しながら、最良の政策対応は財政政策を通じて内需を強化することを目指すものになろうと論じた。
その他欧米では、リベラシオン紙電子版(仏)が24日付でアルノー・ヴォルラン記者が京都発で「日本、金融市場の混乱回避のため英国のEU『残留』を支持」を掲載。安倍首相が5月初めの英国訪問の際に英国のEU残留支持の立場を表明したとし、安倍首相や麻生財務大臣も英国のEU離脱が日本経済に及ぼす影響を懸念していると報じた。また日本の世論は離脱問題に無関心である一方で、メディアは離脱を強く懸念する政界や経済界のトップの意見を大きく取り上げていると伝えた。ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)は26日付でジョナサン・ソーブル記者の「日本は円高阻止への介入の警告を示唆、市場の終値が上昇」を掲載。政府・日銀が首相官邸で緊急会合を開き、英国のEU離脱決断を受けて市場への対応を協議、安倍首相が麻生財務大臣に対し、「日銀と連携し、為替を含む金融市場をこれまで以上に注視するよう指示した」と報じた。
アジアでは、日本の参議院選挙を伝える中で英国のEU離脱による日本への影響に触れている。27日付中央日報日本語電子版(韓国)は「英国EU離脱の余波 日本の選挙で与野激突・・・『もう宴は終わった』」を掲載。安倍首相が「危機状況である以上、安定した政権が必要だ」として支持を訴え、菅官房著官も「消費税の先送りの判断は正しかったのではないか」と発言する一方、野党は「EU離脱による円高と株の乱高下など、日本経済の混乱を浮き彫りにしながらアベノミクスの攻撃材料にしている」と報じた。29日付新華通信社日本語電子版(中国)は郜婕記者/吴寒冰記者による「EU離脱の混乱に乗じて、安倍首相は参議院選挙をいかに戦うのか」を掲載。離脱決定後に円が急騰したため「以前から通貨引き締めの抑制に力不足だった『アベノミクス』はますます日本経済を回復させる効力がないと判断されている」と報じた。一方、参議院選挙への影響として、米国コロンビア大学のグレイグ・カーティス名誉教授が安倍首相が所属する政党に有利になる可能性があるとし、「変動の時期に、日本の有権者は安定を選ぶだろう」と語ったと伝えた。
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