被爆地広島でG7外相会合を開催
投稿日 : 2016年04月15日
注目すべき海外メディアの日本報道
(4月11日~14日)
2016年4月15日
被爆地広島でG7外相会合を開催
5月に開催される「伊勢志摩サミット」に先立ち、4月10~11日にG7(先進7カ国)広島外相会合が広島市で開催された。G7初となる核軍縮・不拡散についての成果文書として発表された「広島宣言」では、世界が一丸となって「核兵器のない世界」を目指すことが明記された。また、同時に出された「海洋安保に関する外相声明」では、南シナ海の領土問題や北朝鮮の核開発についての見解などが盛り込まれた。
G7の外相らが平和記念資料館を訪問し、原爆死没者慰霊碑への献花を行ったことは、世界各国に大きなインパクトをもたらした。(写真:ZUMA Press/アフロ)
被爆地での外相会合開催への外国メディアの関心は高く、各国の記者が広島発で報道している。ニューヨーク・タイムズ紙電子版(米国)では、ジョナサン・ソブル東京支局長が「ケリー国務長官が広島の慰霊碑を訪れ、日米同盟を強調」を掲載。米国人の多くは、原爆は日本を降伏させ、自国民の命を守る上で必要であったと信じていること、日本人はこれまで米国に謝罪を求めたことはなく、ケリー国務長官も今回謝罪はしなかったが、それでも岸田文雄外務大臣はG7外相の訪問を“歴史的な日”と表現したと伝えた。さらに同紙の12日付けの社説「広島から核のない世界へ」では、ケリー国務長官が道を切り開いた今、来月の伊勢志摩サミットの際、オバマ大統領が米国の大統領として初めて広島を訪問することを妨げるものは何もないと述べた。
ロイター通信(米国)は、竹中清記者らが11日付けで「ケリー国務長官、広島訪問は”胸をえぐられるよう”な体験。世界に核廃絶を訴える」を掲載。広島を訪れたケリー国務長官は原爆資料館などの視察を通じて、原爆の遺産はひどく衝撃的なもので、核兵器のない世界をつくり実行していくため、公職にある者すべてが持つ義務の深さを再認識させるものだと述べたと伝えた。また、ブルームバーグ電子版(米国)は、アンディ・シャープ記者が11日付けで「G7が声明で南シナ海の領土紛争を取り上げる」を掲載。中国が近年、南シナ海の領有権を主張していることにG7が共通して懸念を示しており、「海洋安保に関する外相声明」の中でも、この問題に平和的解決を図っていく重要性が盛り込まれたことを伝えた。AP通信(米国)は山口真理記者が11日付けで「G7外相、広島で核廃絶を前進させる」を掲載。今回の会合で議論された項目の一つとして最近各地で頻発しているテロ事件を挙げ、岸田外務大臣が「これまで国際社会は平和と繁栄の維持といった価値観を共有してきたが、今、世界はテロや過激主義を前にこの価値観を変えるような挑戦を受けている」と述べたことなどを報じた。
米国以外のG7のメディアも、ケリー国務長官の広島訪問に注目した。ル・モンド紙電子版(フランス)は11日付けで、フィリップ・メスメール記者が「ジョン・ケリー氏、広島で『核なき世界』を求める」を掲載。米国務長官としての初の訪問が実現した4月11日を“歴史的な日”と伝えた。フィナンシャル・タイムズ電子版(英国)は、ロビン・ハーディング東京支局長が12日付けで、「ジョン・ケリー氏が広島に歴史的訪問」を掲載。広島の子供たちがケリー国務長官などに献花用のリースを手渡す写真を大きく掲載し、ケリー国務長官の和解の姿勢は、オバマ大統領の訪問の下地となるかもしれない。また、中国がG7の会合で海洋問題を取り上げないように日本に求めていたが、中国の名前は出さず、「現状を変更し緊張を高め得るあらゆる威嚇的、威圧的又は挑発的な一方的行動に対し、強い反対を表明する」との声明が出されたことを報じた。
また、G7以外の国の報道では、中央日報日本語電子版(韓国)が12日付けの社説で「米国務長官の広島訪問、日帝免罪符なってはいけない」を掲載。ケリー国務長官の訪問を意味深いと報じつつも、大日本帝国時代の過ちを希釈させ、日本が被害国といった誤ったメッセージを与えかねないとの懸念を示した。また、人民日報日本語電子版(中国)は14日付けで「G7外相会合での南中国海問題の扱いについて」を掲載。中国外交部がG7外相会合の声明で同問題に言及したことについて強い不満を示し、海洋問題を騒ぎ立て、地域の対立を引き起こすべきでないなどと表明していることを伝えた。
<関連リンク>