注目の日本報道

一覧に戻る

安倍首相、戦後70年談話発表(2015年8月25日)

投稿日 : 2015年08月25日

注目すべき海外メディアの日本報道

(8月14日~18日)

 

 2015年8月25日

 

安倍首相、戦後70年談話発表、各国メディアが報じる

 

安倍首相は14日、臨時閣議で決定された戦後70年談話を記者会見で発表した。談話は多くの犠牲者が出たことに痛惜の念を表すとともに永劫の哀悼を捧げ、謝罪については将来の世代に背負わせてはならないと記し、これまでの「謝罪外交」に区切りをつけたい意向を示唆した。過去2回の談話で用いられた「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「心からのおわび」の4つの文言は、今回の談話でも全て盛り込まれた。歴代内閣の歴史認識を継承する姿勢を表明する一方で、両談話にはなかった「感謝」や「積極的平和主義」などの言葉を盛り込むなど、安倍首相の理念を強調した。また、これまで日本が反省とおわびを重ねてきた対象として、インドネシア、フィリピン、台湾、韓国、中国を挙げるとともに、戦時下で女性の人権侵害があったことも明記している。談話については、国内のみならず国際社会、特に米国、中国、韓国は発表前から歴史認識への懸念からその内容を注視していた。日本政府は、談話の意図を正確に発信するために、談話の英語版も同日に公表した。

 

夕方の総理記者会見直後から各国メディアは電子版で速報するなど相次いでその内容を報じた。米国メディアは、安倍談話は新たな明白な謝罪に至らなかった点について異口同音の報道をした。14日付AP通信電子版モリツグ・ケン東京支局長/山口真理記者「日本の指導者、第二次世界大戦の謝罪を思いとどまる」と報じ、第二次世界大戦中に日本が何の罪もない人々に「計り知れない損害と苦痛」を与えたと認めたが、安倍首相は日本の将来の世代は謝罪を続けるべきではないと述べたと伝えた。同日付CNN電子版ジェイソン・ハンナ記者による「安倍氏、第二次世界大戦に対する“深い痛惜”、しかし日本は謝罪し続けることはできない」を掲載、安倍首相は新しい謝罪をしなかったが、過去のおわびを踏襲し、女性の人権を重要視するとした談話の内容を紹介した。同日付ニューヨーク・タイムズ紙電子版ジョナサン・ソブル記者による「安倍晋三は第二次世界大戦での謝罪を繰り返したが、何も付け足さなかった」を掲載し、談話は歴代内閣のおわびを継承することは表明したが、自身の新たなおわびはなかったと指摘。米国の専門家による談話の分析や、中国メディア・韓国政府の反応、村山元首相のテレビでの発言を紹介しつつ報じた。15日付ワシントン・ポスト紙アナ・ファイフィールド支局長/織田有希記者による「安倍氏、第二次世界大戦について新たな謝罪はせず」では、安倍首相は日本による戦時中の行為について、明白な謝罪に至らず、誰も完全には満足させることはなかったと伝えた。同紙は同日付社説「安倍氏の平和の申し出」においては、談話は和解的であり、愛国主義的ではなかったと述べ、日本が平和にコミットし続けていることを評価した。ロイター通信電子版は16日付でリンダ・シーグ記者竹中清記者による、「談話で“断腸の念”を表明後、安倍首相の支持率が上昇」を報じ、談話発表後の初めての世論調査で内閣支持率が37.7%から43.2%に上昇したと伝えた。

 

欧州では、14日付でガーディアン紙電子版(英国)ジャスティン・マッカリー記者による「日本の安倍首相、戦後70周年談話で新たな謝罪せず」を掲載、安倍首相が未来の世代は戦争に関して謝罪し続ける必要はないと述べ、中国・韓国からの批判が予想されると報じた。BBC電子版(英国)「第二次世界大戦と日本:安倍総理は心からの悲しみを表現」の記事で、安倍首相自身の新たな公式謝罪はなかったとしつつも、首相は中国、韓国のみならず国内の保守層も満足させなければならないという重圧下にあったと報じた。AFP通信電子版(フランス)長谷川京子記者が「日本の総理大臣、第二次世界大戦に反省の意を表明するも犠牲者に対しては不十分」と報じ、安倍首相は歴代の歴史認識を継承する意思を伝えたが、日本の軍国主義下で苦しんだアジア諸国の心情を動かすことはなかったとし、また安倍首相の談話は、戦争中の侵略への後悔と、戦後の平和国家としての実績のバランスを取ろうとした内容であるとの見方を示した。フィナンシャル・タイムズ紙(英国)ロビン・ハーディング東京支局長が15-16日付で「安倍氏、ナショナリズムで過去の戦争の謝罪を覆う」との記事で、安倍首相は次世代においては謝罪を続ける必要がないと述べ、過去を反省する姿勢を継承したが、その文脈を鋭く変えたと報道した。また翌17日付で社説「アジアは過去よりも未来を見つめるべきだ」を掲載、欧州と異なり北東アジアでは戦後70年経ってもいまだ対立が存在しているとし、フィリピンやシンガポール、インドネシア同様、中国・韓国も日本の犠牲にはなったが、アジア地域の安定を考えると既に関係を進展させている他のアジア諸国を見習うべきだと論じた。

 

中国メディアは談話について前向きな姿勢を一定評価する見方もあるが、明らかな謝罪がなかったと指摘する報道が多くみられた。新華通信社日本語電子版(中国)は14日夕方、談話について安倍首相は歴代内閣の歴史認識を振り返る形で間接的に言及したが、戦後生まれの日本人は謝罪を続ける必要はないと表明した、とその内容を報じた。英語電子版(中国)は15日、北京発「安倍首相の談話を受けて中国は心からの謝罪を要求」と題し、日本は過去の侵略については明確にすべきであったとの政府関係者のコメントを引用するとともに、安倍首相は未来の世代が謝罪を続ける必要はないとも述べたと伝えた。

 

韓国の主要紙やテレビは談話について、誠意が感じられないと批判的に報じている。14日付聯合ニュース電子版は、「繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきた」の発言に言及し、「安倍談話 村山・小泉談話より後退=『過去形』のおわび」の見出しで、自ら謝罪する代わりに「過去形」で表現したと否定的に報じ、また植民地支配と侵略に触れたものの日本の行動として明示しなかったと報道した。15日には、KBS、MBC、SBSの各テレビ局が夜のニュースで「残念な点が少なくない」との朴槿恵大統領の発言を紹介し、誠意ある行動で裏付ける事を要求したと報道した。中央日報日本語電子版「<戦後70年談話> 安倍首相の『不思議な謝罪』」との見出しで、安倍首相は直接謝罪せず「過去形・3人称謝罪」をした、また内容が期待に及ばなかったため韓国政府はすぐに公式的な立場を表明しなかったと伝えた。17日付朝鮮日報日本語電子版キム・スヘ東京特派員/アン・ヨンヒョン北京特派員による「安倍談話:中国には低姿勢、韓国には冷淡」を掲載。中国に対しては配慮が見られたが、韓国については談話の中の植民地支配に関する部分で一度だけ、また従軍慰安婦問題についても漠然と言及したと伝えた。

 

<関連リンク>

外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」

FPCJとは
取材協力
取材に役立つ情報
活動の記録
外国への情報発信