注目すべき海外メディアの日本報道(2015年4月27日)
投稿日 : 2015年04月27日
注目すべき海外メディアの日本報道
(4月20日~4月23日)
平成27年4月27日
1.米主要メディア、安倍首相訪米前の日米TPP交渉会合を報じる
4月20日から東京都内で行われていた環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る日米の閣僚協議が21日未明に終了した。協議後、甘利TPP担当大臣、米国のフロマン通商代表とも両国間の距離が狭まったとの認識を示したが、焦点となっていた米や自動車に関して依然として意見の隔たりがあり、最終的な決着に向けて今後も調整が続けられることとなった。
ロイター通信電子版(米国)は、21日付でレスリー・ロートン記者・スタンリー・ホワイト記者によるワシントン・東京発の記事「日米両国、TPP交渉の合意を楽観視」を掲載。両国の複数の交渉関係者のコメントを中心に、安倍首相の訪米を前にした交渉の進展を報じた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙電子版(米国)も、20日付で大辺暢記者による「米日のTPP担当官、合意に向け実質的な進展があったとコメント」を掲載。更に、ジェラルド・ベーカー記者および林由佳記者による安倍首相へのインタビュー記事も掲載し、「両国は合意に近づいているが、必要とされるのは両国の“政治による決断”だ」との発言を報じた。一方で、AP通信電子版(米国)は、20日付・東京発の「米日会談、農産品と自動車に関する溝を埋めるに至らず」を配信。「溝は大いに埋まったが、(自動車や農産物に関する)課題解決には引き続き努力が必要だ」との米国・フロマン通商代表の発言を報じた。ブルームバーグ電子版(米国)も、21日付で高橋舞子記者による「米日両国、安倍首相の訪米前にTPP交渉合意叶わず」を掲載し、「何の現状打開策も見いだせなかったのは明らか」との専門家の厳しい見方を紹介した。
2.安倍首相による靖国神社への「真榊」奉納や、歴史認識・戦後70年の談話を巡る各方面からの発言を受け、報道が相次ぐ
4月20日、安倍首相は出演したテレビ番組の中で「(「戦後70年談話」において)侵略、植民地支配、痛切な反省、心からのおわびなどの言葉が入るのか」と問われ、「(これまでの談話に)書かれていることを引き継いでいくと言っている以上、もう一度書く必要はないだろう」と回答。これに対し、翌日、村山元首相は都内での講演において「『なぜ日本だけ謝らなければいけないのか』という気持ちがあるのではないか」と批判した。また、21日から靖国神社で春の例大祭が始まったのに合わせ、安倍首相は「真榊」と呼ばれる鉢植えの供え物を私費で奉納した。22日には、安倍首相がアジア・アフリカ会議(バンドン会議)60周年首脳会議で演説したが、戦後50年の村山談話、同60年の小泉談話にある「植民地支配と侵略」「心からのおわび」などの言葉を引用しなかったことから注目を集めた。
こうした動きを受けて、ブルームバーグ電子版は、20日付でイザベル・レイノルズ記者、廣川高史記者による「安倍首相の靖国への真榊奉納と戦後70年談話、近隣諸国を怒らせる危険性」を掲載し、安倍首相のテレビ番組での発言などを紹介した。ワシントン・ポスト紙電子版(米国)は、同日付でアナ・フィフィールド東アジア総局長による記事「安倍首相、戦時中の侵略行為に対する謝罪を引き継ぐよう強く求められる」において、村山元首相の「安倍首相は1995年の村山談話を骨抜きにしようとしている」との発言を報じた。新華社通信英字電子版(中国)は、22日付で「村山元首相、安倍首相の謝罪に関する発言を批判」、「安倍首相、責任には言及せずに戦争を巡る“深い反省”を表明」等の見出しで、村山元首相の発言やバンドン会議での安倍首相の演説について事実関係を中心に報じた。また、ハンギョレ新聞日本語電子版(韓国)は、22日付で社説「『侵略と植民支配反省』を回避する安倍首相」を掲載し、バンドン会議での演説を厳しく批判した。23日付東亜日報日本語電子版掲載の「『植民地支配』や『謝罪』を外した安倍演説」も、演説が今後の韓日関係に及ぼす悪影響を懸念した。
歴史認識の問題に関し、村上春樹氏が、共同通信配信のインタビュー「時代と歴史と物語と」の中で、相手国がもういいと言うまで謝るしかないのではないかと発言したことも注目を集めた。日本国内では東京新聞(4月17日)、西日本新聞(19日)などがインタビューを掲載したが、海外メディアでは、フランスの大手通信社AFP電子版が17日付で「村上氏、日本は許されるまで謝罪を続けねばならないと述べる」を掲載。村上氏が、過去にも、日本が戦時中の侵略行為に対する責任に十分向き合っていないとの懸念を示してきたことを紹介した。韓国のハンギョレ新聞、朝鮮日報の日本語電子版も、18日付でそれぞれ「村上春樹『日本は周辺国にきちんと謝るべき』」、「村上春樹氏『日本は相手国が納得するまで謝罪すべき』」との見出しで、インタビュー内容を報じた。中国の人民日報日本語電子版は、インタビューでの発言に加え、村上氏が魯迅を始めとする中国文学の影響を受けたと見られることや、村上作品が中国でも広く受け入れられていることを併せて紹介した。
<関連リンク>
外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」