注目の日本報道

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注目すべき海外メディアの日本報道(2013年1月17日)

投稿日 : 2013年01月17日

1. 外交・安全保障

(1) ル・モンド紙(フランス)は、1月6・7日付で、フィリップ・ポンス東京特派員による記事「北東アジア:今こそ実用主義が求められる?」を掲載した。ポンス記者は、日本、中国、韓国で同時期に新たな首脳が誕生したが、安倍首相は、軍事費増強、憲法改正、戦前の日本による侵略行為を否定する発言で中国をいらだたせており、同様に、1993年のいわゆる「河野談話」の見直しを巡る発言で韓国の怒りも買っているとした。その上で、日中韓各国でナショナリズムが強まっているが、実際には安倍首相は現実主義的路線を取るほかなく、事実、首相就任後は、尖閣諸島への警備員配置計画や「竹島の日」式典の政府主催を当面見送るとするなど、選挙期間中の好戦的トーンを弱めていると伝えた。また、尖閣諸島の問題で妥協点を見つけるのは難しそうだが、日中間の経済関係の重要性が事態を収束させる可能性があり、このことは安倍首相も認識していると報じた。

 

(2)7日午前~8日未明にかけ、中国の複数の海洋監視船が日本の領海を13時間にわたり侵犯したことを受け、8日、政府は中国大使を外務省に呼び、厳重抗議した。二ューヨーク・タイムズ紙(米国)のマーティン・ファクラー支局長は、本件につき、9日付記事「領有権を巡って日中間の緊張が激化」で、尖閣諸島を巡る日中の緊張関係が再燃して以来、最も長時間にわたる侵入で、対立を激化させるものと報じた。度重なる侵入は、日本に領有権問題の存在を認めさせることを狙った中国の新たな戦略である等とする日米の専門家の見方も紹介。安倍首相が、特に中国機に対して同島群周辺の監視を強化するよう防衛大臣に指示したことも伝えた。

 

(3)当センターでは、1月8日、株式会社日本総合研究所国際戦略研究所の田中均理事長をブリーファーにお招きし、「安倍新政権発足後の日本の外交政策」をテーマにお話し頂いた。ブリーフィングに参加した人民日報(中国)の田泓東京特派員は、12日付「中国牽制をより重視する安倍首相」と題する記事を執筆。安倍首相について、「米国を重要視し、中国を牽制する」との外交戦略を明確に掲げており、中国に対しては「まずは封じ込める、そこから改善する」との戦略に向かっていると指摘した。「中国がつよくなればなるほど、日本の政治的な立場もますます重要になってくる。アメリカのアジア外交上も、日米関係のプラットフォーム構築が重要になる」との田中理事長のコメントも引用した。
http://world.people.com.cn/n/2013/0112/c1002-20176461.html

 

2. 日本政治

(1)5日付エコノミスト誌(英国)は、「下降する安倍首相」と題する社説を掲載。日本は経済、外交の両面で危機を抱えているにも関わらず、安倍内閣はその両面で懸念されるとした。経済については、安倍内閣には新たな思考を持つ者がおらず、麻生財務相も短期の政策を長期的に財政規律改善へと繋げる道筋を示していない等とした。また、外交上の懸念は更に大きく、新閣僚の多くが、日本を犠牲者と捉える歪んだ歴史観を共有しているほか、安倍首相と下村文科相は、日本を貶める「戦後レジーム」撤廃を目指していると伝えた。
http://www.economist.com/news/leaders/21569030-countrys-dangerously-nationalistic-new-cabinet-last-thing-asia-needs-down-turn-abe

 

(2) 3日付ニューヨーク・タイムズ紙(米国)は、安倍総理が「河野談話」を見直す可能性を示唆したことについて、「歴史を否定しようとする日本の試み」と題する社説を掲載した。記事は、同談話の修正は、その内容が如何なるものであれ、戦時中に日本の残虐行為によって苦しめられたアジア諸国の怒りを買うと指摘。安倍総理が戦中史修正を推し進めようとすれば、北朝鮮を巡る域内での協力関係も損なわれるとした。またその上で、日本は、過去の体裁を繕うよりも経済の改善に集中すべきとした。
http://www.nytimes.com/2013/01/03/opinion/another-attempt-to-deny-japans-history.html?_r=0

 

3. 日本経済

(1)安倍首相が、日本企業を支援するために少なくとも12兆円の財政出動を行うと発表したことを受け、ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥンク紙(スイス)のカーステン・ゲルミス東京特派員は、8日付の記事「日本の新たな経済政策 - 競争ではなく国家」で、欧米諸国は日本の新たな経済・金融政策を注視し、場合によっては批判すべきと指摘した。その理由として、麻生財務相が旧政権の定めた上限に拘らず国債を発行する意向を示したことを挙げ、既に巨額の負債を抱える国は本来とれない策で、数年後に日本が金融危機を引き起こす可能性を指摘する経済学者もいるとした。また、日本企業が外国企業を買収する際に資金援助を行うとの政策についても、日本が自国の有利になるようにグローバル市場経済のルールを変更しようとした場合には、欧州の政治家、企業ははっきりと反論すべきと指摘した。
http://www.nzz.ch/aktuell/wirtschaft/reflexe/staatgegen-wettbewerb-1.17926586

 

4. 震災関連

(1)ニューヨーク・タイムズ紙(米国)のタブチ・ヒロコ東京特派員は、8日付の記事「ひどく遅い除染作業」の中で、福島原発事故に伴う除染作業は、大抵の場合、建物に放水し、草を刈り、葉や土をビニール袋に詰めるという原始的な方法でいい加減に行われており、専門家が効果的と指摘した放射性セシウムの除染方法は採用されていないと報じた。1兆円規模の除染作業の大半は、政治的なコネによって、放射能除染の専門知識に乏しい国内大手の建設業者数社に委託されたとし、除染の請負先と費用調達、中央政府と地方自治体のどちらが除染作業を所管するかの問題を巡って、除染作業が大幅に遅れてきた点も指摘した。
http://www.nytimes.com/2013/01/08/business/japans-cleanup-after-a-nuclear-accident-is-denounced.html?pagewanted=all

 

<関連リンク>
外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/sekai/index.html

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