注目の日本報道

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注目すべき海外メディアの日本報道(2013年1月7日)

投稿日 : 2013年01月07日

1. 国際関係

(1)フィナンシャル・タイムズ紙(英国)のデイビッド・ピリング・アジア編集長(元東京支局長)は、2012年12月20日付の「新しいアジアの指導者たちが先祖伝来の敵対意識を蒸し返す」で、2011年から2012年にかけて北東アジアの4か国で新しい指導者が誕生したが、その4名はアジア外交の足元に転がる「未解決の歴史」という問題を体現する人物だと述べ、彼らの祖父や父親がいずれも日本の植民地支配などのこの地域の歴史と深く結びついていることを紹介。南北関係、日韓関係、日中関係の3つには特に注視する必要があると述べた上で、日中関係は歴史に由来する敵対意識によって緊張がさらにエスカレートする危険を孕んでおり、「近年、北東アジアがこれほど恐ろしく見えたことはない」と結んだ。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/dd4f6fba-486d-11e2-a6b3-00144feab49a.html#axzz2HLROK1Rj

 

(2)ニューヨーク・タイムズ紙のマーティン・ファクラー東京支局長は、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙(米国)掲載の「米国の計画は同盟国同士の不安定な関係により複雑なものとなる」(22日付)で、アジアにおける中国の影響力が拡大する中、米国は日本と韓国という二つの同盟国で保守親米の主導者が誕生することになったことを歓迎しているだろうが、保守政権誕生の副作用として、国家のプライドが掛かっている現在の日韓両国間の感情的なわだかまりは緩和の兆しが見られず、米国にとっては引き続き頭痛の種となると伝えた。

 

2. 日本経済

(1)麻生太郎・元総理の財務大臣・副総理就任決定を受けて、フランクフルター・アルゲマイネ紙(ドイツ)のカーステン・ゲルミス東京特派員は、21日付の記事(「開けっ放しの金庫の男」)で、麻生氏は大胆な金融緩和と積極的な財政出動を持論としており、2009年のG20金融サミットではメルケル独首相を「財政出動の重要性が分かっていない」と公然と批判したが、メルケル氏の解決策が麻生氏のそれよりも大きな成果を上げたことは歴史的に明らかだと指摘。国債危機のリスクから目をそらして積極的な金融政策と大規模な公共投資による景気対策を進めようとしている麻生氏の経済政策を批判した。
http://www.faz.net/frankfurter-allgemeine-zeitung/der-mann-der-offenen-kassen-12000897.html

 

3. 皇室関連

(1)24日付のル・フィガロ紙(フランス)は、皇居で美智子皇后陛下に謁見する機会を得たフランスの作家オリヴィエ・ジェルマン=トマ氏の寄稿「日本を支える美智子皇后陛下」を掲載した。同氏は、宗教的な話題に関して皇后陛下が同氏に語られた内容、例えば小鳥に説教をしたとされるアッシジの聖フランチェスコのエピソードに関する同氏とのやりとりなどを紹介し、「皇后陛下は、魂の気高さを讃えるものであれば、いかなる宗教に対しても心を開いておられる」、「皇后陛下は精神性における寛容さを体現されているかのようだ。この寛容さは、新たな段階に入った日本がナショナリストの勢いに流されることなく、その真の姿を再び見出す上で、道しるべとなるかもしれない」などと論じた。

 

4. その他の記事

(1)『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者であるハーバード大学のエズラ・ヴォーゲル名誉教授は、16日付のワシントン・ポスト紙(米国)で、世界のメディアは日本の90年代を「失われた10年」と呼ぶが、株主中心の欧米企業と異なり日本の企業はその間、従業員や下請け業者、地域社会などにも利益を還元しようとしていたのであり、成長のスピードこそ鈍くなったものの社会は強くなっていた、と指摘。高い労働コストや円高にもかかわらず、日本は今でも輸入と同じぐらい輸出もしており、その活力は外国人が思うより遥かに大きいと主張した。さらに、経済以外でも、治安、サービスや製品の品質などでも日本は米国より優れており、だからこそ日本の人々は自国の将来を不安視しつつもそこに住み続けていると論じ、日本人の心配や世界の金融メディアの悲嘆にもかかわらず、日本は今も素晴らしい場所だ、と結んだ。

 

(2)ウォール・ストリート・ジャーナル紙(米国)のダイスケ・ワカバヤシ記者とミホ・イナダ記者による東京発の記事「かわいくない?日本で愛らしいキャラクターが競い合う」(27日付)は、安倍新総理は<力強い日本を取り戻す>ことを訴えて先の衆院選に勝利したが、自民党はその安倍氏のかわいいキャラクターを作る予定だと伝え、日本の「ゆるキャラブーム」を紹介。「ゆるキャラ」の名付け親であるみうらじゅん氏の「海外にもキャラクターはあるが、こんなにたくさんあるのは日本ならではだ」とのコメントとともに、2012年の「ゆるキャラ・グランプリ」には全国から865ものキャラクターが参加したと伝え、前年の同グランプリで1位となった熊本県の「くまモン」の関連グッズの売り上げは2011年に計25億円に達し、2012年はさらにその倍になる見込みだと伝えた。
http://online.wsj.com/article/SB10001424127887323717004578156610405635572.html

 

(3)外務省主催の外国報道関係者招聘事業(テーマ:「東日本大震災後の日本の復興と原子力安全への取組」)により12月12日から20日まで来日し、衆院選の投票日に福島県に滞在していたビジネスデイ紙(南アフリカ)のヘルモ・プルース記者は、郡山から「自民党の圧勝に対する日本の複雑な反応」(16日付)と題した記事を寄稿。自らが郡山市と南相馬市の投票所で有権者に直接インタビューした結果を踏まえ、年齢によるギャップが明らかになったとし、年長者はかつて半世紀にわたり自分たちが支持した自民党への回帰を志向する一方、若年層(及び若くはないがインタビューした南相馬市長)は過去からの断絶を望んでいたと伝えた。さらに、今後の日本外交については、「原子力安全に関する福島閣僚会議」(@郡山、12月15~17日)に参加した他の外国記者たちは日本が実利を優先して中国・韓国との関係修復に向かうだろうと見ている、と伝えた。なお、今回の招聘事業は外務省(主催者)の委託を受け、FPCJが企画・実施した。
http://www.bdlive.co.za/world/asia/2012/12/16/mixed-reaction-in-japan-to-ldp-landslide

 

<関連リンク>
外務省「世界が報じた日本(海外主要メディアの日本関連報道)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/sekai/index.html

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