実施日 : 2011年03月28日
FPCJ協力による日本関連報道:スペインABC紙
投稿日 : 2013年07月19日
報告:スペインABC紙への取材協力(2011年3月28日)および関連報道
FPCJでは、スペインの新聞ABC紙のDavid Alvarez記者からの依頼を受け、2月27日開催の東京マラソンで3位に入賞した川内優輝氏へのインタビューをアレンジしました。インタビューは3月中に電話と書面で行われ、同紙5月2日 付スポーツ面に特集記事として掲載されました。ABC紙は、スペイン国内で3番目の規模を有する1903年創刊の新聞です。Alvarez記者からは川内氏に対して、東京マラソン当日の気持ち、仕事とマラソンの両立、走ることのきっかけ、日々の練習方法などに関して質問がありました。
・記事本文はこちら(PDF)
・フォーリン・プレスセンターによる記事の仮抄訳は以下の通り。
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2011年5月2日 スペイン ABC紙
ヒーローは学校職員
アマチュアマラソン選手で公務員の川内優輝選手が日本人選手としては2008年以来の好記録で韓国での世界選手権に出場へ
2月28日月曜日、公務員である川内優輝選手が職場の学校に到着すると、同僚たちは拍手で迎え、生徒たちは笑顔で嬉しそうだった。そして報道陣が待ち構えていた。本人は、とても疲れた様子で「あまり眠れませんでした」。川内選手は前日の東京マラソンで3位に入った。日本人一位でゴールテープを切り(記録は2時間8分37秒)、BMWを贈られた。このタイムは日本人が出したものとしては2008年以降、最も速いものだった。この成績により、韓国・大邱市で今夏開催される世界選手権への出場権を手にした。
しかし、この成績を出すことは23歳の市民ランナーの彼にとって容易ではない。なぜなら、彼は、実業団に所属しておらず、陸上競技連盟からの恩恵を受けることのない、「枠の外」で練習しているから。コーチなしで朝2時間練習し、午後から夜にかけて埼玉県職員として8時間働いている。
川内選手は取材に対して次のように語った。「中間地点を過ぎた時点で先頭集団におり、『本当にこの位置でいいのか』、と自問した。30キロ付近で集団から脱落したが、34キロ付近までリラックスして走ることができ、苦しかったけれども、まだ肉体的にも精神的にも.余力があった。そして、その5キロ後に尾田賢典選手とジュイ選手(ケニア)が視界に入った。二人ともペースが落ちてきていると感じた。歯を喰いしばって上り坂で加速した。よろめいて倒れてしまうのでは、というほど全力で走った。沿道からの『負けるな!』の声援も後押しした。『負けたくない』と何度も何度も繰り返した。こうして3位でゴールのテープを切って倒れた。脱水症状で手足の感覚がなく、息をするのが苦しかった。」
報道陣のほかにも、陸上競技連盟の澤木啓祐専務理事らがレースの2日後に面会に訪れ、世界選手権へ万全の態勢で臨むよう要望した。公務員は、メディアと接触するにあたり、制約があり、それに従わなければならない。インタビューを受けるには、所属先である高校の許可が必要だ。普段は弟が手伝ってくれているが、東京マラソンを機にコーチをつけるとの申し出もあった。しかし、川内選手は、一人で走り続けることを望んでいる。「自分で何もかもしないといけないけれど、自由がある。プレッシャーを感じることなく、自分のリズムで進んでいきたい。」陸上競技連盟は、所属先に対し、世界選手権に向けて練習環境が整えられるよう便宜を依頼した。しかし川内選手は、それすら望んでいない。9月4日に大邱で走れるよう、有給休暇の予定を入れている。