実施日 : 2016年02月15日
報告: 「第四のインフラ:ローソンが目指すコンビニの役割」玉塚元一・株式会社ローソン代表取締役社長
投稿日 : 2016年03月14日
全国の総店舗数は5万店以上。今やコンビニは電気・ガス・水道に次ぐ「第四のインフラ」とも言える存在です。FPCJでは、2015年に創業40周年を迎えた株式会社ローソンの玉塚元一代表取締役社長をお招きし、お話を伺いました。同ブリーフィングには、フランス、カザフスタン、韓国、米国などの外国メディアやブラジル、オランダ、マレーシアなどの駐日大使館関係者等が参加しました。
冒頭、玉塚社長は、小売業の観点から、今日の日本の社会環境を読み解く鍵として(1)高齢化、(2)世帯の小規模化、(3)商店数の減少等により、日常の買い物に困っている人の増加、 (4)産年齢人口の減少、(5)訪日外国人の増加の5つを挙げ、コンビニの更なる成長には、地域に住む人たちの変化を迅速に察知し、求められるサービスを提供していくことが肝要であると指摘しました
そのための主な取り組みとして、(1)従来の単なる小売業から製造、流通、販売、商品開発、原材料調達などを統合し、効率良く需給を調整する製造小売業への抜本的改革の推進、(2)現在全食品の売上の2割を占める健康志向の高い商品の更なる開発や、薬局・介護事業者などとの連携を模索する「健康サポート」事業の拡充、そして、(3)地域の美味しい食品を全国に広げる「地産外消」や、プロの生産者と連携して新鮮な野菜を供給するローソンファームの展開などについて説明がありました。
また、労働人口減少に伴う人手不足への対応としては、(1)従業員の定着率の向上、(2)シニア層や外国人などの新たな働き手の取込み、そして(3)労働生産性の劇的な向上を挙げ、今後も競争力を維持するには、従来のシステムや働き方をあらゆる角度から検証し、生産性を上げる努力を惜しんではいけないと指摘しました。海外事業展開については、中国、東南アジアを中心に現地ニーズも踏まえた日本型コンビニの展開を推進するとともに、将来はローソンの発祥地である北米にも事業展開をしたいとの意気込みを語りました。
最後に、玉塚社長は、企業の社会貢献事業(CSR)については、事業そのものが地域社会に貢献する仕組み(CSV)への転換こそが、コンビニが重要な社会インフラとしての役割を果たすヒントになると発言。例として、(1)24時間灯りがともる店舗が地域住民に安心と安全を与える点、(2)災害時にはコンビニが有する物流ルートを駆使していち早く救援物資を被災地に届ける点、(3)省エネルギーの店舗づくりによる電気使用量やCO2排出量の削減、(4)宅配や移動販売サービスの展開などを紹介しました。そして、玉塚氏は、コンビニに対する社会からの期待は今後も高まると予測し、ローソンは手軽で便利(convenient)な店(store)から、その地域に住む人たちにとって無くてはならない(essential)店(store)になるために一層の努力を重ねていくとのメッセージでブリーフィングを締めくくりました。
質疑応答では、高品質で美味しい食品を手軽な価格で提供できる理由や、外国人従業員が日本の接客など店舗運営全般を学べる仕組みの構築、ローソンファーム設立の背景と今後の展望など、多岐にわたる質問が出ました。