実施日 : 2014年06月10日
報告(プレス・ブリーフィング):「日中関係の現状と課題」(2014年6月10日)
投稿日 : 2014年06月13日
FPCJでは、「新日中友好21世紀委員会」のメンバーでいらっしゃる高原明生・東京大学大学院・法学政治学研究科教授をお招きし、「日中関係の現状と課題」をテーマにお話しいただきました。中国、デンマーク、フランス、ドイツ、香港、韓国、シンガポール、スイス、米国、ベトナムのメディア22名を含む36名が参加しました。
まず、高原教授は、政治と安全保障面について、深刻な衝突が起きており、問題解決は容易ではないとしながらも、先日長崎で行われた「新日中友好21世紀委員会」など、関係改善への努力が見られると説明。同委員会でも、国民感情の問題について繰り返し言及されたとし、環境、省エネ、科学技術、文化、青少年の交流を一層盛んにすることが両国の関係を良好にする手段として有効であるということで意見が一致したと述べました。また、重要なポイントとして、昨年行われた世論調査によると、両国民の90%以上は、相手国にいい印象を持っていないが、70%以上が二国間関係は重要と考えており、双方が日中関係は重要だと感じていることを挙げました。
また、中国政府は、周辺国に対し非常に友好的な外交精神を語るが、行動は攻撃的というギャップがあり、日中関係だけでなく、東南アジアとの問題においても、紛争があった場合、平和的手段がとられなければならないと言っているものの、実際の行動には、かなりのズレが起きていると指摘。
そのズレの背景について、高原教授は、以下三点の仮説を披露しました。
1.中国政府内の部門間の協調がとれていないことが、大きな問題として存在している。
2.中国が急速に発展していることもあり、国民の考え方が、自己中心的な大国症候群に陥っており、自国の言葉と行動、あるいは自己認識と他者の中国認識とのズレを強く意識していない。
3.中国の将来の方向を決めるような重要な問題について、共産党内で、深刻な意見の不一致が表面化しており、異なる政策目標が同時に追及されている。
最後に、今後の日中関係改善には、両国が平和的手段で解決し、戦争は避けなければならないという意識の共有が必要であると指摘。尖閣諸島および靖国問題などについては、両国の専門家による日中歴史共同研究を再開し、討議の対象にすればよいのではとの提案で締めくくりました。
記者からは、朝鮮半島情勢の安定化に対する米国のプレゼンスの重要性、尖閣周辺での事故のリスク、集団的自衛権に対する中国の考えと日中関係への影響、安倍政権の対中外交政策に対する評価などについて質問が出ました。