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実施日 : 2022年12月02日

開催報告:2022年度第2回FPCJ国際ウェビナー

投稿日 : 2022年12月16日

公益財団法人フォーリン・プレスセンターは、2022122日(金)、「2050年ネットゼロと持続可能な成長のためのGXとは?」をテーマにウェビナーを開催しました(後援:外務省、経団連)。

 

グリーン・エネルギーへの転換による社会構造の変革などで、温室効果ガスの排出削減と経済成長を両立させるGX(グリーン・トランスフォーメーション)の重要性が指摘されています。 本ウェビナーでは、この世界共通の課題に日本はどのように取り組み、それを世界はどのように評価し、また何を期待しているのか。FPCJは、日本政府、国際機関、経済界、外国メディアからそれぞれ第一人者をお招きし、国際的な視点でネットゼロに向けた日本の取り組みについて議論が行われました。

 

ウェビナーには大学、自治体、企業、在京大使館関係者、日本の在外公館に加え、外国のメディア関係者など国内外から約90名が参加しました。

 

※開催案内、登壇者略歴はこちらからご覧いただけます。

 

 

 

議論の概要(12月28日更新↓↓↓)


FPCJ兒玉和夫理事長(司会者)冒頭発言 

冒頭、2022年11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された「COP27」の首脳級会議におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長の演説、(温室効果ガスの排出量が増加し続ける現状への強い危機感を示した)を紹介しました。
このウェビナーでは、2050年にネットゼロを達成するために日本政府、企業、そして国民に求められる行動とは何か、またそれを可能とする GXの中身は何かといった点に焦点を絞って議論を進めていくと説明しました。

 

<第1部:各パネリストからのプレゼンテーション>

四方敬之・内閣広報官は、岸田政権の脱炭素化社会実現のためのGXや持続可能な成長に向けた取組を説明しました。政府は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標を掲げており、日本として2030年度には2013年度比で46%のCO2削減を行なうほか、50%削減に挑戦し、カーボンニュートラルの達成のために既存の原子力発電所の活用、化石火力による発電をアンモニア、水素などのゼロエミッション火力に転換していくと説明しました。さらに、東南アジア諸国では、2050年になっても依然として化石燃料が重要な電源となる見込みであることから、エネルギートランジション及び脱炭素化の支援を各国のポテンシャルに配慮しながら提供すると述べました。



長谷川雅巳・経団連環境エネルギー本部長は、2022年5月に経団連が取りまとめた「GXに向けて」を紹介し、2050年のカーボンニュートラルに向けて、人類の長い化石燃料との付き合いを変え、革新的な技術実装をさせていきながら経済成長につなげていく考えを示しました。具体的な提言の一つ目の柱がゼロエミッション電源の確保、二つ目は原子力の活用であるとし、これらの取り組みを進めるためには、イノベーションとトランジションが不可欠であり、これらを実現するための投資を促進するパッケージが必要だと説明しました。カーボンプライシングもGXを目指す上で避けて通ることのできない重要課題の一つであることから、成長に資する仕組みを導入するべきであり、経済界もネットゼロに向け最大限努力していきたいと述べました。

 

末吉竹二郎・国連環境計画・金融イニシアティブ特別顧問は、GXは、20世紀型経済モデルを捨てて、21世紀が必要とする経済モデルを作る「サバイバルゲーム」であり、乗り遅れると間違いなく敗者になると指摘しました。そして先にゲームチェンジャーにならないと第二の敗戦になると訴えました。さらに日本は、2050年に依然としてエネルギーに原子力と火力を使用する考えであり、脱炭素化できない目標となっていることについて、遅れた自然エネルギーの転換により、メイド・イン・ジャパンはグリーンではなくてブラックだとみなされ、それゆえサプライチェーンやバリューチェーンに入れず、グリーンコンシューマーや新しい価値観を持った若者世代に忌避されるのでないかと指摘しました。

 

稲垣佳奈・ファイナンシャルタイムズ(FT)紙東京支局長は、日本はバッテリー、水素、CCSなどの分野において高い技術力を持っていることから、エネルギー安全保障分野では期待でき、GXについては現実的なアプローチを取っていくだろうと述べました。しかし、たとえ性能のよい技術を持っていくとしても、アジア諸国への石炭火力支援は後ろ向きに見られると指摘しました。また、トヨタ自動車を例に挙げ、同社はハイブリッド車のパイオニアであることから、次世代のクリーンテクノロジー分野でもパイオニアになってもらいたいと世界は思っているとし、イノベーションをどのように進めるのか、そしてどのようにシフトに備えるのか、前向きなメッセージを出した方がよいのではないかと述べました。

 

ミシェル・リー・ワシントンポスト紙東京支局長は、10年を超える米国政治を取材した立場からGX政策について発言しました。米国は、気候問題に対して真剣に取り組んでいるが、その戦略に関する世論は分断されていると説明しました。2018年及び今年の中間選挙の取材で興味深かったのは、気候変動や環境問題が若い人たちにとって最も重要な争点であったことだと述べました。そして国のリーダーになる人にはこの問題に真剣に取り組んでほしいと注文を付けました。

 

<ファティ・ビロル国際エネルギー機関(IEA)事務局長へのインタビューセッション(質問者:兒玉FPCJ理事長)>

Q1.11月6日から20日にエジプト・シャルム・エル・シェイクで開催されたCOP27に対するビロル事務局長の評価をお聞かせください。

A1 .会議で一番感銘したのは、気候災害等による「損失と被害(Loss &Damage)」を救済する基金の創設で合意した点です。アフリカで開催されたCOPであったので、先進国がこの基金を立ち上げ、資金協力を約束することはとても重要でした。
もう一つは、バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が会談し、気候変動に関して協力を再開することで合意したことです。

 

Q2. 日本政府、企業そして国民に一番訴えたいことをお聞かせください。
A2. 日本のエネルギー政策は三つの点を念頭におかなくてはいけません。第一にエネルギー安全保障、第二に気候変動、そして第三に日本経済です。その点から考えると日本の GX 戦略は非常にタイムリーだと考えます。また、日本は原子力のノウハウを非常に潤沢に持っているので、原発を再稼働するべきだと考えます。

 

Q3. 欧米と中国でEV電気自動車へシフトが起きています。日本ではEVに一本化するのではなく、FCVや、カーボンニュートラルな解決策を追求すべきという見方がありますがいかがでしょうか。
A3. 電気自動車の市場規模は非常に速いペースで成長しております。現在世界で販売された自動車の15%が電気自動車で、2030年には、中国、米国、欧州において販売される2台のうち1台が電気自動車になります。電気自動車に加えて低公害車、水素自動車のオプションもありますが、電気自動車の普及率の方が水素自動車より早いように見えます。

 

<第2部:パネルディスカッション(自由討論)>

四方氏は、我が国はもっとアグレッシブに、より積極的に日本のクリーンエネルギー技術をアジア諸国に導入していきたいと考えており、米国政府と密接に協力していると説明しました。


長谷川氏は、我々は新しい技術を確立して脱炭素化に取り組もうとしており、それによって今人類が享受している暮らしや文化というものを守っていくのが重要だと考えていると述べました。

 

末吉氏は、ビジネスの競争は極めて冷酷であるから、2050年のことばかり語り、産業構造を変えないと、この5年10年の間にかなり勝負がついてしまうとの強い危惧を示し、産業構造を変えないと21世紀の競争に耐えられないと指摘しました。

 

稲垣氏は、原発の役割や、ネットゼロを達成するかという点を今議論していることが心配だと述べました。この10年間日本では政府であれ、一般であれ、原発業界であれ、原発の将来に関してしっかりと議論がなかったことは「驚き」だと指摘しました。

 

リー氏は、米国が他国と違う点は、政治力が業界において大きな力を持っていることだと説明しました。米国の地球温暖化に対する政治的な関心はトランプ政権時から下がり続けており、政治に問題があると指摘しました。

 

<質疑応答・閉会セッション>

ウェビナーの最後に一般参加者からの質問を受けました。日本は来年のG7議長国としてGXを推進するために、再生可能エネルギーの導入にあたり公平な条件に関する議論をどのように起こしていくのか、「2050年に70%再エネ」は達成可能かなどの質問が挙げられました。

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