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開催報告:2022年度第1回FPCJ国際ウェビナー

投稿日 : 2022年07月08日

公益財団法人フォーリン・プレスセンターは、2022624日(金)、「さきがけ国家」日本は世界のモデルとなり得るか?」をテーマにウェビナーを開催しました(共催:OECD(経済協力開発機構)東京センター)。

 

本ウェビナーでは、「さきがけ国家」とも言われ、世界に先駆けて高齢化や経済の停滞等の問題に対応してきた日本の取り組みが諸外国の教訓となり得るかについて、OECD事務次長による基調講演のあと、国際舞台で活躍を続ける経験豊かなジャーナリスト等による議論が行われました。

 

ウェビナーには大学、自治体、企業、在京大使館関係者、日本の在外公館に加え、日本や外国のメディア関係者など国内外から約120名が参加しました。

 

※開催案内、登壇者略歴はこちらからご覧いただけます。

 



 

 

議論の概要(7月15日更新↓↓↓)

FPCJ兒玉和夫理事長(司会者)冒頭発言 

令和に入り世界の日本を見る目が変わりつつあるとし、昭和には「異質の国」、平成では「長期停滞の国」と日本を報じてきた世界のメディアは、令和に入ると「日本が直面している課題の多くは世界共通のものであり、日本の成功も失敗も諸外国は教訓とすべき」という新しい見方を表明し始めたと指摘。東京で活躍している経験豊かなジャーナリストの皆さんと等身大の日本を見つめ直すことにより、「令和の日本論」を浮き彫りにしたいと、ウェビナー開催の背景と趣旨を説明しました。

 

基調講演 武内良樹氏(OECD事務次長)

長年日本に関する経済審査(分析と提言)を行っている国際機関の立場から、日本の金融やインフラ投資関連政策におけるリーダーシップ、新型コロナウイルスへの対応、大災害からの復興等を評価する一方、エネルギー政策、家庭や企業・公的機関のデジタル化の遅れを指摘するなど、様々な課題に立ち向かってきた日本のこれまでの国際社会への貢献と残されている課題が披露されました。

 

<第一セッション:「異質の国」から「さきがけ国家」へ>

 

レオ・ルイス氏(「フィナンシャル・タイムズ」紙 アジアビジネスエディター)は、中国に赴任していた経験に基づいて、中国が以前から日本を「さきがけ国家」として注目してきたと指摘。日本企業は少子高齢化による労働力の不足、市場の縮小に直面し、グローバル化のスピードが遅く、内向きであることなど多くの課題を抱えているが、ホンダのように世界で成功している企業を見るとワクワクすると述べました。

 

イザベル・レイノルズ氏(ブルームバーク社 政治リポーター)は、自身が注目している少子高齢化、移民の受入れ、女性の活躍の3点について、日本と英国及び米国を比較しながら説明しました。少子高齢化について、日本は欧米と異なり道徳的、環境的な理由で子を持つか持たないかを決めるのではなく、経済的負担についての議論が多いと指摘。移民の受入れはその数が英国と比較して非常に少なく、移民が来日しても日本では様々な面で障壁が高いと述べました。また、日本の女性について、介護、育児、仕事とプレッシャーが多いとし、離職した女性が再び働ける環境整備が必要だと論じました。

 

ノア・スナイダー 氏(「エコノミスト」紙 東京支局長)は、日本は人口動態の変化や低出生率など先端的な課題に直面し取り組んできたとし、教訓として世界に示すことができることとして少子化問題への地方の取り組みについて紹介しました。全国にあてはまる単一の解決モデルがあるわけではなく、地方各地のそれぞれの事情を踏まえた対策やリーダーの意思決定、それを可能にする地方分権が有効であることは、近隣諸国に示すべき教訓だと指摘。あまり知られていないが、日本の出生率はアジアの先進国の中で最も高くなっているとし、背景として住宅事情を解決するための都市計画における区画整理を挙げました。また、日本政府が取り組むべき最も重要な課題は労働市場改革であると指摘しました。

 

木村伊量氏(国際医療福祉大学評議員・同大学院特任教授)は、基調講演や他のパネリストの発言で述べられた様々な課題への日本の取り組みを評価しつつも、これまで長い間、向き合ってこなかった課題として、債務やエネルギー自給率などに触れつつ、長期的な視点に立った政策がないことが問題であると述べました。

 

<第二セッション:「さきがけ国家」における民主政治の課題>

 

木村氏は、世界と比べても閉塞感を強く抱いている日本の若者の状況を説明しました。現状肯定派の若者が増えている一方で、彼らの中には将来への漠然とした不安が広がっていると指摘。人口減少傾向が続く中で、シルバーデモクラシーの弊害にも留意しつつ、閉塞状態の責任を政治にだけ押し付けるのでなく、自らも外の世界に飛び出して、チャレンジする気持ちを持ち続けることが重要だと述べました。

 

レイノルズ記者は、日本の若者は、世界はどうあるべきかといった強い意見をあまり持っておらず、理想など持たずに現状を受け入れた方がいいと思っていると指摘しました。また、政治家は様々な公約を掲げるものの、空約束が多いとし、日本人はもっと大胆になれるのではないかと思うが、「絶対に変えたい」「絶対に変化を起こす」という強い意志や自信を持てず、躊躇する気持ちが強いのではないかと述べました。

 

スナイダー記者は、特派員としてロシアから日本に来た時に感じた「日本の若者は投票しても何も変わらないと考えている」との既視感を紹介しつつ、最大の問題は、政党間での政策競争がなく、有権者にとっては選択肢がないことだと述べました。また、彼らは政治が世の中を変えるとは思わないので、自らの世界観は持ちながらも、それを実現するために政治の世界に飛び込もうとも思わないとの見方を示しました。

 

ルイス記者は、日本は労働市場での流動性が足りないと言われているが、企業も個人も変化を求めたがらない。また企業の CEOは、ステークホルダーを均等に考えて経営しているというものの、本当に均等を重要視しているのなら、今とは違う形になっていたのではないかと説明しました。さらに、CEOが従業員のことを考えているのならば、長時間労働をさせるのはいかがなものか。企業は言っていることとやっていることに乖離があると指摘しました。そして、ガバナンスを改善するには、目に見える効果を出すことが必要だと述べました。

 

 

<質疑応答・閉会セッション>

ASEANのメンバーとしてやポストSDGsの日本の姿や役割に関するもの、民主主義と多様性の発展・拡大に関する質問などが挙げられました。

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