ランニング人気の新たな側面:ファッション、旅行、コミュニティづくりの場へ(2012年5月1日)
投稿日 : 2012年05月01日
【ウォッチ・ジャパン・なう vol.24/FPCJ】
2012年5月1日
ランニング人気の新たな側面:ファッション、旅行、コミュニティづくりの場へ
今年2月に開催された東京マラソン2012は、オリンピック出場を狙う埼玉県庁職員の「市民ランナー」川内優輝選手の出場や、被災地の福島県南相馬市の市長で、駅伝経験もある桜井勝延氏が参加し、「諦めない福島」をアピールするなど、例年以上に注目を集めました。東京マラソンは、雑誌やテレビ番組で頻繁に特集が組まれており、今年は、「28万人以上が応募、抽選の倍率は約9.6倍」「インターネットでエントリーしようにも、コンサートのチケット争奪戦のようにすぐに定員に。走りたいのに走れない人があちこちで生まれている」(※1)状況だったとか。参加者が仮装して走るなど、それぞれが思い思いのスタイルで楽しんで走る姿をテレビで目にした人もいることでしょう。
笹川スポーツ財団の調査(※2)によると、2010年時点における日本成人のジョギング・ランニング人口は推計883万人。東京マラソン開催前(2006年)の605万人から、278万人も増加しています。特に注目すべきは、2007年に市民参加型の東京マラソンが始まったのをきっかけに、これまでの傾向と異なるランニング人気の高さが目立っています。従来は、いつでもどこでもお金をかけずに手軽にできることや、メタボリック対策や健康のために走るといったイメージでした。しかし近年は、それにプラスして、タイムや距離を気にせずに、ランニングファッションを楽しむため、仲間を作るため、美しさを保つためなど目的が多様化し、WEBや雑誌、クチコミ、テレビ等、様々な媒体からランニング情報を得られるようになりました。ここ数年注目を集めているのは、人気女性タレントやアイドル達が独自のコーディネートで「おしゃれに」走っている姿であり、「美ジョガー」(おしゃれなウエアを着てスタイリッシュに走る女性のこと、2011年の流行語大賞候補語)という造語も生まれました。
女性ランナーや市民ランナーの増加に伴い、各スポーツ用品メーカーは、ファッション性と機能性を兼ね備えたランニングシューズやウエアなどの商品を売り出すようになり、国内消費が低迷する中、ランニング関連市場は数少ない成長分野として期待が高まっています。矢野経済研究所(※3)によると、ランニングシューズは「中・上級者向けモデルや高価格モデルが人気」で、2010年の国内ランニングシューズ市場(出荷金額ベース)は、前年比8.4%増の約465億円に拡大しました。さらに女性ランナーのための汗にも強い日焼け止めや化粧品、ランニングアクセサリーも販売されています。
また、全国各地で経済波及効果を狙ったマラソンイベントの開催も増えています。昨年は熊本市や神戸市などが初めて大規模な市民参加型マラソンを開催しました。さらに、企業・団体や携帯電話会社は、ランニング初心者向けにランニング教室やセミナー、各種イベントを企画しており、共通の趣味を持つランニング仲間「ラン友」のコミュニティづくりをサポートしています。都市部には、ランニング拠点として「ランナーズ・ステーション」が設置され、通勤前や会社帰りのビジネスマンらのランニングに利用されています。周辺のホテルや旅行会社からは、旅行(観光)とランニングを組み合わせた「旅ラン」ツアーや、独身の男女がランニングしながら婚活する企画も登場しています。
このように、ファッションや旅行関係など、異分野の企業が参入したことにより、ランニング人気は、健康やダイエットの分野にとどまらない、より広範なビジネスへと発展しました。景気の先行きを見通せない中、スポーツにお金をかけずに楽しむ人も多数いると思いますが、ランニングは、幅広い消費者層を取り込んで、今後も人気を維持する可能性がありそうです。
出典
(※1)2012年 2月23日付 朝日新聞より
(※2)2010年10月29日付 笹川スポーツ財団報道発表より
(※3)2011年 9月16日付 株式会社矢野経済研究所「スポーツシューズ市場に関する調査結果2011」より
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