原子力発電所再稼働を巡る動き(2012年2月21日)
投稿日 : 2012年02月21日
【ウォッチ・ジャパン・なう vol.20/FPCJ】
2012年2月21日
原子力発電所再稼働を巡る動き
日本の原子力発電は、現在困難な状況下におかれています。全国にある54基のうち、定期検査などで動いていないものを除くと、現在稼働している原発は2基のみ(2月21日時点)。この2基も順次定期検査に入る予定で、4月末には日本の全ての原発が停止状態となります。日本の総発電量に対する原発の割合は、2010年3月末には29.3%でしたが、2011年3月11日の東日本大震災の影響もあり、同年12月には7.3%に落ちています。
この大震災により福島第一原子力発電所で事故が発生、原子力発電の安全性への信頼が大きく揺らぎました。そのため、2011年7月に、政府は、電気事業者に、建設中のものも含めすべての既設の発電用原子炉施設を対象とするストレステスト(*)を実施するよう求めました。このテストにパスした稼働していない原子炉施設については、地元自治体の同意を得た後、それを踏まえての総理と関係閣僚による政治判断により、再稼働を許可するとしました。更に政府は、「既存の発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価」についての原子力安全・保安院(NISA)のアプローチ及び事業者の評価結果の審査に対するNISAのアプローチのレビューを、国際原子力機関(IAEA)に要請しました。
(*)ストレステストとは、原子力発電所が想定を超える地震や津波に襲われた場合、安全上重要な機器や施設が損傷し、炉心損傷などの深刻な事故に至るまでにどのくらい余裕があるのかを評価するものです。原発の再稼働の判断に使う1次評価と、稼働の継続判断に使う2次評価があります。
日本政府の要請を受け1月23日から31日にかけて来日したIAEAのレビューミッションは、実際に関西電力の大飯原発(福井県)を視察する等の確認作業を行い、31日、NISAによるストレステストの審査手法を妥当とする報告書をNISAに提出しました。IAEAは同報告書の中で、「NISAは、・・・総合安全評価を受ける原子力施設近隣の利害関係者との会合を行うべきである」等7項目の勧告と4項目の助言を行いました。
報告書の提出後、FPCJで記者会見した、IAEAレビューチームのジェームズ・ライオンズ団長は、「全体的な印象として、NISAが行なっている原発の総合安全評価に関するプロセスは、IAEAの安全規格に全体的に即したものであり、欧州のストレステストを含めた国際的な原子力の安全の活動内容に即したものだと確認した」と述べました。
また、この報告書を受け記者会見した細野豪志 原子力発電所事故収束・再発防止担当大臣は、「失墜した我が国の原子力規制や評価について国際組織から客観的なアドバイスをいただいた」と述べました。
保安院のストレステスト審査手法は、国際機関のお墨付きが得られたことになりましたが、今後、原発の再稼働が実現できるかは、地元自治体の同意が得られるか否かによることとなります。
また、1月31日、政府は原子力組織制度改革法案を閣議決定しました。原子力行政の推進と規制を同じ経済産業省がコントロールしていることが問題視されていることを踏まえ、細野大臣は、関連の記者会見の中で、環境省の外局として4月1日に発足を目指す「原子力規制庁」について、①(経済産業省等の)原子力推進サイドから明確に独立した組織とすること、②(新たに創設される)原子力安全調査委員会が第三者的見地から規制の独立性を監視すること、③世界最高水準の規制を導入し、発電用原子炉の運転期間を原則40年とすることを発表。原子力規制庁長官については、広く官民を問わずすぐれた人材を求めていくことなどを発表しました。野田総理も、「如何なる圧力の影響も受けてはならない」と、同庁を独立性の高い組織にする意向を示しています。
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