「大阪都」誕生? 問われる日本の地方自治の枠組み(2012年1月10日)
投稿日 : 2012年01月10日
【ウォッチ・ジャパン・なう vol.17/FPCJ】
2012年1月10日
「大阪都」誕生? 問われる日本の地方自治の枠組み
東京に次ぐ日本第二の都市・大阪で昨年11月に行われた大阪府知事と大阪市長のダブル選挙で、これまでの行政の枠組みを覆す「大阪都」を作ると訴えた松井一郎氏と橋下徹氏(前府知事)が圧勝しました。従来の地方自治の枠組みを再編して行政を効率化し、地域を活性化させようとする動きが、全国に広がっています。
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大阪では、「大阪府」の中に大阪、堺という2つの政令指定都市が存在しています。政令市制度とは、一定の要件を満たす大都市が都道府県から権限を移譲され都市計画などを独自に推進できる制度です。しかし、役割分担の不明確さから、都道府県と政令市の役割が重複する「二重行政」が発生していることが問題視されてきました。
今回のダブル選は、この問題の解消を目指し、橋下氏が任期を残して知事を辞職し、仕掛けたものでした。橋下氏らは、府と政令市が別々に都市開発や社会基盤の整備などを行っていることが行政の無駄と大阪の停滞を招いていると主張。府と大阪、堺の両政令市を解体し、広域行政を一元的に担う「大阪都」と身近な住民サービスを行う基礎自治体(「特別自治区」)とに再編することを訴えました。都市基盤・産業基盤の整備などを「大阪都」に一本化させることで大阪の経済競争力を強化し、「東の東京都、西の大阪都、2つのエンジンで日本を引っ張って行く」との主張です。
橋下氏らの圧勝に終わった選挙の結果を受け、大阪では既に「府市統合本部」が発足しました。「大阪都」の実現には国会での地方自治法の改正など越えるべきハードルも大きいのが現実ですが、明治以来の地方自治の枠組みが変わるかどうか、今後の展開に注目が集まっています。
地方自治の枠組みを変えて行こうという動きは、全国で広がっています。一つは、大阪と同じように都道府県と政令市の二重行政の解消を目指すもので、愛知県と名古屋市が合体して域内総生産(GDP)40兆円の「中京都」を作り、「日本の顔として世界と闘える基盤を築き上げる」との構想、新潟県と新潟市の合により行政の効率化や県全域での自治体の権限の強化を目指す「新潟州」構想などがあります。もう一つは、既存の都道府県の枠組みを壊して全国をいくつかの道州に再編し、現在国が担っている権限や財源を「道」や「州」に大幅に委譲するという「道州制」構想です。国と地方のあり方を変えるのがねらいで、政府もその導入に向けた検討を続けています。熊本県などは早くも「熊本が米国のワシントン、福岡がニューヨークのような形での役割分担が望ましい」と「熊本市を州都とした九州」構想を打ち出しています。
今回の大阪での選挙結果は、新しい地方自治や国のあり方を巡る議論に大きな影響を与えるものと見られています。
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