地震に強い建築・街づくりを目指して ~建設会社の耐震研究 最先端に迫る!
投稿日 : 2015年03月11日
東日本大震災の教訓を生かせ
~ 地震に強い建築・街づくりを目指して 建設会社の耐震研究最先端に迫る! ~
記事:FPCJインターン 小林 千尋/ 廣瀬 花
2011年の東日本大震災から4年。震災の教訓を今後の防災に生かすための取り組みが様々な分野で進むなか、清水建設株式会社(宮本洋一社長)は、震災の教訓を地震対策技術の研究にいち早く反映させるため、同社の技術研究所(東京都江東区)に「最先端地震防災研究棟」を完成させ、本格運用を開始した。業界最高クラスの性能を誇る2台の振動台を備え、最先端の設備による実験や、実験データによるリスク分析などを通じて、ハード・ソフト両面の技術開発に力を入れるとしている。
【最先端地震防災研究所に備えられた2台の振動台E-Beetle(写真手前)と E-Spider(写真奥)】
同社によると、日本の現在の建築基準は世界的にも厳しいが、建築基準法が大きく改正された1981年以前の建物は、耐震や補強が不十分。1995年の阪神・淡路大震災など、地震で被害を受けた建物の多くはこのケースにあたるという。同社は1970年代から地震対策技術の研究を続けているが、「想定を超えた」東日本大震災の発生を受けて、2013年6月から、巨大地震などあらゆる地震を想定したより高度な実験に対応できる新研究棟の建築を開始した。
今回完成した新しい研究棟に導入された振動台は、E-Beetle(大型振動台、7m×7m)とE-Spider(大振幅振動台、4m×4m)*。E-Beetleは、過去に世界中で観測されたすべての地震以上の「加速度」や「変位」、また直下型や海溝型などあらゆるタイプの地震を再現できる。建物が崩れるメカニズムや、天井など内外装・設備の耐震性能を知るのに役立つという。一方、E-Spiderは、長周期・大振幅の揺れを3次元(水平・上下・回転)で再現できるのが特徴。超高層建築の揺れ方や、室内の家具の動きなどを把握できる。また、振動台にキャビンを設置して人が搭乗することで、地震が人の心理・行動に与える影響も調べることができる。実験のデータ等は今後、具体的な建築に取り入れられる予定という。
*’Beetle’はカブトムシのような力強さ、’Spider’はクモのような形状と動きのイメージ。’E’は、Earthquake(地震), Examination(実験), Enhance(質・能力を高める), Excellent(優秀な)の頭文字。
【E-Beetle(大型振動台)の実験の様子】
3月4日、海外メディア向けに新研究棟が公開され、2つの振動台を用いた実験が行われた。E-Beetleの実験では、高さ150m、約40階建ての超高層建造物を縮小した模型(3.8m、13t)を用い、東日本大震災時に仙台市宮城野区で観測された揺れ(震度6弱)を再現。模型の上部ほど大きくしなる様子が確認できた(写真上)。また、E-Spiderを使った地震体験では、①震度3と4(地面)、②震度6強(非免震構造の5階建てマンション)、③同じく震度6強(免震構造の5階建てマンション)、④東日本大震災時の東京の超高層ビル(24階)-の4タイプの揺れを再現。キャビン内のスクリーンには、揺れと連動して家具などが動いたり倒れたりする様子が映し出された(写真下)。②③の非免震構造と免震構造の比較では阪神・淡路大震災の突き上げるような揺れ(安全性を考慮し振幅は50%減)、④では超高層ビル特有の大きく長い横揺れ(長周期の揺れ)が再現された。同社は、こうした地震体験を提供することで、顧客の防災啓発にも貢献したいとしている。
【E-Spider(大振幅振動台)の地震体験の様子】
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<インターン編集後記>
小林 千尋
大振幅振動台E-Spiderで実際に地震体験をし、地震の恐ろしさを改めて感じると共に、免震建築の素晴らしさを体感しました。震度6で非免震建物の場合は、座っていても何かにつかまっていないと体のバランスが取れませんでしたが、免震建物の場合だと横揺れがかなり軽減され体感の違いは一目瞭然でした。CGで映し出された居室の家具も非免震では本棚が倒れてきたり花瓶が落ちたりとても危険な状態でしたが、免震建物の場合電燈が揺れる程度だったので、内装においても免震建物は効果が見受けられました。次いつ来るか分からない大きな地震に備えるためにも、今回の二つの新しい振動台がこれからの耐震建築に大きな役割を果たしてくれることを期待しています。
廣瀬 花
地震体験は、未だ大きな地震の揺れを経験したことのない私にとってとても興味深いものとなりました。特に、同じ強さの揺れを非免震構造と免震構造とで比較する実験では、免震構造を採用することで実際に受ける揺れの影響は大幅に減少されるのだということを身をもって知り、免震技術の必要性を強く感じました。ただ、会見で、現在都内における30%の建物は非免震構造だということを聞き、少し不安を感じました。海外メディアから上がっていた「地震の時、東京で最も安全な場所は?」という質問に対して、「東京の外に行きたい」という清水建設の方の率直な回答もありましたが、既存の建物に免震装備を施していく取り組みも行われるとのことだったので、今後の活動に期待したいと思いました。