被爆の記憶をWebコミュニティを通して世界に伝える(2011年8月25日)
投稿日 : 2011年08月25日
【ウォッチ・ジャパン・なう vol.3/FPCJ】
2011年8月25日
被爆の記憶をWebコミュニティを通して世界に伝える:
「ナガサキ・アーカイブ」「ヒロシマ・アーカイブ」
66回目の終戦を迎えた今年の8月は、東日本大震災や福島原発事故の影響で、いつもとは違う、特別な夏になりました。66年前、広島・長崎に壊滅的惨禍をもたらした原子爆弾は、街を一瞬で廃墟にし、かつ多くの犠牲者を出し、その後も放射線は人々を苦しめてきました。今年3月の原発事故による放射線への不安、また震災から復興していく姿は、先の大戦からの日本の復興と少なからず重なります。
原爆の日、広島と長崎は祈りに包まれた一日となりました。被爆から65年以上が経過し、被爆者数は減少の一途をたどり、現存する被爆者の平均年齢は75歳を超えました。被爆体験が風化しつつある中、首都大学東京大学院システムデザイン研究科の渡邉英徳准教授をはじめとする制作委員会は、「歴史の証言を残す必要がある」として、デジタル地球儀「Google Earth」やツイッターなど、最新のデジタル技術を活用し、原爆を世界に、そして後世に伝えるプロジェクトとして、2010年7月23日に「ナガサキ・アーカイブ」をウェブ上で立ち上げました。そして今年7月10日、「ヒロシマ・アーカイブ」を公開しました。
広島市内の高校生や専門学校生ら約30人が中心となり集めた証言や資料、平和記念資料館などから提供された資料等をあわせ、また、世界中から寄せられた核廃絶に向けたツイート等と組み合わせてウェブサイトは作られています。アーカイブの公開後、ヒロシマ・アーカイブは75000ページビュー、ナガサキ・アーカイブは450000ページビューを超えており、大きな反響がありました。このプロジェクトには、原爆を直接体験していない、あるいは原爆とは全く関係ない人たちが参加しており、広島版は公開前から「若者が原爆の記憶を引き継ぎ、世界に発信する新しい試み」(4月28日付朝日新聞電子版)として紹介されてきました。
ヒロシマ・アーカイブ」は、画面をクリックすると、被爆者一人一人の写真と体験談が立体地図上に表示され、実際に被爆した場所と関連付けて閲覧することができます。また、被爆直後の広島から現在に至る景色の写真を重ね合わせ、被爆当時の様子と復興を遂げた街の変遷を追うことも可能となっています。
アーカイブズは、広島・長崎で実際にこんなことがあった、これだけの事実がそこにあるということを客観的に伝えています。アーカイブズの構築は、継続的にデータを収集しながら、長期にわたり進めていくものです。生き証人が語る被爆体験は、とても力強く伝わります。英語版もあり、将来にわたり世界の人たちに被爆の経験を伝える上で、また、若い世代が今一度戦争を考え、原爆を学ぶ上で、インターネット時代ならではのアーカイブズは、有効なツールとなり得るのではないでしょうか。
原爆の実相を若い世代へいかに語り継ぐかということがアーカイブのコンセプトでしたが、東日本大震災および福島原発事故によりその使命は一変しました。ヒロシマアーカイブ制作委員会によれば、これからは「過去の悲劇を当事者として学び、自らのことばで未来に伝える」(「ヒロシマ・アーカイブ」HPより)ことを使命としていくそうで、制作者は多くの人々にこのアーカイブズを利用していただけることを望んでいます。
※写真提供:渡邉英徳氏
※デモムービー:http://www.youtube.com/watch?v=f-q00isamvs
※ナガサキ・アーカイブ:http://nagasaki.mapping.jp/
※ヒロシマ・アーカイブ:http://hiroshima.mapping.jp/
(Google Earthで閲覧するためには、Google Earthプラグインが必要です。)
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