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広がる動物カフェ -ストレス社会での癒しを求める人々-(2014年4月)

投稿日 : 2014年04月28日

 広がる動物カフェ ―ストレス社会での癒しを求める人々―

 

記事:ヴァスィリエヴ 彩子(FPCJ インターン)

 

フクロウ

 

「とてもエキゾチックで素敵な空間。初めて来ましたが、いろいろな動物カフェに行ってみたくなりました」と来日中の米国人教師パオレッタ・マリアラニさん(23)は「鳥カフェ」を楽しむ。2012年末にオープンした東京都江東区の鳥のいるカフェでは、カフェスペースでインコやオウムを鑑賞しながら食事ができるほか、ガラス板で区切られたふれあいコーナーでフクロウやタカに触れたり手に乗せたりすることができる。

 

写真)専用のグローブをつけフクロウを手にのせる学生(鳥のいるカフェ)

 

単に店内で動物が飼育されているのではなく、訪れた人が動物とふれあい、共に時間を過ごすための場所。日本では、「猫カフェ」「犬カフェ」など特定の動物と遊べる動物カフェが人気を集め、ウサギ、鳥、ヤギなど動物の種類も増えてきている。

 

 

ウサギ関心を持つ外国人観光客も多い。東京都世田谷区のうさぎCafeおひさまでは、ガイドブックなどを通じて知ったアジアからの客がよく訪れるという。吉村麻美店長は、「海外では珍しいようで、ウサギに触りたくて来られるというよりは、どんな場所か知りたくて来られる方が多い。ウサギの可愛さにメロメロになる方もいらっしゃいますね」と話す。

 

写真)餌を食べるウサギにそっと触れる女性(うさぎCafeおひさま)

 

 

 

ペット産業に関する雑誌や年鑑などを発行し、全国のペット関連ビジネスに関するデータベースを構築する野生社(東京都杉並区)の原田隆社長は、「動物カフェは比較的新しい市場。10年ほど前に登場し、この5年ほどで広く普及してきた」と説明する。ペットとして飼われる動物の種類が増えるとともに、動物カフェの中身も多様化してきたとみる。

 

猫

 

東京都豊島区の猫の居る休憩所299では、2005年の系列店オープンの際には1か月2000人ほどだった客が、現在では4000人ほどに倍増したという。花田憲昌オーナーは、「自殺者統計を見ても分かる通り、激しいストレス社会。 強烈なストレスゆえに、可愛い動物を見たい、愛でたい、癒やされたいという欲求が強くなっている」と分析する。一方で、動物園やペットショップではその欲求は満たされず、単身者の増加や住居環境により、「飼いたくても飼えない」人が多いため、動物カフェが定着したという。花田オーナーが独自に全国の猫カフェを集計した全国猫カフェマップによると、現在計207店の猫カフェがあるという。

   写真)猫との時間をゆっくり楽しむ女性たち(猫の居る休憩所299

 

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<編集後記>

 

ドキュメンタリー番組を見ていて、米国のアーティストがワールドツアーで日本を訪れた際に、猫カフェに出掛けた場面があり、動物カフェについて初めて知りました。数カ月前に日本に来て、猫カフェ以外にも様々な種類のカフェがあり、人気を集めていることを聞きました。犬カフェ、ウサギカフェ、フクロウカフェ、ヤギカフェ…。中でもフクロウは、森の中や動物園にだけいる生き物だと思っていたため、とてもエキゾチックな響きがして、取材前には何が私を待ち受けているのか想像もつきませんでした。母国ドイツを含め、ヨーロッパでは動物保護の意識が強く、動物カフェではどのように生き物を扱っているのか、少し疑いの目も持っていました。

 

実際に取材に訪れ、どのカフェも本当に清潔で、極めて高い衛生環境にあることに、いい意味で驚きました。触れる前には手を消毒する、動物たちのための「休憩場所」があるなど、客と動物のふれあいには厳しいルールがあります。動物にストレスを与えすぎないよう、指定年齢以下の子どもは入店できないお店がほとんどです。

 

カフェの経営者の方々にお話を伺う中で、どれほど動物たちを愛しているか、その愛情をカフェに来るお客さんたちとどんな風に分かち合いたいと思っているか、強く感じることができました。また、飼い主のいない動物を引き取ったり、里親を探したりと、様々な取り組みをしているお店もあり、将来日本以外の国々のペット産業界にとっても、いいお手本になるかもしれません。

 

(Copyright 2014 Foreign Press Center/Japan)

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