横浜市 林文子市長(2016年10月)
投稿日 : 2016年10月12日
開港以来、世界との窓口として日本の国際化をリードしてきた横浜市。世界レベルでの都市間競争が厳しさを増すなか、「世界と共に成長する横浜」を掲げ、海外インフラビジネスや外国人観光客誘致に取り組む市の海外展開の戦略について、林文子市長に聞きました。
―昨年4月に政令市初となる国際局を設置されました。今年2月には横浜市国際戦略を策定し、「世界と共に成長する横浜」の実現を目指しておられます。これまでの手応えはいかがでしょうか。
国際局を中心に、自治体外交を精力的に進め、横浜のプレゼンスを高めることができた一年でした。2015年6月に、姉妹都市提携50周年を迎えた、ムンバイ、マニラ、オデッサ、バンクーバー市の代表の皆様をお迎えしてフォーラムを開催し、次世代育成など、今後の一層の連携に向けて共同宣言を発表しました。また、私自身、6月にバンクーバー、9月にマニラを訪問し、姉妹都市としての絆を深め、環境や教育分野で、今後一層の協力を進めることを確認しあいました。2011年以降、継続的に出席している「APEC女性と経済フォーラム」では、横浜の女性の社会進出支援策を大いにアピールし、起業家交流など具体的な交流につながっています。(写真:姉妹都市提携50周年フォーラム(2015年6月))
企業誘致でも、アップル社をはじめ、多くのグローバル企業に横浜を選んでいただいています。9月にニューヨークで行われた政府主催の「対日投資セミナー」に安倍首相と一緒に参加して、横浜の優れたビジネス環境をPRしてきました。11月には、インド企業の横浜誘致や、市内企業のビジネス展開の支援などを進めるため、「横浜市ムンバイ事務所」を開所しました。
国際都市・横浜として、新たな交流やビジネスチャンスにつながる好循環が生まれてきている手応えを感じています。
―近年では特に、横浜市の技術力を生かした海外インフラビジネスを積極的に推進しておられます。取り組みの現状、今後の展開についてお聞かせいただけますか。
震災や戦後の復興、急激な人口増加などの困難を乗り越えて、人口370万人の大都市へと成長してきた横浜が持つ資源や技術を生かし、新興国の都市課題解決に貢献するために、公民連携による「Y-PORT事業」に取り組んでいます。2015年5月には、海外インフラビジネスをより一層推進するために、市内企業や国際機関の皆様とご一緒に、「Y-PORTセンター」を立ち上げました。現在、フィリピンのセブ市、ベトナムのダナン市、タイのバンコク都、インドネシアのバタム市との間で技術協力に関する覚書を締結し、インフラニーズの把握やマスタープラン作成の段階から協力しています。
セブ市では、廃棄物・上下水道の分野で、実際に市内企業の資機材を現地で稼働させる実証事業が進み、自治体と中小企業が連携した開発協力の先進事例として、国からも高く評価されています。新興国諸都市の知事・市長をはじめ、国際機関等の有識者が参加し、持続可能な発展に向けた議論を行う「アジア・スマートシティ会議」においても、横浜に寄せられる期待が、一層高まっていることを実感しています。会議期間以外にも都市間で情報共有できるようにFacebookを開設するなど、双方向での「情報共有」を進めていきます。
―増加するインバウンドへの対応やさならる外国人観光客の誘致に向けて、情報発信の課題や戦略があればお聞かせください。
国では「訪日外国人旅行者年間2,000万人」の達成を受け、新たに2020年までに4,000万人という目標が掲げられています。横浜市としても、特に新興著しいアジア諸国からの観光客を取り込み、横浜の成長につなげていく必要があります。おかげさまで2015年の横浜の観光集客実人員は3,761万人、観光消費額は3,188億円、外国人延べ宿泊者数は前年対比1.4倍の約72万人と、いずれも過去最高を記録しています。しかし、外国人延べ宿泊者数の約6割を占めるアジア地域で行った現地調査によると、「横浜」の認知度は9割近いにも関わらず、その特徴まで知っている人は5割以下にとどまっています。2019年ラグビーワールドカップ決勝戦、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を、横浜の魅力を世界に発信し、国内外から観光客をお迎えする絶好の機会ととらえて、横浜のプレゼンスやブランド力を高めるシティプロモーションと国内外からの誘客を強化していきます。
東アジア・東南アジアを中心に、SNSや映像を活用したプロモーションに力を入れ、横浜のコアなファンを一層増やしていきます。そして、案内サインやガイドブック等の多言語対応、Wi-Fiなどインターネット環境の整備をはじめ、様々な生活習慣を持った外国人観光客の皆様の受入環境を整え、宿泊客の増加、滞在期間の延長による、観光消費額の増を目指します。
―ラグビーワールドカップ2019、東京2020オリンピック・パラリンピックでは、いずれも横浜市が競技会場となります。どのような準備を進めていかれますか。
いよいよ3年後に迫った、アジアで初開催となるラグビーワールドカップ2019™は、世界200か国以上、延べ42億人がテレビ観戦するビックイベントです。決勝戦の会場に選ばれた横浜国際総合競技場は、2002年のFIFAサッカーワールドカップでも決勝戦が行われています。同一会場でラグビーとサッカー、2つのワールドカップの決勝戦が行われるのはフランスの「スタッド・ド・フランス」に続き、世界で2か所目という大変光栄なことです。翌年の東京2020オリンピック・パラリンピックでも、サッカーの開催が予定され、2年続けて世界の注目が、ここ横浜に集まります。
安全かつ円滑に大会運営がなされるよう、開催地の自治体として、万全の体制で臨みたいと思います。 そして、市民、関係団体、事業者の皆様の力を結集した「オール横浜」のおもてなしで、国内外からのお客様をお迎えし、横浜ならではの素晴らしい体験をしていただけるよう、準備を進めてまいります。さらに、文化の祭典でもあるオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、横浜ならではの質の高い文化芸術イベントを開催してきた実績を活かして、今後、国が全国展開する予定の「文化プログラム」をけん引する意気込みで取り組み、この成果を次世代の横浜にしっかりとつなげていきます。
―横浜市には、1991年から賛助会員としてご支援をいただき、プレスツアーなどさまざまな事業で連携の機会をいただいています。28年度は初の試みとして、職員研修のための1年間の人事交流も行っています。これまでの事業の評価、今後の期待をお聞かせください。
フォーリン・プレスセンターには、プレス・リリース配信やプレスツアーを通じて、待機児童対策や国際事業、文化・芸術事業、環境関係など、横浜市の多岐にわたる情報を発信していただいています。2015年度のプレスツアーでは、多文化・多国籍の人々との共生をテーマに、9か国12人の記者の皆様が市内の団地、小学校、介護施設等を取材し、共生を模索してきた地域の事例や介護現場で活躍する外国人職員の様子を報道してくださいました。このように、横浜への理解を深めていただくことができるのも、フォーリン・プレスセンターのネットワーク、構想力の賜物です。また、人事交流を通じて、外国メディアとの連携ノウハウや情報発信のポイントなど、多くの事を学ばせていただき、国際都市横浜ならではの情報や海外からのニーズを捉えた情報を発信する機会の拡大につなげていきたいと思います。今後とも一層のご支援をお願いいたします。(写真:2015年10月に実施したプレスツアー「多国籍の人々が共生する社会に向けた試み」で取材する外国メディア)