首長による情報発信

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和歌山県 仁坂吉伸知事 (2015年9月)

投稿日 : 2015年09月15日

熊野古道や高野山といった歴史的遺産から、梅・マグロなど豊かな農水産物まで、魅力あふれる和歌山県。「おおらかでほのぼのとした県民性も魅力のひとつ」と語る仁坂吉伸知事に、お話をお聞きしました。(聞き手:FPCJ理事長 赤阪清隆)

 

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~ 世界からの観光客を意識しはじめた和歌山県 ~

 

―和歌山県は、この数年海外からの観光客数が大きく伸びて、昨年は30万人を超えたそうですね。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」や、今年開創1200年を迎えた高野山などが魅力となっているようです。今後、より多くの外国人観光客に、和歌山を訪れてもらうための特別の施策を考えておられるのでしょうか?

 

もちろん、考えています。外国人観光客の増加は、全国平均を上回るスピードで進んでいます。2013年は、全国の伸び率は平均24%でしたが、和歌山県は80%、2014年は、全国平均が29%、和歌山県は43%でした。もともとの数字が少なすぎた、というところもありますが、ようやく世界から和歌山県へ観光客が来てくれるようになり、また県内の人々も、世界から観光客が来てくれるということを意識し始めました。

 

              小_高野山 小_免税店(黒潮市場)

 (左)ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで3つ星を獲得した高野山 

(右)黒潮市場(和歌山市)の免税店に集まる観光客 ―①

 

増加の理由は、二つ考えられます。一つは、海外でのメディアや旅行業者向けのプロモーションに力を入れた成果です。特に香港は和歌山県への観光客数が多く、成功している事例といえます。もう一つは、フランスの旅行ガイド「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」で、2009年に高野山が、2011年に熊野が最高ランクの3つ星を獲得したことです。フランス人を中心に、欧米の観光客が増えました。欧米の方は自然に加えて、歴史・文化、香港などアジア系の方は、温泉・食・海岸美というところが売りになっています。これからは、アジア系観光客の目的の「欧米化」が進むでしょう。あとは、大阪のホテルが満室でとれない時に和歌山で宿泊し、観光をして帰るという流れも増えています。

 

これからの課題は、リピーターを増やすことです。とくに、団体客で一度来た方に、個人客として再訪してもらいたい。そのために大事なのはおもてなしですね。今、無料の公衆無線LAN「Wi−Fi」を、県内1500カ所を目標に一気に整備しています。また、2年前から、「和歌山おもてなしトイレ大作戦」として、温水洗浄機能付きの洋式トイレや、男子用小便器の自動洗浄化、オストメイトなどの整備を進めています。県関連施設のトイレだけでなく、市町村や、公共交通機関のトイレ整備に補助を出しています。東京や大阪など大都市の中心部を除けば、既に和歌山県のトイレが日本で一番きれいだと思います。

 

―素晴らしい取り組みだと思います。話題づくりというところでは、和歌山市と紀の川市間(14.3キロメートル)を結ぶ和歌山電鐵貴志川線・貴志駅のたま駅長も大きな話題になりましたね。今年6月に死んだたま駅長の葬儀を、海外メディアが大きく取り上げていたのが印象的でした。

 

たまたま駅長は、物怖じしない立派なネコでしたよ。これは、岡山県の交通事業会社「両備グループ」の代表で、和歌山電鐵の小嶋光信社長が仕掛けてくださったんですね。たま駅長には、私たちから何かお礼をということで、二度表彰したんです。つまらない表彰ではいけないと思い、最初は県で唯一の「和歌山県勲功爵(わかやまdeナイト)」という称号を、次は、生き神様ということで、「和歌山県観光まねき大明神」という称号を贈ったんです。亡くなったのは残念ですが、今は二代目のたま駅長が引き継いでいますね。 (写真: 「わかやまdeナイト」の称号授与式(2008年10月) -②)

  

 

 

~ 果樹生産額6割の「果物王国」 梅栽培を“世界農業遺産”に~

 

―それでは、次に海外に向けた「食」の魅力の発信という点ではいかがでしょうか?和歌山といえば、ミカン、ウメ、そしてマグロなど優れた農水産物がありますね。伝統的な梅栽培の仕組みを国連食糧農業機関(FAO)の「世界農業遺産」に申請し、登録を目指しているという話をお聞きしています。

 

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青梅やみかんなどの果樹生産が盛んな和歌山県 -③

 

観光において「食」はとても大事ですよね。日本の農業は優れていると思いますが、和歌山県の農業の非常に珍しい特徴は、果樹が農業生産額の6割を占めるというところです。外国の方でお米の味の違いが分かる方はそういないと思うのですが、ミカンや、清見オレンジ、あるいはモモなど、美味しい果物は一口で分かります。あんなに美味しいモモが食べられるのは、日本ぐらいだと思います。ほかにも、柿、キウイ、はっさく、ビワなど、果物は豊富です。

 

魚も自慢ですね。近海のはえ縄漁業で獲れた、ものすごく高級な生マグロが集まります。勝浦で水揚げされたマグロが競りにかけられ、そこからまた築地に持って行かれるということもあります。マグロだけでなく、タチウオ、クエ、ハモ、伊勢エビなども美味しいです。

 

 

~ トルコとの絆を生んだ県民性~

 

―素晴らしいものがたくさんありますね。では、次に「人」についてお伺いします。和歌山県は、外交官の陸奥宗光、パナソニック創業者の松下幸之助など、多くの賢人を排出している印象があります。また、ブラジルやカナダへ移住した人も多い。和歌山県民の、気質のようなものはありますか?

 

まったくの個人的な意見ですが、県民性の特徴は大きく3つあると思います。一つは、イノベーションが得意で、発明上手です。たとえば松下幸之助さんなどは、何か新しいことをして、富を得て終わるのではなく、「あの人は何をした」と語り継がれることをして偉くなっている。発明でいうと、醤油や鰹節、(金山寺)味噌、マグロやカツオの一本釣り漁法、古式捕鯨などは、和歌山県で発明されています。ただ、こうした発明を他に教えてしまうんですね。鰹節は、和歌山から四国、鹿児島へ移って一大産業となりましたし、醤油の大量生産は千葉に移っています。オープンで、あっさりしている性格なのでしょうか(笑)。

 

小_串本町の海(エルトゥールル号遭難現場)2つめは、排他的でないところです。気候が温暖で、海に面しているせいでしょうか。和歌山は巡礼の歴史があり、その風土が今も続いている。誰に対しても親切なところがあると思います。よその人に「来るな」といじわるをしたら旅人が来なくなっていたはずですから。代表的な例が、1890年に、和歌山県沖で座礁したトルコ軍艦の生存者69人を、和歌山県の人々が献身的に救助した「エルトゥルールル号事件」でしょう。今年12月、これを題材とした「海難1890」という映画が日本・トルコ両国で公開されます。映画では、この事件から95年後のイラン・イラク戦争の際に、イラクの空爆をのがれてイランから脱出しようとする日本人を、トルコの航空機が助けてくれた話も描かれます(1985年のテヘラン事件)。トルコでは今もエルトゥールル号事件が教科書に載っていて、日本への感謝を忘れていません。日本人もテヘラン事件をずっと忘れないで、トルコの方に「ありがとう」と言い続ける必要があると思います。(写真:串本町の海(エルトゥールル号遭難現場) -④)

  

3つめは、逆境に強いことでしょうか。和歌山の経済をみていると、調子が悪いときほど頑張る、という傾向はありますね。ただ、調子がよくなると油断しますね(笑)。それだけおおらかな県民性ということでしょうね。

 

―エルトゥールル号事件は、トルコが親日国となるきっかけになりましたね。映画はトルコでも上映されるそうで、楽しみです。最後になりますが、ずばり和歌山県の魅力をひとことでいうと?

 

県出身の作家・佐藤春夫さんが、和歌山を「空青し 山青し 海青し」と表現しています。私は、それがいいなと思っていますが、それだけでは少し面白くないという気持ちもあって、これに熊野古道や高野山などの古くからの歴史と、そしてほのぼのとした人間を加えたいなと思います。

 

―本日はありがとうございました。和歌山県は、9月末から「紀の国わかやま国体」・「紀の国わかやま大会」で盛り上がりをみせますね。ご成功をお祈りしています。

 

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写真①~④は、和歌山県よりご提供いただきました。

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