通常国会開会
投稿日 : 2016年01月15日
朝日:「戦後の岐路」問う論戦を
毎日:「安倍政治」の総点検を
日経:わかりやすい選択肢示す国会論戦を
読売:安定基盤を課題克服に生かせ
写真:Natsuki Sakai/アフロ
第190通常国会が1月4日に召集された。日本経済新聞は1月4日付の社説で、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞は1月5日付の社説でそれぞれ約3か月ぶりに開会された国会について論評している。
朝日は、「『安倍1強政治』を加速させるか、転換させるか。夏の参院選は、戦後日本の大きな分岐点になる可能性がある」とし、「この国会は、国民にとって、参院選を前に日本の針路を考える重要な機会となる」と述べた。しかし一方で、安倍政権では、選挙至上主義とも言える政治手法が際立つとも指摘している。
毎日は、「(国会)論戦の推移は夏の参院選の対決構図に影響する」と分析し、「第2次安倍内閣の発足から3年を経た『安倍政治』を総点検する場として位置づけたい」と述べた。その上で、軽減税率導入に伴う財源対策やTPPの合意内容への説明に加え、東日本大震災の発生から5年を迎えるに当たり、今後の復興の進め方への活発な議論も促した。
日経は、今夏に衆参両院の同日選の可能性が取りざたされていることに触れ、「折しも選挙権年齢は参院選から18歳以上に引き下げられる。何を基準に投票すればよいのか。政治に不慣れな有権者にもわかりやすい選択肢を提示する国会論戦にしなければならない」と強調した。ただ、政府は新規提出法案を少なめにし、選挙に影響を与えそうな課題を先送りする方針であることから、「気をつけないと無風のまま、この国会は終わってしまいかねない」と懸念を示している。
読売は、政権復帰後4年目に入った安倍政権に対して、安定した長期政権の利点を生かし、デフレ脱却と財政再建の両立、地方創生、「1億総活躍社会」の実現、積極的平和主義の具体化などの重要な政策課題を前進させるべきと促した。しかし、「安倍政権に対する国民の支持には依然、『民主党政権よりはまし』といった消極的なものも少なくない」として、「安倍首相は、数の力に驕らず、謙虚な国会運営と国民への丁寧な説明を心掛けねばなるまい」と述べた。
■ 野党に求められるもの
朝日は、「野党がバラバラなままでは、今の政治に危惧を抱く民意は行き場を見いだせない」として「安倍1強政治」に代わりうる「もう一つの選択肢」を国民に示すよう野党に求めた。
毎日は、「野党の責任は大きい」と述べ、「とりわけ民主党は単純な政権批判ではなく自ら議論の土俵を作り、参院選の争点を形成する努力がいる。格差是正などで、実現可能なビジョンを示すべきだ」と強調している。
日経は「いま重要なのは政治の土俵づくり」であるとし、「その場かぎりの人気取りでない政策で争う二大政党体制を育てたい」とした。
読売は、「単に安倍政権を批判するだけではなく、説得力のある対案を掲げなければ、有権者の支持は広がるまい」とし、自民党が批判する無所属の野党統一候補の擁立という「究極の談合」のように、「政策を一致させないまま、選挙目当てで勢力結集を図るのは『野合』にほかならない」と指摘した。
■ 憲法改正発議の憶測
安倍政権は、参院選後に憲法改正発議に動くのではないかとの憶測が出ているが、全国4紙はこの点にも触れている。毎日は、「参院選では憲法改正の発議を可能とする多数が参院で形成されるかが大きな焦点となる」と述べ、「国会では党首討論などの機会を積極的に活用し、憲法観など骨太な議論を展開してもらいたい」と求めた。
朝日は、「仮に参院選で与党が勝てば、同日選なら3年間、参院選単独でも2年以上、大きな国政選挙に臨まなくても済む『時間』を手にすることになる」とし、「改憲の発議を含め、これまで以上に思い切った手を打てる環境が整う」と分析した。
日経は、「戦後政治の分岐点となるかもしれない選挙を、与野党が明確な対立軸を示さないまま迎えてよいのか。改憲勢力にとっても有権者が納得感を得られない形で多数を得ることは不本意だろう」と強調した。
読売は、「与野党はまず、改正テーマの絞り込みに向けた議論を本格化してもらいたい」と憲法改正の議論を深めた。その一例として、「選挙が困難になるほどの大災害時に、国会議員の暫定的な延期延長を可能にする規定がないことは現憲法の欠陥だ」と指摘し、自民党が提案した緊急事態条項の新設を検討するよう促した。
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