社説読みくらべ

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主要7カ国首脳会議(G7)

投稿日 : 2015年06月19日

Vol.5  2015年6月19

 

朝日:温暖化対策 G7は目標に責任を/産経:対中結束の意義は大きい

日経:挑戦つきつけられるG7の結束力/毎日:結束して中露に対処を

読売:ウクライナ安定へ結束強めよ

 

 

ドイツ南部エルマウで6月7・8日に開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)が、首脳宣言を採択して閉幕した。宣言では、G7首脳が「自由と民主主義の価値」や「法の支配」を促進し、主権や領土の一体性を維持するために結束することが謳われた。

 

海洋進出を活発化する中国と、昨年3月にウクライナ南部のクリミアを編入したロシアへの対応で、各国の足並みがどこまでそろうかが焦点の一つとなった。中国については、名指しは避けたものの「東シナ海や南シナ海での緊張を懸念」すると明記した上で、「大規模な埋め立てを含む現状の変更を試みるいかなる一方的行動にも強く反対」すると強くけん制した。ロシアによるクリミア編入についても「違法」と非難し、2月のミンスク合意(停戦合意)や重火器撤去の「完全な尊重と履行」をすべての当事者に求めた。

このほか、地球温暖化や通商交渉などの分野でも、共通認識を確認した。

 

サミットの成果について、読売新聞、毎日新聞、産経新聞は6月9日付、朝日新聞と日本経済新聞は10日付の社説でそれぞれ論評した。読売、毎日、産経の3紙は、中露への対応を中心に取り上げ、朝日は地球温暖化対策に絞って論じた。日経は、通商交渉なども含めて多岐にわたるテーマを取り上げた。

 

■  中露に対する非難

 

首脳宣言について、読売、毎日、産経は、「中国の海洋進出に対し、周辺国や日米豪だけでなく、欧州諸国を含むG7として懸念を表明した意義は大きい」(産経)などと評価した。日経も、「世界の課題に日米欧がそろって取り組む姿勢を、ひとまずは示したといえる」と一定の評価を示したが、「いくら立派な首脳宣言をかかげても、行動が伴わなければ問題の解決には役立たない。G7の結束力が問われるのはこれからだ」と辛口の記述も交えた。

 

朝日を除く4紙は、中露への対応について「中国の安全保障上の脅威を重くみる日米に対して、欧州諸国は経済関係をより重視する。ロシアに厳しい米国は、日本の対話路線に神経質になっている」(毎日)などと、各国の事情やG7の中の温度差を指摘したうえで今後の課題を示した。

 

日経は、「中ロが強気の姿勢を崩さない理由のひとつは、日米欧の連携がさほど強くないとみていることだろう」と指摘。「中国につけいるすきを与えないよう、日米と欧州は密に連携を保ってほしい。そのうえで日米欧が足並みをそろえ、中国に強く自制を迫っていくことが大切だ」と強調した。

 

産経は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加をめぐり日米と欧州の対応が割れたことにふれつつ、「欧州諸国に中国の危険な動きを十分理解させ、日米の側に引きつける外交努力の継続が必要だ」とした。

 

読売は、ウクライナ問題を中心に論評。「対話を通じた事態打開を重視する日欧と、圧力を優先する米国には温度差がある。それだけに、緊密な政策調整が欠かせない」と、G7結束の必要性を説いた。安倍晋三首相が北方領土問題の解決の糸口をつかむため、プーチン露大統領の年内来日を模索していることについては、「ウクライナ情勢でG7の足並みを乱さずに日露関係を前進させる、という難しい舵取りが求められる」と述べた。

 

毎日は、中国がG7の前提となる共通の価値観を共有していないことや、ロシアが、クリミアの編入強行でG8への参加停止の制裁を受けている現状にふれたうえで、「安定した国際秩序を維持するには中露への圧力だけではなく対話の努力も忘れてはならないだろう」と対話路線の強化も促した。

 

■  温暖化対策、通商交渉

 

地球温暖化対策だけに焦点を当てた朝日は、「長い間、化石燃料を思うままに使い、二酸化炭素を大量排出して経済発展を遂げてきた先進諸国として、最低限の責任ある態度を示したといえる」と論評した。G7サミットが、2050年に世界の温室効果ガス排出量を10年比で40〜70%削減するという長期目標を打ち出したことに対する一定の評価だ。

 

ただ、削減達成のカギを握るのは、世界最大の排出国の中国や第3位のインドなど途上国だと指摘し、「先進国の責任を問うてきた途上国をどう巻き込んでいくのか」が課題だとした。

 

日本の対応について、朝日は「温暖化対策をG7がリードしようとする以上、日本も当然、前面に立たなければならない」とし、G7が掲げる「今世紀中の世界経済の(エネルギー消費と化石燃料を減らす)脱炭素化」の実現に向けた世界貢献は、「待ったなしだ」と社説を結んだ。

 

日経は、G7首脳が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の早期妥結や、日本とEUによる経済連携協定(EPA)の年内の大筋合意をめざす方針で一致したことを取り上げた。「こうした動きに弾みがつけば、米国とEUによる環大西洋貿易投資協定(TTIP)を後押しする効果も期待できよう。そのためにも米議会は、TPP交渉妥結に不可欠な貿易促進権限(TPA)法案を早く可決すべきだ」としている。

 

産経も、通商交渉をめぐる合意に触れ、「日米欧3極の新たなルールづくりに、中国牽制の意味合いがあることも忘れてはならない」と述べた。

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

 

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