改正入国管理法施行と外国人労働者受け入れ問題
投稿日 : 2019年03月26日
毛受敏浩 日本国際交流センター 執行理事 『世界』 3月号
日本国際交流センターの毛受敏浩執行理事は『世界』の論文「移民『元年』 課題と展望」で、2018年12月に成立した外国人労働者受け入れのための入国管理法改正について、「『移民元年』と呼ぶにふさわしい歴史的な転換といえよう」と評価した。深刻な人口急減に直面する中で、「先進国で移民政策がないのは日本だけであり、その意味で『やせ我慢』は限界に達したといえる」とする。政府が「移民政策と異なる」と主張した点についても、毛受氏はその理由を「移民」が持つネガティブなイメージへの配慮であったとするとともに、移民にアレルギーの強い自民党保守派へ配慮の結果と分析した。
毛受氏は、新政策の最大の成果を「タブー視されてきた移民政策について国民的な議論を行うきっかけを作ったことだろう」と強調した。その上で、「デカセギ留学生」が急増し悪質なブローカーが暗躍してきた現実に照らして、「就労を目的とする新制度創設は、方向性として正しい」と評価し、今後は「ホンネとタテマエが乖離」した技術実習制度を廃止するか、本来の国際協力の目的に限定するか選択する必要があると論じた。
さらに、毛受氏は特定技能制度に「技能二号」を創設し、外国人労働者の定住に道を開いたことや、政府が入管法の改正(と合わせて)に加えて「外国人材の受入れ共生のための総合的対応策」を決定し、2019年度に200億円超の予算が組まれたことを評価した。その上で、外国人労働者が今後1000万人、総人口の1割を占めるまで増加する可能性を踏まえて、「将来ビジョン」の検討と「鳥瞰図を持った多面的な議論」の必要性を求めた。
写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ
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