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総選挙後の日本の政治

投稿日 : 2017年12月26日

佐々木毅 「政治家は『身を切る改革』を語れ」 文藝春秋 12月号

 

元東京大学総長の佐々木毅氏は『文藝春秋』の論文で、201710月の「国難突破解散」について、「実行すべき意義」に疑問を投げかけつつ、「首相にここまで自由な解散権を与えている先進国は極めて少ない」とすると指摘した。

 

頻発する選挙について佐々木氏は、政治の「短期志向化」という長期的視点からの政策論議の可能性を減じて、〝政局政治″を助長すると指摘。野党の政策提案能力の劣化も、度重なる選挙の悪影響であると強調した。

 

一方、佐々木氏は小池百合子都知事が主導した「希望の党」への期待の大きさと選挙結果について、1990年代前半の「改革」ブームに乗って政界入りした小池氏が、国民意識の現状を見誤ったためだと指摘した。具体的には、多くの国民が「高度成長期の遺産によりかかり、過去の延長線上で将来を描こうという『余剰幻想』のぬるま湯の中に生きている」という現実を見誤ったとした。

 

また、佐々木氏はこれからの政治に望むこととして、「夢を語るだけの『余剰幻想』政治から脱却し、長い時間軸で見た現実的政策を推し進めること」を挙げ、「財政危機などの国家的危機を先送りにせず、国民に『耳の痛い話』をする必要があり、長期的な視点からの『身を切る改革』を国民に説得しなければならない」と述べた。

 

最後に佐々木氏は、今回の総選挙で安倍晋三首相が公約に掲げた憲法改正について、「最終的には国民投票での過半数の賛成が必要になる。ただ、この『装置』を、日本の政治はいまだに一度も使ったことはない。(中略)国民投票と議会の『ねじれ』現象が起きれば、国内は大きく混乱する」として、長期的な時間軸に立ち腰を据えた政策遂行に専念することを求めた。 



写真:新華社/アフロ

 

※このページは、公益財団法人フォーリン・プレスセンターが独自に作成しており、政府やその他の団体の見解を示すものではありません。

      

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